2019秋 鹿児島県

今回のエクスカーションの行き先は 鹿児島

参加者は4名と少なかったものの,薩摩半島の中ほどから大隅半島の先の方まで,ぐるり周遊してきました.

11月2日 第一日目

出発は霧島市から.まずは 小牧の棚田 に立ち寄りました.

ここは棚田の向こうに桜島が遠望できる場所でもあるので時代劇のロケ地にもなったそうです.ムベがちょうど食べごろだったり,ハヤトウリがマント植生になっていました.棚田は昔ながらの石垣です.石垣の高さは2mくらい.区画整理されていないので,それぞれの田んぼは地形にあわせた形で不定形です.稲刈りが終わって,田んぼは干されている時期でした.

次は鹿児島駅を経由して,薩摩半島へ.途中,道端でネコノチチを愛でる小休止をはさんで,指宿スカイラインを南下して 千貫平自然公園 へ.

ここは草刈などの手入れが行き届いた公園でしたが,ナンゴクヤマラッキョウ,リンドウ,センブリ,シロダモなどが花盛り.ナガバイヌツゲの果実が黒熟していて,そこに産卵しにきているらしい虫がたくさんいました.

この公園で,持ちよったおやつで昼休憩.いこもち,けせんだんご,ハヤトウリのビール漬けなどなど.いこもちは甘さひかえめで香ばしく,けせんだんごはニッキの香りが移してありました.ハヤトウリのビール漬けは,奈良漬に似ているような感じがしました.

さて次はサツマイモの収穫を横目に見ながら 吹上浜 へ.

「万之瀬川河口域のハマボウ群落及び干潟生物群集」の地へ.磯の生物にくわしいひとがいれば,干潟へおりてもっと楽しめたはずですが,今回の参加者は植物屋さんばかりだったので,堤防上の散策路へ.ハマボウ,ヤブニッケイ,シャリンバイ,エノキなどのトンネルをくぐりながら,ナワシログミの花の香りを堪能しつつ歩いていると,ボロボロノキがありました.数瞬,何の木かわからず「???」としましたが,言われてみれば確かにボロボロノキ.ほかに似たもののいない独特の風情でした.

一日目はここで夕暮れ.ここからしばらく長距離ドライブ.途中のサービスエリアでさつま揚げをつまみぐいしつつ,宿泊地の鹿野市へ行って一泊です.

11月3日 第二日目

宿泊した宿では朝からカレーが食べ放題でした.そのカレーで腹ごしらえをしてから出発です.今日は 稲尾岳 を目指します.

頂まできっちり造林された山々を見ながら,稲尾岳へ.当初は南麓のコースへ行く予定でしたが,カーナビの到着予想時刻がお昼過ぎになってしまうため,予定を変更して,北側の照葉樹の森ビジターセンターへ.ビジターセンターでおすすめのコースを教えてもらって,滝めぐりコースへ行くことにしました.

コースにはところどころ木の階段が設置してあり,きちんと整備されていました.コースの始めはヤマグルマの大木が見事だけど,シカによる食害で林床の植生が貧弱で見通しがよすぎるのが玉にキズ.でも,小尾根と谷をいくつか越えると徐々に植生が繁茂してきます.ツチトリモチの鮮やかな赤がちらほら.キッコウハグマの花が見ごろ.

稲尾岳は花崗岩の山らしく,沢筋の砂と水がきれいでした.その川筋にクサアジサイがありました.そのそばでお昼休み.その後,アケボノソウが開花しているところまで行って,来た道を引き返しました.登山道は歩きやすかったですが,歩くひとは少ないらしく,ほぼ貸しきり状態の山行きが楽しめました.

下山後,日没まで時間があったので,急遽 猿ヶ城 へ.

ここは渓谷の切り立った崖に道がつくられています.落石などにより歩いてしか入れません.夕闇のせまるなか,ハチジョウカグマなどを横目に見ながら,足早に歩いて,ヘツカニガキとカンザブロウノキにさわってきました.

桜島の灰は植物にも降り積もっていて,さわる葉っぱはみんなざらざら.葉の質感や毛の有無を確かめようとしてさわってみても,ざらざらでいつもと感触がまったく異なり,とまどいました.

暗くなるまで遊んで,第二日目がようやく終了.宿泊地である霧島市まで戻りました.

11月4日 第三日目

さて今日は鹿児島県のやや北の方, 鶴田ダム を目指します.

鶴田ダムへ到着すると驚愕の光景が...ダム湖の湖面がほぼ全面,緑.なんと,ホテイアオイとボタンウキクサに覆いつくされていました.希少懇のエクスとしては,対象にならない植物種ですが,あまりの光景に思わずSNSに投稿してみたり...

それはさておき,ダム湖畔につけられた車道をゆくこと少々で目的地に到着です.道路にはすでにチャンチンモドキの果実が落ちていたり,イチイガシのどんぐりがころがっていたり.道路わきから見える林内はシカの食害により,林床にほとんど植生がなく,無残な光景でした.ただし,すこし奥に行くとスギの造林地があり,そこにはシカ避けネットが設置されていました.その中には,チャンチンモドキの若木がありました.育林施業で伐られないといいですね.

この林分には,チャンチンモドキだけでなくイチイガシ,ハナガガシそしてカンザブロウノキがあります.チャンチンモドキの樹高は30mはありそうで,高すぎて葉がよく見えませんでしたが,威容は堪能できました.

さて本日2番目の目的地は 轟の瀬 です.目指すはカワゴケソウです.

ここは2015年春にも来たことがあるのですが,そのときはカワゴケソウらしきものはなにも発見できずにいました.今回もどうなることやらと恐れながら行きましたが,川原におりてすぎにカワゴケソウを発見できました.

やはり大切なのは時期でしょうか.前回と同じところですが,いちめんにカワゴケソウが広がっています.ようく見ると開花中のようでした.

11月5日 第四日目

さて最終日,今日は半日しか時間がないので,アクセスの良い 藺牟田池 へ.

ここは泥炭形成植物群落で天然記念物になっており,ラムサール条約登録湿地になっています.湖畔の遊歩道をのんびり散策です.

まず目にとまるのは,アンペライ(ネビキグサ)です.ぱっとみイ(イグサ;イグサ科)にしか見えませんが,アンペライはカヤツリグサ科であるため,見えているのは根出葉らしいです.泥炭の小島がいくつかあり,そこにはミミカキグサが花盛りでした.サクラタデも花盛り.とても天気がよく,風もないので水面が鏡のようで,散歩にはうってつけの日和でした.

散策を満喫したあとは鹿児島空港へ.エクスカーションはここで解散となりました.

今回のエクスカーションは好天に恵まれ,秋のすがすがしさを満喫してきました.晩秋~初冬なのでどれだけの植物が観察できるか不安でしたが,鹿児島まで来ると,11月でもまだまだ楽しめますね.

今回の参加者はみんな植物屋さんだったので,植物の記録ばかりになってしまったのは,ご愛嬌.虫も鳥も動物(シオマネキとか)もいたのですけどね.そこまで手が回りませんでした.

窮屈な日程にもかかわらず,参加してくださったみなさま,ありがとうございました.