大原芽生

知らない日常

サイズ 縦185×横130mm

材料 紙

電車での移動中やカフェでの作業中、なにかの列に並んでいるときなど、ふとした瞬間に聞こえてくる見ず知らずの人たちの会話が面白くてなんとなく聞いてしまうことがある。その内容は衝撃的なものであったり、意外と自分に近い話であったり、ただただくだらなかったり、真剣な相談であったり様々だ。そんなとき、ふと自分の知らないところでたくさんの興味深い事件が起きていることを実感する。この作品はそんな会話を記録し、関係のない第三者が気軽に楽しむことを意図して制作した。

someone’s everyday I don’t know

Size  Length 185 x width 130 mm

Materials paper

"Sometimes when I'm moving by train, working at the cafes or waiting in a line, stranger's conversation I could hear by chance are so interesting and I listen carefully.

The contents can be shocking, surprisingly close to me, just silly, or serious consultation. At that time, I suddenly realize that many interesting incidents are happening behind my back. I recorded such conversations and created this work with the intention that unrelated third parties can easily enjoy it.

一年の記録

個人研究パワポ大原芽生 - 大原芽生

2021年度稲垣ゼミ活動記録

法政大学国際文化学部三年 大原芽生(19G0404)

1. はじめに

 はじめに、本レポートは稲垣ゼミでの一年間の活動を振り返り、次年度への展望を明らかにすることを目的とする。今年度の活動について大まかにまとめると、春学期はみなとメディアミュージアム(以下、MMM)に向けた話し合い、秋学期はMMMサテライト展示やスタニフラフスキーシステム、個人研究展を行った。次からは、以上四つの項目について詳しく振り返っていく。

2. みなとメディアミュージアム


 春学期は、8月に開催予定であったMMMに向けた話し合いを中心に活動した。新型コロナウイルスの影響により、全てオンラインでのゼミ活動であった。そもそもMMMとは、2009年から始まった茨城県ひたちなか市那珂湊で開催される地域芸術祭のことである。全国各地からアーティストが集い、那珂湊という土地を活かした作品が制作される。私たちの所属する法政大学国際文化学部稲垣立男研究室も参加アーティストとして作品制作に取り組んだ。毎週のゼミでは、どのような作品をつくるか、どこでどのように展示を行うかなど話し合った。結論として、ゼミ全体でのプロジェクトである『My Place』と、それを基にした個人制作を行うこととなった。『My Place』は、那珂湊の人々に那珂湊での個人的な体験について動画を回しながらインタビューし、それらを映像作品にまとめるものである。また、インタビュー対象者が体験したことを文字起こしし、体験した場所にサインボードとして設置する予定であった。春学期の間中これらについて話し合いや制作を行なっていたが、厳しいコロナ禍の状況を踏まえ延期することが決定された。

3. MMMサテライト展示

 MMMは延期となったが、春学期に取り組んできたことを無しにしたくないという想いから学校でサテライト展示を開催することになった。上記で説明した『My Place』に加え、インタビューを踏まえた個人制作を行なった。私は、ひたちなか海浜鉄道株式会社社長である吉田千秋さんのインタビューを取り上げた。吉田さんのお話から、那珂湊について二つの印象を持った。一つは、海のまち、各ジャンルの一級品が集まったバランスの取れたまちというような、“那珂湊”という土地が持つ優れたイメージである。もう一つは、外部の人々を迎え入れる地元住民のあたたかいイメージである。この二つのイメージをいくつかの布や糸を用いて表現し、タペストリーを制作した。インタビューは地元の方のエピソードに焦点を当てた具体的なものであるのに対し、この作品は東京で暮らすアウトサイダーな存在である私が感じ取った印象を表す抽象的なものである。春学期から続けていたMMMにまつわる一連の活動によって、自分の知らない地域とアートによって新たな関わりが生まれた瞬間を体験できた。

4. スタニフラフスキーシステム

 MMMサテライト展示の終了後、スタニフラフスキーシステムのワークショップを行った。スタニフラフスキーシステムとは、演者が脳内で空想世界を創り上げて入り込み、その「役」として生きることでより自然な演技へと導くことだと解釈している。このワークショップでははじめに3〜5人のグループに分かれ、物語の設定を決めて脚本を作っていった。次に異なるグループと脚本を交換し、自分のグループのものではない物語の続きを書き進めた。最後に他のグループによって書き足されたものを自分たちの元に戻し、物語を完結させた。このような手順で完成した脚本をもとに、それぞれのグループで一つの映像作品を制作した。私のグループは、稲垣ゼミ卒業生の3人による旅行計画から帰国後に再会するまでの過程を描き、視覚に頼らず聴覚だけを使って楽しめるラジオドラマを制作した。個人的には、同じ過程で作り上げたにも関わらず、各グループによって全く違う作品が出来上がったところが面白く感じた。

5.秋学期個人研究展

 秋学期の終わりには、一年間のまとめとなるような個人研究展を開催した。何週かに渡って研究案を練り、各々で制作を行った。私は、見ず知らずの人たちの会話が面白くてつい耳を澄ませてしまうこと、そして自分の知らないところでたくさんの興味深い事件が起きていることを実感する瞬間を第三者に共有するような作品を作りたいと考えた。そこで、移動中やカフェでの作業中に周囲の人々の会話を聞いてメモをし、面白いと感じたものをテキストにして展示した。対面での展覧会が行えなかった昨年とは異なり、今年は直接他のゼミ生の作品を見れたり、感想を貰えたりしたため、今後へのモチベーションへと大きく繋がった。

6. まとめ

 以上のように一年間の活動を振り返ることで、良い点と改善点がはっきりとした。まず良い点は、昨年度より幅の広い活動が行えたこと、他のゼミ生との関わりが増えたこと、展覧会を作り上げる術を学んだことなどがある。対面授業が可能になったことで、出来ることが増えた点が大きく影響していると考えられる。反対に、展示方法に引き出しが少ない点は改善すべきだと感じた。個人的にも全体的にも、より多くのアートスペースに顔を出して展示についての知識を増やすべきだろう。

7. おわりに

 最後に、来年度のゼミ活動へ向けていくつか希望を挙げたい。一つは、可能な限り対面授業を行いたいというものだ。本年度は秋学期から対面授業が可能になり、直接的なコミュニケーションがもたらすメリットを充分に感じられた。他には、ワークショップや郊外授業を沢山行いたいというものだ。実際に何かしたりどこかへ行ったりして“体験”することで、より学習の幅が広がると思うからだ。また個人的には、秋学期個人研究の作品こそ自分が普段から興味を持っている内容だと理解したため、日頃から日常における面白い出来事を記録していきたい。そしてそれを基に作品としてアウトプットしたいと考えている。