行政書士試験に臨まれる方へ
初めに
行政書士試験の受験を考えておられる方には、様々な方がおられると思います。とりあえず資格でもとろうかと考えれらている方や、他の資格のステップアップに考えられる方もおられるでしょう。どのような意図で行政書士試験に臨まれても問題はないと思いますが、一つだけ申し上げたいことがあります。
それは「試験を軽んじない事」です。
私自身、この試験に後2点で落ちたこともあるし、後4点で落ちたこともあります。そのときの試験後の雑感は「何点取れたかは分からないが、落ちる要因はないな」でした。試験に臨む心構えがなっていなかったのです。ですので、これから行政書士資格取得に臨まれる方は謙虚な気持ちで心からこの資格が欲しいと思って学習をすすめてもらいたいと思います。
何故そこまで心構えの話をするのかというと、行政書士受験に取り巻く環境が決していいとは言えない為です。書店にいけば行政書士受験関連の書籍は大量に並び、資格試験予備校は必ず講座を用意しております。ファーストステップを大いに迷うでしょう。ネット上では行政書士資格自体を揶揄する投稿ばかりが目立ちます。そのような中で、なかなか行政書士試験を合格するんだという意気込みを継続することが困難となってきます。そのような中でも、自分の信じられる学習をしてもらいたいと思うのです。
自分の信じられる学習とは「出来ない」を「出来る」に変換し続ける学習です。では「出来る」の範囲はどこまででしょうか。それは試験委員が合格させるのに必要と考える範囲です。そんな範囲試験委員でないものが分かるわけないと思いますよね。確かにそうですが、高い精度で予測することは出来ます。
それが「過去問」です。毎年の合格者の能力はだいたい同じでなければ試験というものは成り立ちませんし、また不平等です。ですので、必要な範囲は過去問からあぶりだします。
ここで一つ注意しなければならないことは、過去問を覚えるだけれは不十分ということです。おそらく試験委員は受験生が10年分ぐらいの過去問をこなしている事は分かったいます。であっても、毎年合格者は8~15パーセント程度であり、大半が6割の得点を得ていません。また、覚えているだけの受験生を排したいと思っているはずですので、本当に理解してるのかを手を変え品を変え試してきます。それに対応するためには、その問題の出題の趣旨を考えてください。この問題で点がもらえる者と間違えて点がもらえない者の違いを考えるのです。
この試験は大多数が択一式の試験です。択一式の試験は主に知識をきく試験形式が多いともいえますが、知識を前提とした論理の流れを問題とするものもあります。よって知識問題であるのかそれとも論理の問題なのか、またはその複合問題なのかということを考える視点があれば、過去問検討が少しはかどると思います。そして過去問を検討するうえで問題集の解説を読んで終わりとするのではなく、その出題された箇所を教科書で振り返ってもらいたいです。該当箇所のその前後まで学習することによって本試験の新しい問題にも対応できるし、該当箇所を教科書できちんと理解することで、同じ問題が視点を変えて出題された場合にも対応できるためです。
法律の学習法総論
法律はある種独特の学問です。ですので法律の読み方や使い方をある程度学ばなければ、すべてを暗記で乗り切らなければならないことになり、大変苦痛です。そこで法の作法を勉強します。法の作法を勉強するためにオススメする一冊が「元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術」とい本です。この本は、法制局で法律案を立案することを担当していた官僚が、法の読み方を解説した入門書です。
また、法律の勉強をするのであるため六法は必須です。六法はポケット六法かデイリー六法が収録法令や値段の関係でオススメです。なお、予備校が刊行しているオールワンテキストはオススメしません。あのテキストには情報はかいてありますが、問題が解けるようになる法論理はかいていないためです。特に初学者はまず間違いなく分からなくなります。過去問は大体どこのものを使っても大同小異ですので、値段と感性で選んでも構いません。ただし、10年分を選んでください。
法律の学習法各論
基礎法学について
まずこの科目にはオススメのテキストはありません。基礎法学の科目は、法哲学・法思想史・法制史・法社会学など、法律に関する一般常識といった感じの科目です。勉強のしにくい科目ですが、過去問を中心にその他の科目の法の学習で対応できるようになってくると思います。過去問以外に演習をしたいと思う場合、法学検定の過去問が有用でしょう。
憲法について
初学者にオススメの教科書は二つあります。一つは「日本国憲法 長尾一紘 (著)」と「憲法学読本」です。やや「憲法学読本」のほうが高度です。両書とも憲法の基本をおさえるのに適した書籍です。既学者には「アルマ憲法Ⅰ・Ⅱ」をすすめます。
憲法は、まずその成り立ちから学習しなければ背景が見えてきません。よって最初は流し読みでもいいので、通読してみてください。憲法は特に判例の学習が大事になります。よって判例集を用意します。オススメは「新・判例ハンドブック憲法」です。判例を読むときは、争点・法解釈・事実の認定・結論という流れをおさえて、決して結論だけを覚えないように気をつけてください。
民法について
民法は2017年に大きな改正がありました。しかし施行は2020年4月1日であるので、2019年度は現行法で試験がなされます。そこで教科書選びが多少複雑です。初学者にオススメの教科書は、「リーガルベイシス民法入門」です。リーガルベイシス民法入門は、現行法をベースにしつつ新法にも対応しております。新法の解説にはマークをいれて分かるように配慮されています。「民法入門全」もよいのですが、新しい版は民法改正を元にしているため、平成31年の試験には対応していません。既学者には「民法講義録」(日本評論社)です。新法には対応しておりませんが、平成31年の試験に必要なことは解説されております。しかも叙述が論理的で分かりやすいです。
民法の判例は択一式において憲法ほど細かく聞かれることはないとは思いますが、記述式がある関係で、判例の深い理解が求められる事もあります。よって、教科書だけではなぜこういう判断を行ったのかを理解できなかった判例については最高裁の判例検索システムや判例百選などの判例教材で補完する必要があります。
行政法について
行政法は行政に関する法律群をいいます。まず行政法でオススメの教科書は「行政法読本」です。試験範囲の地方自治法以外はすべてカバーしています。行政書士試験で最難間はこの行政法になります。なぜ難しいのかというと、実体法と手続法が両方規定されているためです。つまり、訴訟の場面を想起できなければ理解できないのです。そこで本当は民事訴訟法の学習もしてもらいたいのですが、民事訴訟は行政書士の試験科目でない上に、手続法として難解な科目であるので、民事訴訟法を別に勉強すること自体は必要はありません。そこで行政訴訟を理解するのにオススメしたいのが「小説で読む行政事件訴訟法―基本からわかる行政訴訟の手引き」です。行政事件を小説にした書籍です。手続きについて流れが良く分からないときに役に立つと思います。
行政法の判例集ですが、「行政判例ノート」をすすめます。この書籍は版改定がやや古いですが、行政法は判例がつくってきた部分が大きくて、重要判例は古いものも多いです。であるため合格に必要な判例はすべておさえられていると思います。
商法について
商法は商法総則と会社法に分かれます。そして出題問数は多くはありません。しかし合否はこういった細かいところで決まっているように思います。私がすすめる教科書は、商法が一冊でまとまっており、かつ平成26年汚会社法改正に対応している書籍です。それは「会社法・商行為法手形法講義 第四版 森本 滋 著(著)」です。行政書士試験の商法は簡単であることが多いです。よって最低でも過去問は完璧にしておく必要があります。過去問解説で理解できない箇所は必ず教科書に戻りましょう。なお、商法は判例は教科書で理解できるレベルで充分です。
一般教養
私は一応一般教養の学習を受験対策テキストでしたのですが、試験に出なかったのでまったく役に立ちませんでした。よって最後の四問、国語の問題を確実に正解して足きりを免れる作戦を立てました。私はこれで乗り切れましたので、一般教養をどうすべきか悩んでいる方はこの方法をお考えください。
27年度合格者 T