第38回 木瓜(ぼけ)の花
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第38回 木瓜(ぼけ)の花
旅立ちの季節がめぐってきました。人生で何回もない卒業という節目。いろいろな人から言葉をいただき、そして贈ってきました。皆さんは、どんな言葉を思い出しますか。遙か昭和の時代の自分のことを思い返してみます。まず思い出すのは、高校を卒業して故郷を出るとき、旅立つ不安いっぱいの私に友人がくれた色紙に添えられた「木瓜は木瓜の花で咲く」という言葉です。「あなたはあなたのままでいいのだ」と励まされました。
大学を卒業した日の思い出の言葉は、「よかったら・・・どうぞ」です。卒業式の後に謝恩会が開かれた昭和の時代、帰る時間になって、私はアパートの鍵を忘れたことに気づきました。このとき私が咲かせたのは「ボケの花」。しかし、そんなボケにも拾う神があり、一人の同窓生が、「よかったら・・・どうぞ」と自宅に泊めてくれました。携帯電話もなかった時代の話、突然「珍客」を連れ帰った友人のご家族は、「あらあら」といいながら、気持ちよく受け入れてくださったのです。数十年の月日が経ち、その友人と話していたとき、「あなたの頑張る姿は私達家族の支えになっていたのよ」と言ってくれました。助けられるばかりの「ボケの花」でも、少しは何かの支えになっていたのだ、と心がじんわりと温かくなりました。
卒業される皆さんも、いろいろな人に助けられ、そして助けて生きていくことになると思います。
「他者のために自己を磨き、活動の中で奮闘する」という東洋大学の心は、極めて崇高なことであり、その含意を深く理解するのはとても難しいと思います。しかし、助けたり、助けられたりしながら、支え合って生きられるような平和な社会を創っていこうという思いを確認することで、その一歩を踏み出すことができるのではないかと考えています。
皆さん一人ひとりの生涯にわたる学びの旅が、彩り豊かで楽しいものとなりますように、心から願っています。
\この記事を書いた人/
公開日:2025年3月1日