From Y.TSUNOYAMA <eurouno@gmail.com>
to H.Orita <Orita@daisan-h.ac.jp>
Date Sat, Feb 11, 2010 at 9:42 PM
Subject 渡米の件
maild-by gmail.com
折田先生
前略
渡米を果たされた時、先生はどのようなお気持ちで彼の大陸の風景に臨まれたのでしょうか。アメリカナイズされている現代の私どもですら、米国を旅しますとそのスケールの大きさに圧倒されます。先生が渡米された頃の日本はまだ和服に髷などが主流であったと伺っております。それが制度や文化、風習など、ありとあらゆるものが日本とは異なる国へと挑まれたわけですから、そのご苦労たるやいかほどのものであったかと存じます。もちろんまずは米国に慣れることから始めなければならなかったはず。先生はそれを、コールウィン牧師のもとで猛烈な勉強しながら遂行された。そして渡米から2年、受験直前に岩倉具定公の突然の病によるご帰国などのハプニングに見舞われながらも、甲斐あってか見事一発でニフジョルジー・カレッジに合格されます。おそらく留学した者たちの中には、たんなる遊学ですませた者も少なからずいたはず。なにせ米国の大学は日本とは逆。入るのは易くとも出るまでに相当厳しいセレクションが待ち受けていると伺っております。ところが先生は持ち前の秀才ぶりを発揮されて、英語、ラテン語、ギリシャ語、フランス語、ドイツ語の五つの外国語を習得、渡米七年目ついにはバチユロ・オフ・アーツ(先生は文学得業士と訳されておりましたが、これは今でいう文学部の学士にあたるのでしょうか?)の称号を獲得されます。先生は卒業式において「Oration, Japan, Past and Present」というタイトルでスピーチをされておりますが、Oration(演説)が許されるのはクラスの首席のみと伺っております。先生の勤勉ぶりにはただ平伏するほかございません。 先生は人生の中で幾度も好機に恵まれていらっしゃいます。そのような際、先生は必ず努力を惜しまぬ姿勢で臨まれ、相応以上の結果をもって周囲の人間の信頼を厚くする。そしてこの信頼が次の好機をもたらし、先生はそれに向かってまた全力を尽くされる。このように見事なサイクルの中で成功を重ねていらっしいました。凡人の私には到底真似などできぬことと承知いたしております。しかしながら、何事においてもまずは誠意をもって尽くすべしと心得た次第です。 草々
*写真は先生が渡米された1870年頃の米国ニューヨーク・ブロードウェイ付近