では,法令の「専門家」になるためにはどうすれば良いかを順次みていきます。
まず第一に然るべき「方向性」を定める必要があります。
その方向性はどこか。それを知るためには,法令をみる必要があります。法令の専門家となるには当たり前の姿勢です。以下の規定があります。少し長くなりますが,勉強を始めるとあまり読まない規定なので, この際しっかり読んでみてください(条文の学び方では後に述べます)。
海事代理士法
(業務)
第一条
海事代理士は、他人の委託により、別表第一に定める行政機関に対し、別表第二に定める法令の規定に基づく申請、届出、登記その他の手続をし、及びこれらの手続に関し書類(その作成に代えて電磁的記録(電 子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)の作成をすることを業とする。
(資格)
第二条
左の各号の一に該当する者は、海事代理士となる資格を有する。
一 海事代理士試験に合格した者
二 行政官庁において十年以上海事に関する事務に従事した者であつて、その職務の経歴により海事代理士の業務を行うのに十分な知識を有していると国土交通大臣が認めたもの
(試験方法)
第五条
試験は、海事代理士の業務を行う能力があるかどうかを判定するため、左の事項について筆記又は口述の方法で行う。
一 一般法律常識
二 海事に関する法令についての専門的知識
三 その他海事代理士の業務を行うのに必要な実務上の知識
2 試験に関する規程の制定は、相当の地位及び海事代理士の業務について広い経験を有する者五名の意見を徴してされなければならない。
3 国土交通大臣は、前項の相当の地位及び海事代理士の業務について広い経験を有する者を選定する場合において、海事代理士の共通の利益の増進を目的とする団体又は海事代理士に第一条の事務を委託する 者の共通の利益の増進を目的とする団体があるときは、その選定についてこれらの団体のうち国土交通省令で定めるものの意見を徴さなければならない。
4 第二項の意見は、海事代理士になるための公正且つ均等な機会を保障するために、十分尊重されなければならない。
とくに,第5条1項2号3号,同条3項に注意してみてください。巷で言われる方法論で足りるでしょうか。換言すれば,これらの規定の趣旨に沿った方法を執り研鑽を積み,「海事法令の専門家」として要求さ れる能力があるか否かが試される試験なのです。どうでしょうか。「憲法,民法(商法)は要らない」「暗記オンリーで」足りるでしょうか。
これを踏まえて,何かひらめくか,どこか納得される点がある方は,然るべき「方向性」が定まり,海事代理士試験に向けて,しっかりとした一歩を踏み出したと言えるでしょう。
では,以下で具体的に勉強法をみていきましょう。