言葉のおくりもの(教育出版 ほか)2026年1月24日
言葉のおくりもの(教育出版 ほか)2026年1月24日
1983年(昭和58年)に文部省が発行した「小学校 道徳の指導資料とその利用6」に収録されて以来、現在でも3社の教科書(東京書籍6年、日本文教出版6年、教育出版5年)に掲載されている教材です。1977年(昭和52年)当時の学習指導要領には、28項目の中に「男女」や「異性」という言葉はありませんでしたが、1989年(平成元年)の改定で22項目の中に、「互いに信頼し、学び合って友情を深め、男女仲よく協力し助け合う。]という表記が登場したことを考えると、恐らくその改定を意識して作られた教材ではないかと思います。なお、現行の学習指導要領(第5学年及び第6学年)では、「友達と互いに信頼し,学び合って友情を深め,異性についても理解しながら,人間関係を築いていくこと」となっています。では、そこに迫るためにどのようにこの教材を生かしていったらよいか考えてみたいと思います。
友情を入り口に学級のことを考えていく
まず、1番考えるべきところは誰を中心にこの教材を読むかというところです。すみ子は誰に対しても公平で、思いやりをもって接することのできる人物です。しかし、だからと言って「すみ子はすごい」「立派だ」「すみ子のように、異性とも友情を育むことが大切だ」という授業にしてしまうと、子どもたちは新たな気づきや納得を得ることはできにくいと思います。 そこで、まずは一郎を中心に教材を読んでみることにします。
最初に、男子におけるこの時期特有の感情についておさえておく必要があると思います。それは、「本当は女子と仲良くしたいとは思っているが、それを素直に認めるのは恥ずかしい」「他の男子から、からかわれるのが嫌なために、女子に対して冷たくしてしまうことがある」「などというものです。これは男性には共感していただけることかもしれませんが、案外女性にとっては「何でそんなことするのかよく分からない」と思うことかもしれません。ジェンダー平等が叫ばれる昨今、さまざまな配慮は必要ですが、一郎やたかしの姿から男子のこういった思春期特有の感情について、それぞれどう思うか考えさせるとよいと思います。
次に、リレーのバトンパスを失敗した場面で「すみ子の言葉がとてもはっきりと耳に響いた」というところに着目します。 なぜ、一郎とたかしの耳には、すみ子の言葉がとてもはっきりと響いたのでしょうか。すみ子と比べて自分たちはどうなのかということを考えさせてもよいでしょう。この時期ならではの男子特有の感情はあるにせよ、つまらないことを気にしてすみ子に冷たくしてしまった一郎(自分)を感じとらせることができたらよいのではと思います。
その上で、すみ子はどのような学級になってほしいと考えているか、それはなぜか(どんな思いからか)と視点を変えて考えてみましょう。「私もがんばります。」と言っていることから、すみ子は決して平気でいられたわけではなく、悩みや葛藤があったことは分かります。それでも一郎のため、そして一郎だけでなく学級全体のことを考え、「明るい学級にもどってもらいたい」と言うのです。それを考えたら、「つまらないことにこだわっていては学級はよくならない」「男子にとっては難しいことなのはよく分かるけど、それで学級の雰囲気が悪くなるのはよくないこと」という理解にたどり着けるのではないかと思います。
この授業のポイントは、何と言っても男子のこの時期ならではの感情です。そこに共感やおさえがないと、きれいごとで終わってしまうような気がします。最近は男女混交名簿などは当たり前で、「男性も女性もない」「異性ではなく皆同じなんだ」という風潮があるのかもしれません。しかし、男性であれ、女性であれ、その他の性であれ、自分とは異なる「異性」について、しっかりと理解していくことは大切なことだと思います。今回の内容は、女子から見て「男子は何でつまらないことにこだわっているのだろう」と思うことかもしれませんが、男子について、あるいは異性について、理解した上で仲良くやっていこうとする態度を育てることが大切ではないかと思います。