2013夏 兵庫県バッドランドツアー

7月29日 水曜日 (3日目: オプショナルツアー)

希少生物懇話会メンバーのSさんに誘われ,2013年7月29日(月),同会のオープンエクスカーションに参加した.以下はその記録である.

当日は計2ヶ所を訪れる予定で,1ヶ所目は姫路市のはげ山であった.現地に近づくと,山肌に露岩の目立つはげ山が眼前にせまってきた.集合場所に駐車後,農道を進み,ため池の堰堤を登ったところで一行と合流.自己紹介タイム.メンバーの皆さんは淡路島での数日間にわたるエクスカーション&深夜に及ぶ勉強会後ということであった.このあたりはアカマツ,ネズミサシ,ヒサカキ,コバノミツバツツジ,ネザサなどが多い.山道沿いではコガンピもみられた.本種とは初めての出会いであった.端整な葉が配列し,花も小振りながらなかなか見応えがあった.

しばらくすると視界が開け,露岩の点在するはげ山景観が広がってきた.樹木の高さは背丈よりちょっと高い程度で,林とも草原ともとれるような植生が広がっている.足下に注意しながら斜面を登りつつ観察.イブキシモツケ,リュウノウギクなど岩場でよくみられる植物,ヒキヨモギ,ヒメハギなど明るい道沿いでみられる植物,キキョウ,アキカラマツなど草原生の植物がやや疎らに生育.小礫の蓄積した場所ではヤマジソが多く見られた.あと,イガクサが目立つ.アリノトウグサも多く,斜面と山道の間の法面にはイシモチソウもみられた.母岩,土壌構造,周辺の地形が局所的に水分に富んだ環境を維持しているのであろう.斜面には薄く割れた礫の集積している箇所がみられ,それは流紋岩質凝灰岩特有の割れ方ということであった.

左: はげ山の景観。右: イガクサとネザサ

ところで,今回のはげ山来訪の目的の一つは,この地に生育するウンヌケを観察することであった.しかし,本種の花穂はまだ展開前で,葉・茎のみによる探索となり,なかなかそれらしき植物を発見することができなかった.途中雨が降り出し,地面は濡れ足場がやや悪くなり,かつ時間も迫ってきたので戻ることになったが,名残惜しかったのでもう少し先に進むと,ススキでもなくメリケンカルカヤでもない,もしかするとウンヌケかもしれないイネ科草本の散生するエリアがあり,とりあえず写真に収めた.このことを後で伝えると,隊長のSさんに「何で言ってくれんの~」と怒られてしまった.隊長,申し訳ありません.また開花期にご案内します...

ウンヌケ群落?

はげ山観察後,次の目的地である三田市のバッドランドへ向かう.山田の田園地帯を進み,山際の舗装道路終点に駐車し,林内へ.このバッドランドには数年前に来たことがあるのだが,どのようにたどり着いたか記憶がなく,また直前の下見でも発見できなかった.ところが,私と同じく以前来たことのあるSさんの嗅覚により,林内を歩き出し数分であっさりたどり着いてしまった...

左: バッドランドの景観。右: キキョウ

久しぶりに見たバッドランドはそのままで,遷移が進んで消失したわけではなかった.伐採や山火事などの攪乱を受け続け成立したと思われるバッドランドは植物の定着や生育に厳しい環境であるが,林縁のほか,露岩の間隙など土砂の蓄積しやすい部分を中心に様々な種が生育していた.主な種は別所のはげ山と共通しており,アカマツ,ネズミサシ,ヒサカキ,ソヨゴ,ネジキ,コバノミツバツツジなどであった.これら二次林構成種のほか,露岩と茂みの中にキキョウが隠れるように咲いており,草原生植物の豊富さも窺えた.岩上は乾燥しているが,小規模な水の流れがあちこちでみられ,泥質の土壌が蓄積しつつあるエリアもみられた.以前にこの地でイシモチソウを見ており,丹念に歩けば湿地生の植物も多く見つかるに違いない.

バッドランドを観察後,往路とコースと変え,付近の水田や畦畔法面を観察しながら戻る.山際の水田はその場所柄やや管理不足の状態にあり,コナギ,アゼナ,コゴメガヤツリなどが稲の生育を凌駕しつつあった.また,圃場整備が未実施と思われる畦畔法面には,ユウスゲ,ワレモコウ,スズサイコなど草原生植物が豊富にみられた.華奢な茎のわりに花の大きいスズサイコは,風が少しでも吹くと植物体がゆれ,これまでピンボケの写真ばかりであったが,今回はほぼ無風の状態で撮影することができ,かなり満足した.このような畦畔法面は,開発・圃場整備&放棄による樹林化により全国で急激に失われつつあると思われるが,身近な環境に残る草原生植物のハビタットとして貴重であり,何とか維持したいものである.

スズサイコ

エクスカーション終了後,皆でポーズを決めて集合写真を撮影し,解散.雨もそれほどひどくなく,楽しい時間を過ごすことができた.メンバーの皆様,ありがとうございました.