パラシュートへの誤解その11

  回収用パラシュートと緊急用パラシュートは別物!!回収用パラシュートとの違いを知らずに緊急時には使用してはいけない!

PJ

パラシュートの開傘動画を見たことがある人は多いと思います。
しかし大半は回収用パラシュートのもののはずです。
緊急用パラシュートは 飛行体が墜落挙動に入るその決定的瞬間が動画となること自体がレアケ―スだからです。

それに対して回収用パラシュートとは予め開傘させることが予定されているので動画には収めやすいわけです。
予定しているのですから パラシュートが打ち出しやすいように、そして打ち出したパラシュートのサスペンションラインが絡み合うことなく、キャノピーが正常に展開・開傘するように飛行体姿勢の制御をしたうえで射出されます。
それを見て必然的にパラシュートを打ち出すことが正常に開傘することとして脳に刷り込みをされてしまっても仕方がないこととは思いますが、緊急パラシュートはそんなに都合よく開けるとは限りません。緊急時のことが予想できるくらいなら最初から墜落に至る過程を回避してしまえばいいのですが予想できないからこそそこから開傘させることが至難の業です。
墜落センサーと連携した自動射出に依存したままで。まるで回収パラシュートのように開くと誤解しているとその代償は予想をはるかに超えたものとなる可能性があります。 むしろその可能性のほうが高いと思います。

instagramより動画 Flying Car(空飛ぶクルマ)用 パラシュート動画に潜む危険行為
他社のものであり、警告用に引用するはためらいがありますがパラシュートそのものはFlying Car用のものではありませんので使い方についてのみの危険行為を指摘します。動画に使用されているパラシュートはパラグライダー用としておそらくスカイスポーツ用としては世界で最も厳格な安全基準であるドイツ航空局のDHV認証を得ていると思われます。パラシュートそのものに瑕疵は在りません。その点について念を押しておきます。

https://www.instagram.com/reel/C4xLIGlMbso/?igsh=b3o0NTByd2hmaGx0

ここに使われているパラシュートはタンデムパラグライダー(二人乗り)用として既成販売されている最大サイズの緊急用パラシュートを4つ並列で接続しています。 重量に対して充分な翼面積の1つのパラシュートを製造することがより理想的ですが4つのパラシュートを使うことそのものはNGではありません。ただし接続システムに問題があります。

並列で複数のパラシュートを接続すると回収用としては機能が有効に役立つのですが、その一方で緊急用としては機能しないリスクが高くなります。
これは有人飛行となる空飛ぶクルマですから、このような使い方ですと緊急時には死亡事故が起こる可能性が高くあります。

回収用パラシュートであれば動画のデモのように飛行体がパラシュートの射出から開傘までを最も理想的な姿勢で射出開始します。絡むことなく理想的に開いて当然です。

その一方で緊急時はどうでしょう? 墜落の危機に陥った時点で航空機がこのような理想的な姿勢を保持できるのならばそれは危機と言える段階には在りません。

墜落時の機体姿勢は全く予想不能です。例えば航空機の姿勢が通常から90度反転していたら? 上片側に位置するパラシュートだけが有効に開傘機能して、下片側に位置するのパラシュートはどうなっているでしょう?

放出されたパラシュートのキャノピーまたはサスペンションラインが航空機機体の一部に絡まる可能性が大 
   ↓↓↓
複数あるパラシュートのうち一部の個体のパラシュートが開傘して吊り下げられた機体の不規則な旋回動作により 
   ↓↓↓
開傘した上半分側のパラシュートのサスペンションラインに干渉して絡まってしまう恐れもあります。


以前に弊社でも国内の空飛ぶクルマに取り組むある国内企業から相談を受けたことがあります。
指定重量700kgに対して予算を算出しますと日本円で1500ー2000万円程度の概算となりました。
これが動画で使われている既成のパラグライダー用のものであれば1基あたり15ー20万円前後で購入できますので4基の合計で60万円程度で済みます。(パラシュート単体の価格です)
そのためこうしたアイデアで対策としたことは想像できるのですが、回収用パラシュートであればこの動画の使い方で可能です。
緊急用パラシュートとして使用するのは前述の説明の通りリスクが高く、配列としてせめて並列ではなく直列でつなぐ方が少しリスクを軽減して正常な開傘確率を高めることができます。
こうした専門知識がパラシュートの開傘確率に深く関与しています。