2015春 鹿児島エクスカーション参加報告

3月20日 金曜日

2015年3月20日、集合時間は午前9時、集合場所は鹿児島市内のとあるレンタカー屋。エクスカーションというおしゃれな響きに慣れず、つい頭の中で「遠足」と変換してしまう私は、おやつも持たずに時間どおりに到着した。どこに行くのかわからない遠足は初めてだ。お誘いいただいた頃、怒涛の忙しさの渦中にいたS先生からは何も詳細を聞けていない。ただ、謎めく3文字のアルファベット、“CCM”という言葉を除いては…

ぽつりぽつりと集合場所に人が集まり、ご挨拶。まだ鹿児島に来てから鹿児島らしいものに触れていない気がする、と言った私に、S村隊長は地面に積る灰のことを教えてくださった。それに重ねてその灰の中に含まれるガラスの生成プロセスから解説してくださるOさん。同じ世界に生きて、こうも見えているものが違うのかと感銘を受ける。そうこうしているうちに、メンバーが揃い、車が整った。車は2台。2台に9人。もちろんグッパで別れる。

鹿児島の道路脇には灰が積もる

一つ目の行先は鶴田ダムだということを車内で知る。普通の遠足ならダムの見学だが、希少生物懇話会の遠足が、否、エクスカーションがダムを見学するわけがない。工事中のため遠路を余儀なくされながらも無事鶴田ダムに到着した一団は、文字通り “ダムには目もくれず” いそいそと装備を整え始めた。

シルエットが美しい長靴、アースアトム

道路法面に生えるシダや野草を愛でながら、山の入り口を探す。植物に詳しすぎる皆さんは、詳しすぎるが故に植物トラップに捕まり進まない。噂には聞いていたが、まさかここまでとは…。道路法面で鹿児島の旅を終わらせるわけにはいかない一同は、トラップに歩みを阻まれながらも一筋の希望・山への入り口を見つけた。

路を彩るムラサキケマン(左)とナチシダ(右)

傾斜の大きな入口を抜け山に足を踏み入れると、そこらに鹿のフンが見られた。地面を観察しながら、鹿のフンをよけながら奥へと進む。可愛いアリドオシの実生を発見。ハナガガシの葉は長く、まさに葉長樫!

アグレッシブなトゲまで可愛いアリドオシ

ハナガガシの葉 葉脈が浮き出ているところがポイント

「わーーっ!!」 入山して間もなくFさんの叫びが聞こえる。事件だ!現場に駆け寄るメンバーがそこでみたものは…

駆け寄るメンバー 驚きが隠せない

CCM… 絶滅危惧種・チャンチンモドキ(ウルシ科 Choerospondias axillaris)、発見の瞬間であった。しかし一同が注目しているのは幹や枝葉ではなく地面。そこには白い玉のようなものが散らばっていた。

瞬間最高視聴率を記録したCCMの実

写真を撮る者、拾いに拾う者、周囲を散策する者、それぞれに喜びを表現した。しかし、CCMの本体を探すべく幹を観察するも、都市の公園に植樹されている幹と同じようなものが無い。これではないか?と思う幹はブツブツで覆われているが、参照していた写真では樹皮が縦に割れている。しかしよーく見ていると、ブツブツの下に縦割れしそうな線が見え、周囲に実が散らばっていることから、CCMの幹であると思われる。

CCMとおもわれる幹

希少生物懇話会では記念撮影の伝統があるとのことで、それにならいメンバー全員で幹の前に並ぶ。CCMと同じ形で撮るべきでは?との意見から、9人がCCMの実に見える5つの黒い穴と4つの黒い穴が並ぶ形での撮影を試みる。

5つ穴が標準で、まれに4つ穴や6つ穴のものが見つかった。右は集合写真撮影の参考にしたクイーンのボヘミアンラプソディーのジャケット

初対面となるCCMについてこの日わかったこと:

初めての参加となる今回、CCMの魅力もさることながら、動植物を愛する方々の自然との向き合い方(遊び方)にも目を奪われた時間となった。エクスカーションはまだまだ続く…

道中発見したサツマイナモリ 長花柱花(左)と短花柱花(右)

次なるターゲットはカワゴケソウ!何だ!それは何だ! 微塵もビジュアルを想像できなかった。完全なるフォロワーとして後をついて行く。 会話の中から、どうやら水草のようなものであると推測する。理系でない私は国語力が頼みの綱である。

面々は勇敢に川へ挑む。わけもわからず後をついて行く。世界の見方を知っているその面々は、同じ景色を見て違うものを読み取っているようだった。立っている場所は同じでも、レイヤーが違う。しかしそれは仕方がない。一朝一夕で生態学を体得することなどできないことは百も承知だ。昔の目の大きい人が「小さなことからコツコツと」と言っていたように、ひとつひとつと向き合っていくしかないのだ。しばらく歩くと、透き通るような色をした、丸いものを見つけ心を奪われた。

なんだろう、石かなぁ?ほんの少し指に力を入れた瞬間、それは爆発した。中から黄色いものが飛び出し、つまんでいた指に絡みついた。それが小さないのちの塊であったことを理解するのに時間はかからなかったが、それを破壊した事実を受け入れるのには時間がかかった。罪悪感。罪悪感。増殖する罪悪感。懺悔をする場所を求めて彷徨い、S先生にそれを告げる。(後に殻を持ち帰ってくださったYさんが、イカルチドリのたまごではないかと教えてくださった。ありがとうございました)

さて、本命のカワゴケソウは見つからなかった様子であった。見つからなかったら、集合写真は撮影しないという厳格なしきたりを守り、散歩中の落ち着きのないマルチーズを横目に帰途についた。これにて鹿児島での希少生物懇話会エクスカーションは幕を閉じ、メンバーは夜の街へと姿をくらませていった…

この度、レポートという重要なお仕事を賜り、お話しをいただいてから2日でサツマイナモリまでを書き上げた。そして実に50日を要してそれ以降を書いた。先述の、事実を受け入れる時間がそれにあたる。(ほんとうにすみません!)

右も左もわからないわたしにエクスカーション参加の機会を与えてくださったみなさまに、厚く御礼申し上げます。

レポート担当 Oqi