09. 忘れたくなかったから
インドチェココンビ
おれは治療を終えて、ツアーに戻った。
ダブルスのパートナーに――彼に会うのは久しぶりだ。
「おかえり。よくなってよかった」
「またあなたと一緒に出られてうれしいよ。おれが休んでる間、どこの大会に出てた?」
彼は首を横に振った。
「どこにも」
おれは耳を疑った。彼ほどの選手なら、ダブルスの誘いは引きも切らないはずだ。
「どうして? 誰とも組まなかったのか?」
「ありがたいことに何人かから誘いをもらったんだけど、全部断った」
ますますわからなくなった。彼もツアーを休む必要はなかったのに。
「きみとのプレースタイルを忘れたくなかったからね!」
パートナーは人懐っこい笑顔で答えた。
――そうか。彼は少なくとも当分は、おれとペアを組みたいと思ってくれているんだ。
感謝の気持ちを込めて、彼の肩に頭を預けた。