漁に関する意思決定や水産資源管理に直結する情報の取得・分析・予測技術の研究・開発を行っています.特に,過去の水揚量や気象・海況情報,操業情報を用いて,日単位の漁獲量や良漁場を予測する技術に焦点を当て,漁師の経験や海洋物理学の知見を陽に組み込んだ,予測の過程が漁師にとって直感的に理解可能な解析モデルの構成方法,および日々の操業中に得られるデータを効率的に活用して解析モデルを持続的に成長させる方法を,パターン認識応用,海況シミュレーション,水産業の専門家からなる分野横断チームにより確立することを目指しています.
過去の水揚量や気象・海況情報から,定置網漁における日単位の漁獲量を予測するための技術について研究を行っています.
定置網漁における漁獲量を日ごとに予測できれば,陸上と海上(船上)の業務に対する人員の割り当てに関する意思決定をサポートできます.また突発的な不漁が事前にわかっていれば網の交換や休漁,また突発的な大漁が分かっていれば漁の開始時間を早める等の意思決定ができます.このような漁師の意思決定を支援するために,データのセンシングから漁獲量予測モデリング,漁獲量の評価尺度に至るまで,漁師にとって直感的な方式を開発することを目指しています.また,漁獲量予測のための整備・公開された大規模データは存在せず,ビッグデータに頼るだけでは信頼性の高い予測システムの構築は困難であり,このように,ビッグデータの利用ができない場合,専門家の知識(事前知識)をモデルに組み込むことで信頼性の高い予測を可能にする方法(データ同化アプローチ)が筋が良いと考えています.本研究では,事前知識として定置網の構造および網内における魚の振る舞いを用いています.
関連文献:
Yuya Kokaki, Naohiro Tawara, Tetsunori Kobayashi, Kazuo Hashimoto, Tetsuji Ogawa, ``Sequential fish catch forecasting using Bayesian state space models,’’ Proc. 24th International Conference on Pattern Recognition (ICPR2018), pp.776-781, Aug. 2018. [DOI] [Scopus](漁師の直感にあった漁獲量予測モデリング:定置網漁の専門知識を組み込んだモデル)
Yuka Horiuchi, Yuya Kokaki, Tetsunori Kobayashi, Tetsuji Ogawa, ``Data assimilation versus machine learning: Comparative study of fish catch forecasting,'' Proc. MTS/IEEE OCEANS 2019 Marseille Conference and Exhibit (OCEANS2019), June 2019. [DOI](データ同化アプローチと機械学習アプローチの比較)
Yuya Kokaki, Tetsunori Kobayashi, Tetsuji Ogawa, ``Psychological measure on fish catches and its application to optimization criterion for machine learning based predictors,'' Proc. MTS/IEEE OCEANS 2019 Marseille Conference and Exhibit (OCEANS2019), June 2019. [DOI](漁師の直感にあった漁獲量評価尺度:心理漁獲量の導入と機械学習モデルの最適化)
プロジェクト:
総務省・戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE),地域ICT振興型研究開発,局所的海洋データを活用した漁業の効率化の研究開発,2017年4月~2020年3月(分担),代表:内海康雄先生(仙台高専)
共同研究機関:仙台高専,KDDI
資源管理や効率的な漁場探索を目的として,気象・海況情報や操業情報から漁場の状態を推定する技術に関して研究を行っています.
漁場の良し悪し(魚がいるか否か)を精度良く推定できれば,水産資源の管理や操業の効率化(漁場探索のための燃料削減など)が期待できます.本研究では,高知県・土佐清水沖で操業されているメジカ曳縄漁を対象として,過去の気象・海況情報,操業情報から良漁場を予測するためのモデルや評価方法について研究を行っています.このとき問題となるのは,予測対象海域の網羅的な観測ができないことです.つまり,観測できるのは良漁場のごく一部(実際に漁を行った場所)のみで悪い漁場は分かりません.また,黒潮大蛇行など,シーズンにより気象・海況が著しく変化することにも注意すべきです.このような,機械学習を利活用する際のチャレンジングな課題に対して,漁業従事者と連携しながら漁場監視モデルを持続的に進化させることを目指します.そのために,高知マリンイノベーション推進協議会において,水産・漁業の専門家(高知県水産試験場),海洋シミュレーションの専門家(海洋研究開発機構)と連携しながら,スマート漁業に向けた仕組みづくりを推進しています.
関連文献:
Haruki Konii, Teppei Nakano, Yasumasa Miyazawa, Tetsuji Ogawa, ``Narrow down forecast range: Using knowledge of past operations and attribute-dependent thresholding in good fishing ground prediction,'' Proc. MTS/IEEE OCEANS 2023 Limerick Conference and Exhibit (OCEANS2023), June 2023. (漁場予測結果の絞り込み)
Yuka Horiuchi, Teppei Nakano, Yasumasa Miyazawa, Tetsuji Ogawa, ``Inlier modeling-based good fishing ground detection for efficient bullet tuna trolling using meteorological and oceanographic Information,'' Proc. MTS/IEEE OCEANS 2022 Chennai Conference and Exhibit (OCEANS2022), Feb. 2022. [DOI] [Scopus](良漁場予測基本方式と評価)
プロジェクト:
文部科学省・科学研究費補助金,挑戦的研究(萌芽),漁業従事者と人工知能技術の協調による持続可能な漁場状態監視に関する研究,2022年4月~2024年3月(代表)
共同研究機関:高知県水産試験場,海洋研究開発機構(JAMSTEC)
船上に設置したカメラ映像から漁獲尾数を計測するための技術について研究を行っています.
船上カメラにて漁獲尾数を逐次計測できれば,局所的な海域における水産資源の管理が可能となります.また,漁場監視(良漁場予測)や漁獲量予測におけるラベル情報としても活用できます.本研究では,高知県・土佐清水沖で操業されているメジカ曳縄漁を対象として,船上映像を用いた漁獲尾数計測のための物体検出・追跡技術について研究を行っています.このとき,一般的な人物や車などの検出・追跡とは,監視対象の性質が異なることに注意が必要です.人や車の見た目は個体ごとに異なる一方で各個体での変化は小さいですが,魚はその逆で,船上で跳ね回るため同じ魚でも見た目が激しく変化し,異なる魚であっても見た目の差が少ない.このような魚の特性を考慮して物体検出・追跡アルゴリズムの開発を目指しています.
関連文献:
Riko Tanaka, Teppei Nakano, Tetsuji Ogawa, ``Sequential fish catch counter using vision-based fish detection and tracking,'' Proc. MTS/IEEE OCEANS 2022 Chennai Conference and Exhibit (OCEANS2022), Feb. 2022. [DOI] [Scopus](メジカ船上映像データベースの構築と漁獲尾数計測基本方式)
共同研究機関:高知県水産試験場