第39回例会では,David F. Bjorklund & Anthony D. Pellegrini による『進化発達心理学-ヒトの本性の起源』(2002年)を文献として講読します。本書は「進化心理学のパースペクティブから見た発達心理学」とでもいうべきテキストです。20世紀の発達心理学は進化論とほとんど接点を持たなかった(ただし,ピアジェを除く)のに対し,2002年に書かれた本書は発達心理学に積極的に進化心理学の成果を取り込もうとする斬新な試みであるという意味でたいへん刺激的な内容です。
本例会のコメンテーターとして,進化発達心理学にいち早く注目し本書を監訳された無藤隆先生にお願いしています。無藤先生は発達心理学、教育心理学に関する多方面の研究活動だけではなく,学会理事,教育行政委員,幼児教育指導者としても幅広く活躍されており,ショートレクチャーでは有益なお話をいただけるものと思いますので,ご期待ください。
なお,今回の会場は早稲田大学の早稲田キャンパスですが,いつもの14号館716号室ではなく,16号館612教室となりますので,ご注意ください。
●日時:2012年12月15日(土)10:00―17:30
●場所:早稲田大学・早稲田キャンパス16号館6階612教室
詳しくは以下の地図参照。なお,16号館は1階からも入れますが,西門近くの2階からの方がアクセスしやすい経路になっています.早稲田キャンパスに入ったら,まず西門(第一西門でも第2西門でもかまいません)を目指して下さい.西門から16号館に向かって歩けば,自然に2階の入り口にたどり着きます.会場へのアクセス( http://www.waseda.jp/jp/campus/waseda.html )
●文献:David F. Bjorklund & Anthony D. Pellegrini (2002). The Origins of Human Nature: Evolutionary Developmental Psychology. APA. 無藤隆監訳;松井愛奈・松井由佳訳:『進化発達心理学-ヒトの本性の起源』2008年 新曜社.なお,テキスト・報告は邦訳を使用します.
●時間割およびレポーター
司会:中垣 啓(早稲田大学)小島康次(北海学園大学)
10:00 開会
10:05―11:15 第2章 発達する新しい心の科学 レポーター:大浦賢治(早稲田大学大学院博士後期課程)
11:20―12:30 第3章 歴史と論争 レポーター:齋藤有(お茶の水女子大学大学院博士後期課程)
12:30―13:30 昼休み
13:30―14:40 第4章 若さの利点 レポーター: 瀬尾知子(お茶の水大学院博士後期課程)
14:45―15:55 第5章 認知を分類する レポーター:阪脇孝子(早稲田大学非常勤講師)
15:55―16:10 小休憩
16:10―17:00 ショートレクチャー: 講師 無藤隆先生(白梅学園大学教授)
17:00―17:30 全体討論
●ショートレクチャー: タイトル 『進化心理学から幼児教育へ』
講師 無藤 隆(白梅学園大学教授)
ショートレクチャー概要:私は進化心理学の専門家ではまったくないし、実は知見も豊富にあるわけではない。ただ、発達心理学に関わりつつ、近年は幼児教育の検討を進めている立場から、その知見に学ぶことは多いと思っている。進化心理学は何より生物の性的淘汰への生き残り戦略と、また人間の心理的傾向を進化の過程(とりわけ狩猟採集の人類の始まりの頃への環境適応、またそれ以降の環境的変化の多様性)に基づいて検討しようとする。そうだとすれば、教育の比較的初期の時期を扱い、かつどうやらごく素朴な遊びといったものを土台にその教育を構築しようとする立場はその進化心理学と親近性があるのかもしれない。特に遊びはどういった進化的意義が考えられるか。一つは同輩への支配性・優越性(dominance)であり、それによる飢餓時期の養育の確保である。第二は親密性であり、仲間集団の形成と他集団への優越である。第三は目的性であり、目的志向の協力によりティームプレイを可能にし、思春期以降の同棲集団での優越性を確保する。第四は遊戯性(playful)であり、乳児の延長として楽しさを求め、新奇性への好奇心を広げ、新たな環境変化への探索を可能にする。それらは幼児教育の基本ともすべき原則である。
●参加申し込み・参加費:事前の参加申し込みは必要ありません。また参加費に関しましては日本発達心理学会認知発達理論分科会員の皆さんは,規約にありますように年会費(今回のみの参加費ではありません)として千円徴収しますが,院生など定職のない人は無料です。
●問い合わせ:本例会について内容に関してのお問い合わせは第39回例会幹事の中垣 啓(早稲田大学学E-mail:nakagaki@waseda.jp)へ,その他に関しては山名裕子(事務局:秋田大学,E-mail: yamana@gipc.akita-u.ac.jp)までお願いします。
また認知発達理論分科会の紹介や過去の例会に関しましては下記のホームページをご覧ください。https://sites.google.com/site/renzhifadalilunfenkehui/home
●懇親会:研究会終了後,会場近くにて懇親会を開く予定です。レポーター及び学生会員には参加費の割引があります。こちらも是非ご参加ください。