今回の「バナナ日記」は、本サイト初!アジア・アフリカを飛び出して、ヨーロッパからの便りを報告します。とはいっても、場所はイギリス、アフリカからの移民が多く住んでいる地域の話しです。
6月21日くもり 『サウサンプトンで遭遇したバナナ』
イギリス南部サウサンプトン(Southampton)にいるウガンダ出身の友人の家に遊びに行った。彼女いわく「インド人の店に行くとマトケが売られている」とのこと。マトケとは、彼女の故郷であるウガンダやタンザニアをはじめ、東アフリカの一帯で重要な主食になっているバナナのことである。日本にとってのコメみたいなものである。さっそくインド人街にあるその店を訪ねてみた。
店には、イギリスでは珍しい野菜や果物が数多く置かれており、南米原産のキャッサバなどもある。インド系の人びとやアフリカ系の人びとが出入りしていた。店内には、4種類のバナナが陳列されていた。週2回、ヒースロー空港近くのマーケットへ仕入れに行っているそうである。(訪問当時のレートでは1ポンドは200円強)
サウサンプトンのインド人街にある店。ここでマトケが売られている
世界各地からの野菜や果物が陳列されている
(1)'banana':(1キロ0.95ポンド)
日本で広く売られているバナナと同じと思われる。中米のコスタリカから輸入しているらしい。ずいぶんきれいに並べられている。ちなみにイギリスでは、棒や紐につり下げて売られているのをよく見かける。そのほうが、見栄えがよいし、熟し方のへだたりが減らせるからだろうか。
(2)'apple banana':(1キロ2.86ポンド)
果指が小さく、とても甘いバナナ。多分2倍体ABだろう。西アフリカのガーナから輸入しているらしい。
(3)'matoki':(1キロ2.65ポンド)
ウガンダでの「マトケ」のつづりmatookeと微妙に違っている。緑色。果指一本ごとに分けて売られている(ただし価格は重量あたり)。ガーナから輸入しているとのこと。なかなかのお値段。
(4)'plantain':(1キロ1.55ポンド)
緑色のものと黄色く熟したものの両方が売られている。エクアドルから輸入しているらしい。これも果指一本ごとに分けて売られている。
左が'apple banana'で、右が'matoki'
熟してきた黄色い'plantain'(左)と未熟な緑色の'plantain'(右)
この中で、'banana'と'apple banana'は主にそのまま生食されるが、'matoki'と'plantain'は調理してから食べられる'cooking banana'と呼ばれている。友人は普段は買わないそうだが、私のために'matoki'と'plantain'を特別に買って調理してくれた。'matoki'は、ナイフで皮をむいて、蒸すか煮る(茹でる)。電子レンジでも可。ウガンダでは蒸したあとマッシュするのだが、ここではつぶさなかった。'plantain'の調理法は'matoki'と同じだが、その他にオーブンで焼くこともある。すぐに完成するが、ウガンダで食べる本場の料理のようなねっとりとした感じがでないのは否めない。
'plantain'を蒸す
'matoki'を煮る(茹でる)
'plantain'をオーブンで焼く
おかずといっしょに頂くバナナ料理
(煮た'matoki'と蒸した'plantain')
6月28日くもり/雨 『バナナの都?ロンドンにて』
ロンドンの「ウガンダ商店」にはマトケがたくさん
サウサウンプトンの知り合いが言っていたロンドン東部のフォレスト・ゲート(Forest Gate)へ行った。ここに、ウガンダ人が経営している、ウガンダ人のためのよろず店があった。店内には、段ボール積みで「マトケ」のバナナが所狭しと置かれている。ジャマイカ人が、週1回木曜日に自動車で店まで運びにくるという。ウガンダから飛行機でヒースロー空港に輸送されてくるとのこと!ちなみにバナナの葉は無料でもっていっていいらしい。
そのほか、イギリスでは、プランテンやマトケとは別に、'green banana'と呼ばれるバナナが売られていることがある。これは、明らかに「マトケ」とは果実の形がことなるが、どのようにして調理されるのかは分からなかった。
今回の訪問では、5種類のバナナと出合ったことになる。多くの八百屋、スーパーでは、日本と同じ種類のバナナが売られているが、インド系の店に行くと、'plantain'が売られている。'green banana'というバナナが売られていることもある。ごく一部の店では、「マトケ」が売られている。イギリスでは、西アフリカ、東アフリカ、アフロ・アメリカ系といった、さまざまな出身の人びとが、それぞれバナナを買って調理している。その流通経路は、'plantain'のように重なっていたり、「マトケ」のように独自のものだったりする。遠くで故郷の料理を求める心と、それを可能にする流通や市場の成り立ちとその国際性、なかなか興味深い問いである。