第39回 民主主義を守るための不断の努力
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第39回 民主主義を守るための不断の努力
2月中旬、韓国・光州で開催された国際シンポジウムでの基調講演を頼まれ、台湾の研究者と一緒に参加をしてきました。皆さんは、「光州事件」を知っていますか?韓国では「5・18光州民主化運動」とも呼ばれています。
1980年5月18日から27日にかけて、全斗煥(チョン・ドゥファン)将軍の軍事クーデターと韓国全土における戒厳令の布告に抗議する光州市の市民・大学生らが戒厳軍と衝突、市民に向けて発砲が繰り返されて数多くの市民が犠牲になりました。
この時は韓国の民主化は成し遂げられませんでしたが、その後の民主化運動の高まりと1987年の民主化宣言を経て、1988年に民主的な選挙による初の大統領が選出されました。2017年公開の韓国映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」は光州事件を題材とした実話に基づいた映画です。ぜひ見てみてください。
私と一緒に光州で講演した台湾のメアリーさんは、「台湾の小学生は全員、“光州”を知っています。学校で“光州事件”について必ず学び、台湾にとって民主主義を守ることの大切さを考える授業があるのです」と語っていました。
光州事件から44年が経過した昨年2024年12月3日夜、韓国の尹(ユン)大統領は「非常戒厳(戒厳令)」を宣言しました。軍と警察が出動して国会を包囲しようとしましたが、深夜で情報が錯綜するにも関わらず、国会前に多くの市民が集まって抗議をし、首都が掌握される事態には至りませんでした。軍も市民に銃口を向けることはなかったようです。野党の国会議員らが深夜の国会に駆けつけて、4日未明には解除要求決議案を可決し、戒厳令は6時間ほどで解除されました。
韓国の人々の民主主義を守るための行動力に深く感銘を受け、日本国憲法第十二条を思い返した清らかな朝でした。
*日本国憲法 第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。(後略)
朝鮮大学で開催された気候変動教育に関する国際シンポジウム
運動の中心となった場所は5.18民主広場として現在整備中
戒厳軍と対峙する光州市民・学生たち
日本語による説明もありました
\この記事を書いた人/
公開日:2025年4月1日