ヴィセンテ伊藤愛美

SOUNDS

サイズ:203mm×254mm

材料:キャンバス、ボンド、塩、水彩絵の具" "ボンドと塩と水彩絵の具を使用してQRコードを描きました。

作品のQRコードを読み取ると作品の制作ムービーが再生されるので、ぜひイヤホンをしてご覧ください。映像再生時は音に集中して視聴することで何か発見があるかもしれません。

SOUNDS

Size::203mm×254mm

Materials: canvas, glue, salt, watercolor" "This artwork painted with glue, salt and watercolors.

Please scan the QR code with your smartphone to access the production film. When you play the video, please wear headphones or earbuds to watch it. Also, you may discover something when you focusing on the sound of this video."

一年の記録

19G0615 - ヴィセンテ伊藤愛美

1年間の活動記録

国際文化学部国際文化学科

19G0615 ヴィセンテ伊藤愛美

以下では春学期と秋学期に行った個人研究活動記録とそれらを通して私自身が得たもの、今後の展望について説明していく。

まず、春学期は茨城県ひたちなか市那珂湊で開催された「みなとメディアミュージアム2020→2021」(以下MMM)への参加作品として、稲垣ゼミ全体プロジェクトである那珂湊の人々の個人的な体験についてのインタビューを基としたテキストと映像作品を制作した。またゼミ生のMMM個人研究作品として、インタビューテキストを基にした作品を発表した。私は当初、インタビューを基にその情景を再現した写真作品を制作を予定していた。シンディー・シャーマンの「アンタイトル・フィルム・スティル」を参考に、作品の制作計画を立て、自身を被写体として那珂湊以外の土地で撮影を行う予定でいた。しかしながら、夏頃の新型コロナウイルス拡大の影響で、様々な場所への撮影に行けなくなってしまったため計画を変更した。最終的な作品としては、同ゼミ所属の萩原さんと共同で那珂湊の地図の上にインタビューを基にした絵を描く「Nakaminato on Nakaminato」を制作した。この作品では、那珂湊の地図と私の想像した那珂湊の様子を地図上に重ねることでリアルと想像の融合、そしてその違いを表現している。制作計画に関しては、時間が限られた中での制作だったこともあり、完成した地図上の絵のテイストや構図の違いが見られ、お互いの作品イメージのすり合わせが不十分な部分があったと感じた。しかしながら、展示方法を作業場の一角のようになるよう工夫したことで、インスタレーションの要素を加えることができ、お互い満足のいく共同作品となった。 以上が春学期に行った個人研究の活動記録である。

次に秋学期の活動記録を説明していく。秋学期はまず、スタニスラフスキーシステムを使った映像作品の制作を行った。スタニスラフスキーシステムとは、俳優で演出家であるスタニスラフスキーによって提言された演出の方法論である。台本に書いてある「いつ」「どこで」「誰が」「何をした」かを明確し、役者は外見や行動から演じるのではなく台本で明確にされた周囲の状況や情報から役に入る演技方法である。そうすることで役者の演技は身体表現や感情のリアルさが引き出されるという演技・演出方法である。このスタニスラフスキー・システムのワークショップにおいて、私のグループでは「新入生歓迎会(いつ)」「居酒屋(どこで)」「大学1年生3人(誰が)」を軸に、前半の台本を書き進め、別グループの作成した筋書きを後半で加えながら大学1年生が新入生歓迎会の席でガールズバンドを結成するという流れの台本を完成させた。そして撮影方法には、通常の演技に加えて写真とアフレコを組み合わせたものを織り交ぜながら全3幕に渡って撮影を行った。通常の演技の部分で、台本を全て暗記することは不可能だったため、プロジェクターでスクリーンに台本を投影しカンペとして読む方法をとった。写真とアフレコの部分では、演者本人の写真と、別グループの方に協力してもらい、その方々の音声を録音し制作した。このワークショップでは、全体を通して比較的長い期間をかけて作品作りができた。良かった点としてはスクリーンに台本を映しながら演じる方法をとったため、セリフが詰まったりせずスムーズな映像になった点と、設定が大学一年生ということもあり、演技のぎこちなさがかえって一年生の緊張を表現できていたところである。一方で修正すべき点は、元々の台本の展開がかなり急であったため、映像を撮る前にもう少し台本を修正してスマートな展開を作るべきだったところである。 以上がスタニスラフスキーシステムを使った映像作品に関する活動記録である。

秋学期の後半では、個人研究展の作品として塩とボンドと水彩絵の具を使用した絵とそれを制作している様子を撮影した映像作品を発表した。映像作品は目で見ている映像と耳で聞こえてくる音の差異と違和感を表現した作品となっており、映像のほとんどの音を絵の制作時には使われていないものを使用して再現している。例えば、映像内でカッターの刃を調節している部分では、「カチカチ」という音をペットボトルキャップのギザギザの部分をひっかくことで再現した。また映像後半の塩に水彩絵の具が浸透していく様子を映した部分では、炭酸飲料の「しゅわしゅわ」という音を録音して浸透していく音を再現した。これらの映像作品を制作する際に参考にしたのは、Ouvir 오비르の「ASMRゲーム 『Among Us』の効果音を作成する壮大な方法」である。この動画ではゲームの効果音を身の回りのものを使って再現しており、再現された音はバイノーラル録音されているため音フェチ動画として視聴が可能になっている。この動画を参考にして、映像作品の録音はlo-fiマイクと高性能バイノーラルマイクの2つを使用することで音フェチ動画として視聴できるよう工夫した。また映像作品はヘッドホンやイヤホンを装着して視聴してもらうことで音フェチ動画として完成するため、展示の際は絵画作品のみを実物展示し、映像作品はQRコードを読み取って再生するようにした。このような形をとることで、動画を視聴する際にイヤホンやヘッドホンの装着を促すことが出来た。この個人研究展の制作に関して良かった点は、アイディア発案から実行までがスムーズに行えたことと、使用した材料や機材も自宅にあるもので出来たため低コストでも納得のいく作品に仕上げることができた点である。改善すべき点は、来場者に必ずQRコードをスキャンしてもらえるように展示の方法をもう少し工夫して、よりくの人に動画を再生してもらうようにすべきだった点である。 以上が春学期と秋学期それぞれに行った個人研究の活動記録である。

 春学期と秋学期に行ったこれらの活動を通して私が得たのは「臨機応変に対応する」ということと「柔軟性と意外性をもつ」ということである。どちらも同じようなことのようにみえるかもしれないが、前者の「臨機応変に対応する」ということは、MMMの作品制作が困難になったところから作品を変更して行うという行動から成功したためそこから得ることができた。また「柔軟性と意外性をもつ」ということは秋学期の個人研究展の映像制作で、代用品を使って音を再現する発想から得ることができ、今後の研究につなげようと考えている。

 最後に今後の展望として今後も映像の音を代用品で再現した意外性のある音フェチの映像作品を制作予定である。今度は代用品を使って音を再現している映像をメインに、音に特化した映像制作して見たいと考えている。