第43回例会では,乾 敏郎先生の「脳科学から見る子どもの心の育ち」ミネルヴァ書房(2013)を文献として取り上げます。著者である乾先生による著書の特徴とその意義は,以下の通りです。
本書では,(1)認知発達の特性とその神経基盤,(2)発達障害の脳内メカニズムに関して可能な限り発達認知神経科学の最新の知見を盛り込むように努力しました。現在,国内では認知発達の神経科学的な仕組みに関する書物はほとんどありません。一方で海外に日を向けると,心理学の教科書はそのほとんどが最初に脳の構造と仕組みを解説しています。現在の心理学において脳科学の知見は不可欠であるといえますし,実際に多くの心理学者は自らも脳研究(特に脳イメージング研究)に携わっています。しかしながら残念なことに,特に我が国においては,認知発達の研究者と脳科学や神経科学の研究者の聞に交流さえも見られないのが現状です。本書で紹介したように,近年は世界的にも発達認知神経科学の分野が急速に発展を見せつつあり,発達心理学と脳科学を融合させて,人間がこのような発達を遂げる背景にどんな原理がはたらいているのかを説明する発達原理を考え始める好機であるといえます。そこで,このような国内外でのギャップが少しでも埋まってくれれば,という思いから本書を執筆することにしました。一人でも多くの人に認知発達とその脳内メカニズムに関心を寄せていただければ,と願っております。本書がそうした研究の現状を理解する一助となれば幸いです。
恒例のショートレクチャーは,著者である乾 敏郎先生(京都大学)にお願いしています。乾先生は長年,身体化による認知機構の研究に従事され,視覚認知,言語理解や言語生成に関する脳内メカニズムに関する理論的モデルや身体図式を基礎とした予測機能の脳内機構の実験的研究,イメージ生成と操作に関する実験的・理論的研究などで多くの成果を上げられ,近年は,発達認知神経科学の研究にも取り組まれています。
認知発達及び発達障害の発達認知神経科学の最新の研究に触れる貴重な機会ですので,ご期待ください。
今回は関西地区では初めての京都大学での開催です。多数の皆様のご参加をお待ちしております。
●日時:6月14日(土)10:05~17:30
●場所:京都・芝蘭会館別館 研修室2
バス停「京大正門前」より徒歩3分。宿泊も可能です。アクセスは下記のHPをご参照ください。http://www.shirankai.or.jp/facilities/access/index.html
●担当幹事:乾 敏郎・落合正行
●文献:乾 敏郎. (2013) 脳科学から見る子どもの心の育ち. ミネルヴァ書房(ISBN:978-4-623-06778-7) 目次等は下記のHPをご参照ください。
http://www.minervashobo.co.jp/book/b122284.html
●時間割およびレポーター(司会:乾 敏郎・落合正行)
10:00 開会
10:05-11:00 担当:西尾直也さん(京都大学大学院情報学研究科 M2)
第1章:視機能の発達-胎齢24週~生後7か月
11:00-11:55 担当:鈴木佐知歌さん(京都大学大学院情報学研究科 M2)
第2章:環境との能動的インタラクションの発達-胎児期~生後4か月
11:55-12:50 昼休み
12:50-13:45 担当:飯村大智さん(京都大学大学院情報学研究科 M2)
第3章:予測的な運動機能と自己意識-新生児~生後8ヶ月
13:45-14:40 担当:今福理博さん(京都大学大学院教育学研究科 D2)
第4章 like-meシステムとdifferent-from-meシステム
14:50-15:45 担当:田中友香理さん(京都大学大学院教育学研究科 D2)
第5章 言葉の芽生え
15:45-16:00 小休憩
16:00-17:00 ショートレクチャー:「認知発達のルーツ:その後の展開」
講師 乾 敏郎先生(京都大学大学院情報学研究科教授)
17:00-17:30 全体討論
●参加申し込み・参加費:事前の参加申し込みは必要ありません。また参加費 に関しましては日本発達心理学会認知発達理論分科会員の皆さんは,規約にありますように年会費(今回のみの参加費ではありません)として2000円徴収しますが,院生など定職のない人は無料です。
問い合わせ:本例会について内容に関してのお問い合わせは第43回例会幹事の乾 敏郎(京都大学 E-mail: inui@i.kyoto-u.ac.jp)または落合正行(追手門学院大学大学 E-mail: otiai@res.otemon.ac.jp),その他に関しては山名裕子(事務局:秋田大学,E-mail: yamana@gipc.akita-u.ac.jp)までお願いします。また認知発達理論分科会の紹介や過去の例会に関しましては下記のホームページをご覧ください。
https://sites.google.com/site/renzhifadalilunfenkehui/home
●懇親会:研究会終了後,会場近くにて懇親会を開く予定です。レポーター及び学生会員には参加費の割引があります。こちらも是非ご参加ください。