From Y.TSUNOYAMA <eurouno@gmail.com>
to H.Orita <Orita@daisan-h.ac.jp>
Date Sun, Feb 14, 2010 at 4:26 PM
Subject 現役京大生の件
maild-by gmail.com
折田先生
前略
ニューズウィーク日本版2月10日号の表紙を見て少々衝撃を受けました。白い太文字で「ジャパン・アズ・ナンバースリー」と大見出しが打ってあったのです。頭ではそのような時代になったことは理解しておりましたが、あらためて文字にされると腹の底に鈍い重みのようなものを感じるのです。
昨今の我が国は、世界的な金融危機に見まわれてからというもの多くの企業が苦しい戦いを続けております。政界では55年体制が完全に崩壊、新政権は旧体制から受け継いだ負の遺産を抱えながらの前進を余儀なくされています。年金システムの危機や財政赤字、少子化問題に若者の就職難など、依然として大きな問題が未解決のまま。もちろん政治家にも問題はあるのだろうと思うのですが、マスコミはバッシングばかり。もっと未来を見据えた前向きな提案を伴った論議を互いにぶつべき時期であるのに、一般市民は果たして前進しているのか後退しているのかさえわかりません。
もはや安定成長の時代はとうの昔に終焉を迎えており、政治や経済、そして社会制度に憲法、もしかしたらこの国を在り方というものすら大きく見直さなければならない。全体としてはそんな風潮がぼんやりと漂っております。しかしながら私は決して不安になど思っておりませんし、この国の未来はきっと良いものになると信じているのです。なぜなら、先生や三高の先輩方という良き手本がこの国にはあるからです。
先生は明治維新という我が国の革命的な激変期に青春時代を過ごされましたが、見事にそれを乗り越えられ、そのご経験を基に三高というすばらしい学校をお創りになられました。
そしてまたその三高から巣立った先輩方が、明治から大正、そして昭和という日本の大変な艱難辛苦の時代を乗り越え、大戦後の混乱期であっても些かもへこたれることなくこの国を世界に胸を張れる国にまで育てて下さった。
ですから私たちの世代の役割は、けっして先輩方からのタスキを安易に後輩たちへ受け渡すことではなく、自ら進んで未来を切り開いた先輩方の強靭な精神を若者たちに伝えることであると考えます。せっかく高度に情報化された現代であるのに、マスコミでは大人の悪い面ばかりを報道し続けているように感じます。瑣末な事柄をさも得意気にあげつらい、あるいは不安になることばかりを煽るように垂れ流している。そんなことも少なくないように見受けます。もしそのような社会の在り様のせいで若者たちが萎縮してしまっているのなら、私たちが彼らを救わなければなりません。大人が彼らに伝えるべきは、けっして不安や恐怖、卑下といった類のものではなく、彼らが目指すべき人間像、つまり確立した自己に裏打ちされた気高き個人の姿を示すことであると考えます。
折田先生、はしくれではありますが私も教員です。先生のように今の若者たちを見守って行きたいと思います。彼らが確固とした自主独立の精神を養い、その結果自らの力で世界へ立ち向かっていけるよう、そのお手伝いをし続けようと思います。そうすれば、先生や先輩たちのように、彼らも必ずやこの困難な時代を立派に乗り越えて行くはずです。
我が国の未来は大丈夫だと思います。
なぜなら先生、京大は今日も自由なのですから。 草々
*図はイメージです。実際の先生、三高生、京大生とは異なります。