05. 先輩の見せ場

2012年デビスカップ決勝のチェココンビ

ぼくの第4試合は終わってしまった。

思ったより疲れていた。第2試合にてこずったせいか。

そもそもダブルスにも出た時点で、相手チームとは体力の点で差がつくのは当然だろう。

次の第5試合のことを考えた。

先輩もぼくと同じ条件だし、同じような負担をかけるのがつらかった。

ベンチに戻ると、彼に声をかけられた。

「お疲れさま。よくがんばった」

「ごめんなさい。この試合で決めたかったのに。ほんとに……」

申し訳ない、というつもりだったけど、さえぎられた。

「それ以上言うな。おれのために見せ場を作ってくれたんだよな」

どういうことだろう。何と言っていいかわからなかった。

「第5試合までもつれこんで、最後にはおれたちが勝つんだ。盛り上がるぞ、これは」

彼は楽しそうにそう言った。

「おまえは先輩思いだな。次は思い切り応援してくれよ」

ぼくは何だか泣きたいような笑いたいような気持ちになった。

「応援します。みんなで先輩をサポートするよ」

彼はにっこり笑って、ぼくの髪の毛をくしゃくしゃとした。