02. サッカーの話

<2012年全米オープン>

四大大会で優勝するためには、何でもしなくちゃいけない。

そうコーチは言った。

「よく彼とサッカーをしてるようだね。でも、もうそんな余裕はない。本気で勝ちたかったら、できることはなんでもしなければ」

それを聞いて、おれはショックを受けた。

でも、確かに一番の目標は四大大会で勝つことだ。

* * *

「おーい! これからサッカーしないか?」

いつもの調子で声をかけてきた。

「……ごめん。この2週間、ずっとスケジュールが詰まってるんだ」

「そうか。しょうがないけど、ちょっと寂しいな。お互いがんばろうぜ」

あいつは息抜きにサッカーをしながらでも、決勝まで上がって優勝できるだろう。

でも自分は違う。

プレッシャーは抱えているし、シーズンの疲れは出てきているし、少しでも気を抜くと他の連中にひっくり返されそうだし……。

おれはみんなと離れて練習を始めた。

* * *

「おめでとう。強くなったな」

決勝の後、あいつは握手をしながらこう言った。

おれはまだ、自分が優勝したことが実感できない。

その代わり、こんな言葉が浮かんだ。

「これで、またおまえとサッカーできるんだ」