11. こんな勝ち方をしても
スウェーデンのエースとチェコの後輩
<2011年バスタードの大会準決勝の後>
おれと彼の試合はあっけなく終わった。
あいつは何だか元気がなかった。
試合後、ロッカールームで彼をつかまえた。
「おれはこんな勝ち方をしてもうれしくない」
彼は泣きそうな顔でおれを見た。
「ごめん……自分でもわからないんだ」
おれはため息をついた。
「どこか悪かったのか?」
彼は首を振った。
「そうか。ならいいんだ。おまえとは、もっといい試合になるはずなんだ。去年のマイアミは何だったんだ。それから、全仏オープンは」
相手は黙って聞いていた。
おれは一番言いたかったことを言った。
「また勝ち上がってきて、おれと戦え」
彼は少し目を丸くした。
そして、口ごもりながらつぶやいた。
「……次は」
「え?」
「次は、きみに勝ちたい」
おれはうれしくなった。
こいつ、やる気はあるんだな。
「おれも、そんなおまえに勝ちたい」