2014夏 北海道エクスカーション参加報告 (1日目)

8月9日 土曜日 (1日目)

懇話会会員のSさんから誘われて初日の海道大学苫小牧演習林でのサッポロマイマイ(写真1)とピットフォールトラップの観察に参加しました.サッポロマイマイは演習林に設置されたジャングルジム(写真2)に上って観察しました.この日は晴れていたため,あまり活発には動いてなかったようです.それでも,カシワの木に多くついているのが観察できました.カシワの木を好むのは樹皮に苔などがついているのと,よく好んで食べるのもカシワの葉っぱということでした.観察会の後で知ったのですが,マイマイはセルロースの分解酵素を自前でもっているということ大変珍しい生物とのことです.ほとんどの生物はセルロースを自分で分解できず,共生菌に分解させることで利用することが多いとのことです.

写真1 サッポロマイマイ。

写真2 演習林内に設置された林冠観察用のジャングルジム。

マイマイとはちょっと話が変わりますが,札幌近郊を中心に去年に引き続いて今年はカシワマイマイが大量発生しました.ご存知ない人が聞いたら,カタツムリのことだと思うでしょうが,カシワマイマイはガです.害虫で有名なマイマイガの近縁種で,両種共に約10年おきに大量発生することが知られています.苫小牧演習林でも多くみられ,カシワマイマイが大量についた樹もありました(写真3).こやつらはほぼ全てメスで,どうやら産卵にきているようでした.メスに集合フェロモンがあるとうことは知られていないので,好適な産卵場所ということで集まっていたのでしょうか.メスはあまり飛べないということなので,この木付近で羽化したものはほとんどこの木に集まったということなのでしょう(たぶん).

続いて,ピットフォールトラップの紹介をしてもらいました.ピットフォールトラップは地面にコップを埋めて落とし穴を作り,地表を歩く昆虫を捕獲する方法です.苫小牧演習林では環境省のモニタリングサイト1000の一つのサイトとしてピットフォールトラップで地表性の昆虫を捕獲しています.このモニタリングサイト1000は,日本全国1000か所で生物の長期モニタリングをしている環境省のプロジェクトです.この日見せてもらったトラップには,キタクロナガオサムシやヒラタシデムシ,オオヒラタシデムシなどが採れていました(写真5).キタクロナガオサムシなどのオサムシの仲間は代表的な地表性昆虫で,日本の各地で採れます.しかしその種類は,北海道では大陸にも生息する種が多く見られますが,一方で本州では固有種が多いそうです.これは北海道と青森との間にある津軽海峡によって,2つの陸は歴史的に全くつながったことがなく,本州のオサムシは独自に進化したことがその要因とのことです.

写真3 木に付着している白い物体がカシワマイマイ。

写真4 右上にいるのがキタクロナガオサムシ