海事代理士新規登録について
海事代理士試験に合格した後、海事代理士として業務をおこなうには、法で定められた登録申請をおこなう必要がある。合格後の登録申請についての情報がWeb上に少ないため、補完する趣旨で以下に示す。手続事項について、まったく初めての方で、知識のない方にも分かるように平易に表記し、他ではわざわざ触れないところまで記載することもある。なお、かならず登録をおこなう各地方運輸局のホームページを参照すること。
1.概要
海事代理士新規登録申請に求められる必要書類と、必要なものを準備する。それらの書類に必要事項を記入のうえ、各地方運輸局の所定の申請窓口に提出することで申請をおこなう。申請等の手続きを行う業務を始めるための準備段階にあたるが、これからこのような書類の準備・作成を実践的に学ぶ第一歩となる。その趣旨の下で、正確に丁寧に行って後の業務の経験に活かされたい。
2.必要書類等の準備
海事代理士新規登録申請には、以下の書類等が必要となる。
*関東運輸局HP参照(①〜⑥)
①海事代理士登録申請書(第1号様式)
②宣誓書
③海事代理士試験合格証書のコピー(写し)
④登記されていないことの証明書(後見登記に関する法律第10条第1項に規定する登記事項証明書)
⑤戸籍抄本
⑥業務に使用する印章 いわゆる「職印」
⑦印鑑 いわゆる「認印」
⑧所定額の収入印紙(30000円分)
⑨①〜⑧のための諸費用(印刷代、証明書発行手数料、印鑑購入代金、収入印紙購入代金、交通費)
2−1 ①・②・③について
①・②の所定の用紙は、各地方運輸局ホームページからダウンロードできる。必ず最新様式のものを使用する。印刷は各自のプリンターで出力する。プリンターの無い方はUSBメモリー等の記憶媒体にダウンロード・保存して、コンビニエンスストアでプリントアウトできる。細かい指示の無いことが多いが、A4サイズで出力する。③は自らコピーして準備する。
〔MEMO〕
「最新様式のものを」と指摘したが、行政機関に提出する書類等には、法令改正や、申請の利便性向上のために、申請書類の書式が変わることがある。旧式の書類で、申請を受理されることは少ない。かならず、最新様式を使用することが必要である。コンビニエンストアのプリントサービスを利用する場合は、印刷したものや、原本等の重要書類を絶対に忘れないこと。
2−1−1 ①・②の作成
黒インキの万年筆・ボールペンで記入する(パソコンで作成してよいとの指示なかったため原則通り自筆で行う)。①の所定欄には上記③の合格証番号を記入する「第〜〜番」とそのまま記入する。業務に登録する印章(上記⑥)については後述する。署名・押印欄の、押印であるが、実印である必要はなく、認印で足りる(⑦)。収入印紙の貼付については後述する(上記⑧)。申請の日付について、申請当日窓口で必要書類に不備が無いか確認の上記入するとよい。
〔MEMO〕
申請手続全般にあてはまる事だが、記入についてはきれいな誰でも読める字で記入すること。当たり前と言えば当たり前の話である。時々「汚い字でも読めれば良い」という人がいるが、「社会常識」や「マナー」も常識人であるか否かの指標となるのは今も昔も変わりない。それに近年はOCRで事務処理をする申請もある。記入した字がコンピュータに判定されないとなることは問題だし、何より書き直しなどの二度手間となる。業務として行う準備段階と先に述べたが、こういうところから先の業務に活かす経験を積める良い機会である。落ち着いてきれいな字で記入されたい。
2−2 ④について
④の証明書は法務局で発行される。支局、出張所ではなく、特定の法務局窓口でしか発行されない場合があるので注意すること。証明書発行のためには、身分証明書(運転免許証,健康保険証,パスポート,住基カード,マイナンバーカード等)・印鑑(認印で足りる)が必要となる。④の証明書発行を行っている法務局で、所定の申請書類に記入し押印の上、所定の手数料分の収入印紙を貼付する。収入印紙は当該法務局に窓口がありそこで購入できる。購入した収入印紙を貼付して、窓口で申請してしばらく待つと、証明書が発行される。申請用紙は以下のリンクを参照のこと。
〔MEMO〕
記入事項で若干戸惑うところがある。まず証明の必要事項欄は、例示の申請資格を参照の上、証明事項の欄にチェックを入れる。次に、自らの住所は、かならず戸籍記載と同じものを記載する。ここでは免許証等に記載されている住所地の記載では受け付けてもらえない。ここで自ら記載した事項がそのまま証明書に印刷されるため、正確に記載する必要がある。
2−3 ⑤について
⑤については、市役所ないし行政サービス窓口等で発行される(場合によってはコンビニエンストア等のオンラインサービス)。所定の窓口では、身分証明書・印鑑(認印)が必要になる。写真付きのマイナンバーカードでも良い。所定の費用を現金で支払う。「抄本」であるから、本人の記載がされているもので足りる。
2−4 ⑥について
職印については、海事代理士法その他関連法令に規定はない。個人名あるいは事務所名で登録できる。どちらがどうということはないが、後者で登録される方は、念の為商号登記可能な「文字」を参照してみるとよい。角印・丸印の指定も無い。角印であれば18mm程度のもので問題ない。書体にも制限がなく任意に選べばよい。色々と迷うところではあるが、万一登録事項を変更したい場合は、所定の費用を支払い変更できるので心配ない。
〔MEMO〕
印鑑の作成については、価格がそれこそピンキリである。最近安価で購入できるいわゆる「ハンコ屋さん」が増えている。それでも高価な品が店舗に並ぶ。登録コストを抑えたい方はオンラインで注文・購入することができる。もちろん後の業務の事を勘案して、こだわりのある方は高級なものを選ぶとよい。登録印に指定がないとはいえ、あまり奇妙な(珍妙な?)名前であると窓口で指導が入るかも知れない。そんな申請を行う方がいるとは思えないのだが念の為。
2−5 ⑦について
申請書の署名・押印箇所は、認印で足りる。したがってシャチハタ等のいわゆる「三文判」は控えること。「控えること」というのは、社会通念上のことで、法令に厳格に規定されている訳ではない。認印か実印かの判断については詳細は割愛する。もっとも、窓口で不要な指導や、必要書類の作成し直し等による手間を極力避けるため、社会通念に従うこと。
〔MEMO〕
今後、業務として書類作成・申請代行を行う際、「認印で足りるか、実印(印鑑登録済)が必要か」の点が、極めて重要になることが多い。どちらか確信なく押印・作成するのは厳に慎まなければならない。仮に、認印で良いところに実印を押印しても問題がない事もあるが、実印を安易に押印する事は社会常識にとどまらず、法的にも極めて問題のある行為である。
2−6 ⑧について
収入印紙は、一般的には、所定の申請窓口で購入できることもあるが、郵便局でも購入できる。海事代理士資格新規登録申請窓口によっては、収入印紙の発行をおこなっていないこともある。事前に郵便局で購入する方が良い。収入印紙は申請書に貼付する。収入印紙を貼付する欄が無いため、あらかじめ貼付せず、必要書類と共に申請窓口に持参し、申請窓口の方から貼付する場所を指示されるので、その際貼付すれば足りる。なお、収入印紙の額が定められているのみで、額面さえ満たしていれば、枚数に制限はない。もっとも、申請書に貼付する欄が無いが、申請窓口で「申請書のここら辺りに貼付して下さい。」と指示されるので、枚数は少ないに越したことはない。
〔MEMO〕あくまで一般常識の範囲ではあるが、郵便局窓口では、購入後の収入印紙の「返品」が効かない。人によるが30000円分の収入印紙は高値と感じられる方もいるだろう。そこで少しでも不安を低減するために次の点を記載しておく。
この「返品が効かない」と言っても、「交換」が可能である。たとえば、30000円分の収入印紙「1枚」を購入したとする。後で書類を作成した際、印紙貼付欄には10000円分を3枚で貼付せよとの指示があったことに気づいた。この場合、郵便局の窓口で、購入済の印紙と、同額の範囲内の印紙複数枚と交換できる。この際所定の費用を支払う必要があり、極めて高価な収入印紙だと手続きに時間が掛かることもある。最悪は、購入した収入印紙をチケット買取の店舗に持ち込むことも可能であるが、わざわざ時間を掛けて損をする必要もない。
3 さいごに
以上で準備した申請書類等を各地方運輸局の所定の申請窓口に提出し、問題がなければ、所要期間経過後登録完了の通知が届く。
*時間的コスト削減の見地から、以下は読み飛ばしてよい。
このページに目を通されている方は、これから必要書類を準備し作成する段階か、既に作成し終えて申請段階を控えた方が多いことだと思う。これらの手続きに臨まれて感じられたことはないだろうか。まず、必要書類を揃えるには相応の時間が掛かるということ。そう感じられた方は正しい感覚だと思う。如何にその時間的コストを減らすかが、後の業務でも通有する点である。次に、必要書類を準備する段階でも必要なものがあるということ。これは時間的コスト削減とも共通する。持参すべきものを忘れる、そんな事はあってはならない。これらは必要条件を揃えて、時間ないし期間を遵守する、この極めて当たり前のマナーにも関係するものである。それをうまく調整出来ないようでは、勉強においても仕事においてもおぼつかないだろう。さらに揃えた書類は丁寧に作成し、丁寧に扱う。これも至極当然なことである。自らの申請を自ら余計に時間と手間を掛けて行うには何ら問題ないだろうが、業務として他人を代理して書類作成から申請を行うのに、汚い字で作成することがあって良いだろうか。あるいは、何度も窓口で受け付けてもらえず、作成しなおしたり、依頼者に何度も記入を求めたりすることがあって良いだろうか。その点を考えればすぐに答えは出ると思う。日付にしても細心の注意を払う。日付の前後が異なっていたり、辻褄が合わないものだと申請窓口で指導を受けて作成しなおしを求められることもある。全く無駄な時間である。そのとき、作成に必要な書類、印鑑などが手元になければ、考えればぞっとする話である(「氏名を記載し、押印することに代えて、署名することができる。」をいう場合も増えてきたが)。なぜ上記2.で⑨でわざわざ「諸費用」を列挙したかがお分かりいただけると思う。
上記記載した内容は、多くの人は「当たり前のことじゃないか」と不満を覚えたかも知れない。しかしながら、世の中には様々な人がおり、様々なニーズがある。誰に対しても手続をわかりやすく説明し、その上で必要な重要書類や印鑑を預かっておこなうときがあるし(場合によっては委任状を作成し)、迅速に手続きを完了しなければならないこともある。その「当たり前のこと」を正確にやる、これはどの分野の勉強、仕事に通じるものがあるのではないだろうか。個人的には、どんどんオンライン申請になっていけば、上記内容を記載する手間を省くことができるので、非常に良いと思うのだが・・。
2019.09 記載