パラシュートの説明をするとほとんどの人の関心事がどれくらいの速度で開きますか?
地面からの最低高度(距離)はどれくらい必要ですか?
ということです。
墜落している時にこそ役立つものなので0.1秒でも速く、1mmでも短い落下高度の間に開傘してほしいという期待や願望が受け取れます。
そうでなければ役には立たないのですから
しかし実際にはパラシュート性能の優先順位には開傘速度よりももっと優先されるべきことがあります。
開傘形状の正確さと開傘衝撃の緩和です。
そう、開傘衝撃の緩和を気にする必要があるのです!パラシュートは強化されているとはいえ生地とラインの縫製による構造物です。過度に速い開傘は衝撃を増して縫製線から破裂させてしまう危険があります。
そのため超高速で打ち出される射出には向かず、墜落なのですから自然落下の物理的な勢いによって発生する風圧を利用することでパイロットシュートを開き、その引き出しによってメインパラシュートを引き出す方法が最も優れた効果を期待できるわけです。
パラシュートの開傘はトップ(先端)からコネクト(接続部)までの長さに比例します。
大経の大きな翼面積を持つパラシュートならばその分だけ
全長が長く、小径なパラシュートの翼面積であればそれだけ比較して全長が短くなりますので短時間で開傘します。
しかし開傘時間を短くすることはもう一つ別の方法があります。
同じサイズのパラシュートであればパラシュートの開傘方式は射出後にまずサスペンションラインが先に張って、その後にキャノピーが開くラインファースト方式
そして射出後にキャノピーが先に開いてからサスペンションラインが張るキャノピーファースト方式、このキャノピーファースト方式のほうが素早く開傘します。
しかしアドエアのパラシュートではラインファーストを採用しています。それはドローン用の緊急用パラシュートというカテゴリーに限った使用方法においてはドローンのプロペラやブーム、固定翼機では主翼、尾翼、プロペラなどの隆起物にサスペンションラインが干渉することをできるだけ避けることが優先事項であるためです。
説明動画でも紹介していますがパラシュートには意図的に開傘速度を遅らせるシステムが付加されています。それは急激すぎる開傘過程においてサスペンションラインが正確に引き出されることが阻害される(機体の一部に絡む、ラインのキンク状態を生み出す)こと、そして急激なキャノピー(傘体)の展開(開傘)がもたらせる急激な荷重による縫製部とその周囲素材との破断、断裂からくる構造破壊を抑制しています。
下記の開傘したパラシュートの写真左側に赤丸で囲った部品がその役割を担います。
また急激な落下速度であればあるほど開傘による衝撃で機体が破壊されて機体をホールドするハーネスからこぼれた破片が地上へと落下する恐れがあります。
それらを考慮すると最優先の1番目は正確な形状での開傘となります。2番目は開傘後の飛行コース、3番目に開傘速度となります。
<< 説明に用いた写真はinstagramより引用 >>
下記の写真は火薬でロケットのように重りを打ち出すことでパラシュートを引き出すタイプのものです。より短時間での開傘を期待するうえで火薬を使って重りをロケット式に打ち出すことが高速化になると信じ切っている方が多すぎるのですが、ロケット式に飛んで行った”重り”に引き出されたパラシュートがそのまま開傘する場合はそういう誤解があっても仕方がないのですが、この写真のようにせっかくロケットで引き出したパラシュートの開傘を意識的に遅らせていることをよく考えてください。火薬を使用することは開傘までのプロセスを短時間化することが理由ではありません。異業種で参入した企業の中にも火薬を使用することに競合的に優位を見出している企業がありますが、それは火薬のもたらせるメリットを見誤っているとしか言いようがありません。ではこの写真のメーカーではなぜ火薬を用いているのかについて解説します。ご覧の通り軽飛行機用の緊急パラシュートです。軽飛行機が軽量に作られているとはいっても市販最軽量のものでさえ1,500kg程度の重量は有ります。それに加えて搭乗人員の体重も加算して2,000㎏程度を見込んでそれを吊り下げるためのパラシュートとは生地やテープ類、収納用コンテナを合わせた重量だけで12-15㎏程度あります。このパラシュートを梱包された塊のコンテナバックを機体から極力離れた位置まで飛ばすために火薬を使ったロケット式の打ち出しによる勢い(運動エネルギー)を使っているということなのです。もちろんそれは唯一の方法ではありませんが、このメーカーが火薬打ち出し式を選択したということです。
アドエアでは危機対策全般を扱ううえで、機材に留まらず知識のとしての危機対策を公開するために
緊急パラシュート及びドローン配送の講座を製作予定です。
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