01. あなたとメダルを

2012年ロンドンオリンピック

スイスチーム

「先輩、残念だったね」

「……うん」

「また一緒にオリンピックに出られてすごくうれしかった。シングルスもがんばってほしい」

「……」

「?? 先輩?」

「……おかしいな。これでシングルスだけに集中できるはずなのに」

「元気出してよ。あなたがそんなこというなんて、珍しい」

「勝ち負けよりも、もうきみと試合に出られないんだと思ったら、寂しくなった」

「おれも。あなたとメダルを狙えなくなって寂しい。でも、同じこと考えてるのがわかってうれしいな」

「……シングルス、応援に来てくれるか?」

「あったり前だよ!! みんなで応援するからさ。スイスチームのみんなで」

イギリスチーム

「ちっくしょう!!」

「おい、そんなに荒れるな」

「兄貴、だって第1セットはこっちが取ったんだぜ。それをひっくり返されるなんて、納得いかねーよ!」

「おまえががっかりすることないだろ。シングルスも控えてるんだからさ」

「おれのことはいいよ。あんたといっしょの試合で勝ちたかったんだ!」

「……そうか」

「……負けたの、おれのせいなのかなって……」

「何言ってるんだ」

「もしかして、おれが集中してなかったのかもしれないって思って」

「おまえのせいじゃない」

「……」

「おれは、自分のダブルスが勝つより、おまえが勝ってくれたほうがうれしい」

「兄貴、そんなこと言っていいのか?」

「何でいけないんだ?」

「……シングルス、絶対勝つよ。約束する」