【第1回】 電力量を計測するためには、電流と電圧を計測する必要がある!
電力量を計測するためには、まず交流電力について学ぶ必要がある。
高校が電気科である私は、一通り電気の知識を持っている(第二種電気工事士を持っている)と自負していたが、あれからずいぶん経ち、ほとんど忘れ去っていたため、改めて電力の計算方法を調べた。
まず、一般家庭用の電源は、100V交流電源である。
100Vと言っているのはいわゆる「実効値」というもので、実際はピーク電圧=100√2≒141.4Vの電圧がかかっている。
実効値というのは、「直流ならこんなもんの電圧だよ」って値の事。
電流も同様に「実効値」があり、これもピーク電流を√2で割った値になる。
(補足として、ピークを√2で割って実効値が求まるのは、正弦波交流の時に限ります。
波形が歪んでいる場合は、2乗平均の平方根で実効値を求める必要があります。)
次に電力の計算だが、電力にはいろいろな呼び名があるが、ここでは以下の2つを知っていればよいので、その2つについて書いておこうと思う。
電力でよく使うのは以下の2つ
1.皮相電力(VA)
2.実効電力(W)
家電とかに貼ってあるシールに、消費電力と書かれているのは、たいていこの2つのどちらかが書かれている。
≪皮相電力(VA)≫
上の方で説明した「実効電圧」×「実効電流」で求めたものが皮相電力となる。
単位は「VA」、、、電圧と電流を掛け算しただけなのでVAとなっている(とおもう)
電圧も電流もピーク値を√2で割ったものの積を取っただけなので、交流独特の「位相」とか「力率」を考慮しておらず、実際の消費電力とはずれる可能性がある。
≪実効電力(W)≫
皮相電力のように実効値(ピークを√2で割った値)で計算するのではなく、瞬間電圧、瞬間電流の積を1周期分加算し、その平均値で求めることが出来る。
分かりにくいので、下に1周期分の値を入れて表を作ってみた
青が電圧となっており、ピーク電圧は141.4Vなので、実効電圧は100V
ピンクは電流になっており、ピーク電流は1.414Aなので、実効電流は1A
皮相電力は100(V)×1(A)なので100(VA)となります。
一番右の有効電力瞬時値というのが、各瞬間電圧と瞬間電流を掛け算したものになります。
最後に有効電力と書いてある箇所では、有効電力瞬時値の和の平均で100(W)となります。
・・・100(VA)と100(W)で同じじゃん!っと思った方もいるかと思いますが、今回の例は「位相」ずれは無しで、「力率」が100%になっているからであり、力率が100%ではなくなると、この値がイコールにならなくなってきます。
≪実効電力(W)のつづき≫
では、力率が100%ではなくなったときどのようになるのでしょうか
電流の位相が10°遅れた場合の表が以下の通りになります。
実効電力98.4Wに下がりましたね。
右上のグラフを見ると、電流のピーク位置が若干ずれているのがわかるかと思います。
(電流の方が約10°電圧に比べ遅れているのが確認できると思います)
この、電圧と電流の関係がずれた量を「位相」と言い、その時の効率を「力率」と言います。
本来100Wの力を発揮できる電圧と電流なのに、98Wの力しか発揮できていないため、力率が低くなっている状態が発生していると言えます。
ちなみに、力率の計算方法は、力率 = 有効電力/皮相電力となりますので、上記例ですと、
力率 = 98.4W / 100VA = 98.4%
となります。
と、電圧・電流・電力の話を簡単にまとめましたが、Arduinoで電力を測る際には、電圧と電流の瞬時値より、実効電力を計測する必要がある。ということになります。
ちなみに、家に備え付けてある電力会社の売買メーターは、実効電力を計測してます。
【メモ】 電力がらみの計算式
実効電圧 = 電圧の2乗平均の平方根 (正弦波であれば、ピーク電圧/√2)
実効電流 = 電流の2乗平均の平方根 (正弦波であれば、ピーク電流/√2)
皮相電力 = 実効電圧*実効電流
有効電力 = 実効電圧*実効電流*力率 = (瞬間電圧*瞬間電流)和の平均
無効電力 = 皮相電力-有効電力