14. Baby blue eyes

赤ちゃんがコートに迷い込んできているシーンに他意はありませんのでご了承ください

-----

チェココンビの子ども時代

その日は一人でテニスコートで練習をしていた。

ベンチに座って休憩していると、足元で何者かが動くのが見えた。

おれはびっくりして飛びのいた。

「うわっ! 誰だ!?」

小さい男の子が、ベンチの下から顔を出した。

いつの間にコートに入り込んできたのだろう。

「きみ、どこの子? 名前は?」

その子に聞いてみた。

その子は小さくてまだしゃべれないようだ。

でも、おれが持ってるテニスボールによちよち向かってきた。

「へえ、このボールがほしいのか。ほら」

ころころ転がしてやると、両手でつかまえて声を出して笑った。

かわいい赤ちゃんだな、とおれは思った。

弟がいたらこんな感じかな。

まだ歩けないんだろうか。

見ていると、その子はハイハイでおれのところにやってきた。

足に手をかけて、立ち上がろうとした。

「ほらほら、がんばれ」

少し助けてやると、男の子はつかまり立ちができるようになった。

「よかったな。ママとパパが喜ぶよ」

笑いかけると、その子もつられて笑顔になった。

今まで、こんなに青いきれいな瞳を見たことがない。

それに、髪も金色なんだ。

こいつの家族もそうなのかな。

「トム! こんなところにいたの」

大人が二人、こちらにやってきた。

その人たちはおれに気が付いた。

「あら、お兄ちゃんが遊んでくれたのね」

「えっと……このテニスボールが好きみたい、この子」

お母さんみたいな人は、男の子を抱き上げた。

お父さんみたいな人が話しかけてきた。

「きみもテニスが好きなのか。選手になりたいの?」

「はい。でもわかんない……アイスホッケーもやりたいし」

「そうか。この子もテニスとホッケーを見るのが好きなんだよ」

おれは何だかうれしくなった。

「大きくなったら、いっしょにテニスしようね、トム」

その子に手を振った。

男の子は、おれをじーっと見つめて同じように手を振った。

3人は帰って行った。

おれは練習に戻った。

あの子もテニスをするようになったら、また二人で遊びたいな。

いや、ちゃんと試合をしてみたい。

そうそう、おれはダブルスにも興味あるんだ。

あの子とペアを組んだりして……。

そう想像すると楽しくなった。

うちに帰ったら、みんなにこの子の話をしよう。

――トムっていう目の青い男の子がいて、一緒にボールで遊んだんだよ――