2013春 西表エクスカーション参加報告 (後編)

3月22日 金曜日 (3日目) 午後

本隊から2日遅れて西表を目指す.那覇で飛行機を乗り換えて石垣へ.那覇を経由すれば沖縄島から八重山諸島までの距離を実感でき,琉球列島の広大さにほれぼれする.これは石垣直行便では味わえないおもしろさだ.開港したばかりの新石垣空港からバスで離島桟橋へ行き,西表行きの船に乗る.春休みの金曜の午後,船は満席.サンゴの海を走り,鳩間島を経由して西表島上原港に着岸した.もう午後4時半だというのに,西表ではまだ昼過ぎのように日が高い.

上原港にはFさんとYさんが迎えに来てくださった.みんなといっしょに植物をみていたいだろうに,ありがたい.Yさんによると,他のメンバーは「星砂の浜」で植物を見ていて,S村隊長は一人で泳いでいるという.さすが隊長.とはいえ僕もまた,こんなこともあろうかと水着持参だ.泳ぎたい気持ちに火がついた.

星砂の浜に降りてみると,S伯さんが記録係となってフロラ調査を実施中.一方,水着で現れたOさんとS村隊長は颯爽と波打ち際へ消えていった.僕は泳ぎたい気持ちと海岸の植物を見たい気持ちに引き裂かれそうになっていたが「S田さんがきたら海岸植物増えるかもって期待してる」とまでいわれてしまい,海岸フロラ調査隊に入隊せざるを得ない.モンパノキ,グンバイヒルガオ,クサトベラ,キダチハマグルマなどは亜熱帯の海浜を感じさせる植物だ.ハマウド,ボタンボウフウ,ハマゴウ,ハマボッスなどは本土と共通の海岸植物.ただしハマボッスは本土のものと微妙に顔つきがちがって見える.オオジシバリも本土との共通種だがハビタット違う.本土では主に畦,琉球では砂浜.場所がかわると生態がかわるらしく,これもまたおもしろい.目に入る植物の名前をつぎつぎにあげていったが,すでに全部S伯さんのノートに書かれたものだった.なんだ,フロラほぼ出し切っているではないか.まだリストにあがってないものはないかと探して歩くと,あった.スナヅル!こいつは大変かっこいい.クスノキ科なのに草本で.クスノキ科なのにパラサイト!果実もちゃんとついていた.Yさんがスナヅルに萌えている.そこから少しずつ未記録の種を出していく.

やがてフロラリストが飽和してきた.僕は海に行きたいウズウズが止まらなくなって,フロラ調査隊を脱けだして,駐車場に水着をとりにいった.途中,隆起サンゴの岩にはハリツルマサキなどの岩場の植物がはりついていて,岩の表面を水がながれているところにはシオカゼテンツキらしきカヤツリグサ科があった.岩場をみればまだまだ出てきそう. さきほど波打ち際へ消えたOさんとS村隊長と合流.二人は20種ほどの魚をみたという.僕は海草(海生の種子植物)を見たいと思って水着を持参したのだが,マスク(ゴーグル)を忘れたので海草はまったくみえず,何しに泳いでるのかよく分からない.S村隊長が線形の葉の海草を手に持っていたが,あれはいったいなんだろう.次回(あるの?)はマスクと防水カメラを持参して本気で海草を観察したい.

海を堪能した3人は浜にもどって本隊に再び合流.フルメンバーで砂浜を東へと進む.アダン群落ごしに立派な崖がみえてきた.目をこらすと崖には白い花.テッポウユリだ!奇麗だ!おしゃれだ!しかもその近所にはシマフジバカマが咲いているように見える.すばらしい.一度みつかるとつぎつぎ見えるの法則.きっと手の届く範囲にもシマフジバカマがあるにちがいない.カリスマ学芸員のYさんはアダンのヤブに突入し,シマフジバカマを見つけてもどってきた. この崖はまた地質萌えの人々をひきつけた.崖だけじゃなく,足元で浸食されている砂岩?も地質萌えたちをひきつけた.Iさんの詳しい解説で,一気に理解が深まる.足元の岩の中には,貝化石がびっちりと入っているものもあった.一面の貝化石をみていると,はるか昔の海底が目の前にあるように思えてきて,ちょっとどきどきした.波打ち際では,局所的に水温が極端に低い場所があった.どうやら湧水がでているらしい.その場所の陸側をみるとちょうど谷筋になっていた.なるほど,と思う.こういう局所的なハビタットもおもしろい.

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そうこうするうちに夕暮れ時.ホタル見るならもう帰らないといけないとのことで,いそいでスーパーへ夕食の買い出しにいく.夕暮れまで遊んで,ごはんのために大慌てで帰るなんて,こどものようだ.赤く染まりはじめた雲をみあげていると,幼い日の夏休みを思い出す.本土から西表への旅は時空を超える旅に違いない.西表まで飛んでくれば,季節も時代もとびこえられる. スーパーで泡盛やそば玉などの買い物を楽しみ,おおいそぎで白浜の旧道へ行く.なぜ急ぐのかというと,イリオモテボタルは午後8時ごろにスイッチが切れて見えなくなるからだ.近年の有名なホタルスポットは白浜林道だが,有名になりすぎて人が押し寄せるようになっているらしい.ときわさんはそれをよく思っていないようだ.僕たちはときわさんのアドバイスに従って,林道まで行かずにその手前でホタルを愛でた.たくさんのホタルが飛び交い,8ビートの明滅で恋のさや当てをしている.やるなあ.遠くでコノハズクとアオバズクの声.宿へもどる道すがら星をみる.天頂付近にひときわ明るい木星.南の空低くカノープス!宿の近くではヤエヤマオオコウモリがとんでいた.

旅館にもどり,スーパーで購入した惣菜やバナナを食べ,泡盛をのみながらこの日の標本を押したり同定をしたり,昨日までの標本の吸い取り紙を交換したり,思い思いに夜の勉強会をはじめる.記憶のない夜がはじまった.

3月23日 土曜日 (4日目)

希少生物懇話会のメンバーは,滞在中に1回,ときわさん(民宿金城の美人女将)によるガイドツアーをすると決めていた.メンバーのみなさんはとてもやさしく,僕が参戦してからの日程にその日をとっておいてくれた.うれしい.ありがとう!ガイドツアーの前夜,観たい植物をS村隊長がときわさんにリクエストしていた.それらの植物はあまりにマニアックすぎて,聞いたこともない植物ばかりだった.

2台の車に分乗し,林道へ向かって旧道を行く.ところどころでときわさんが獲物をみつけて止まって下さる.最初にとまったのは花盛りのセンダンだった.満開.本土でセンダンが咲くのは初夏.たしかに今の西表は本土でいうなら初夏の陽気.3月にセンダンの花をみるのはおつだ.コシダは本土でみるものよりも二叉分岐を多く繰り返している.通年,葉身を延ばしつづけているのだろうか.大きくてかっこよいタカワラビ,赤みがかった色も名前も素敵なヒリュウシダ,シャシャンボによくにて葉がぼってり厚いギーマなどをみて,いよいよ林道へ.ゲットウ,ヒカゲヘゴ,アワダンなど,関西人にはなじみのない植物がつぎつぎ襲いかかってくる.僕は2日目で,ひさしぶりのスキーみたいなもので感覚がつかめない.他のメンバーはここ数日の慣れでつぎつぎと種名を上げていく.僕はOさんに教えて貰いながらひとつひとつ思い出す.Ficusの見分け方を伝授してもらう.なるほど,オオバイヌビワは主脈の白いのが特徴だ.林道をしばらく歩いたところで,今日の目標の1つ,ヤエヤマヤマボウシをときわさんが紹介してくださった.さっそく記念写真をとりまくる人たち.ヤエヤマヤマボウシはいかにもCornusらしく,側脈が湾曲しながら先端へと向かう様が美しい.この常緑の王国に点在する落葉樹たちにはいったいどんな共通項があるのだろう.もどる道では立派なヒカゲヘゴに遭遇.長身のOさんが開きはじめた葉を一枚とってくれた.僕はおもわずサルになった.S村隊長は蝶になった.ときわさんから食べかたを教わる.本土の人は先端部の葉身を食べると勘違いしている人が多いが,可食部はむしろ太くて長い葉柄の方だそうだ.その場ですこし味見をする.ヤマノイモのようなしゃりしゃりした食感とねばり.この鱗片が鰹節だったらいいのに. 林道を出てつぎに向かったのはS集落の水田地帯.南西諸島特有の水田雑草を観察するためだ.水田の中や周りの水路など生育環境が異なると出てくる植物も変わる.水田ではシャジクモ類もいたが種の同定ができない.文一総合出版からシャジクモハンドブックが出て欲しい.畔ではルリハコベが亜熱帯を感じさせるが,すぐそばにはクマツヅラ.ほかにも本土と共通種が多数.水田周辺の環境は,海岸や森林にくらべると,本土とのフロラの差が小さいように思うがどうだろう.お弁当を購入して,小高い丘の公園へ.都市の街区公園のようなつくりの造成された空間に,やはり街区公園にありがちな四阿.乾いた風が吹いて,オオゴマダラやリュウキュウアサギマダラがひらひら飛んできもちがよい.植物は造成地の雑草群落の趣き.公園として整備しているけれど,観光客はまったく来なくて,近隣の民宿や旅館のヘルパーさんたちが休憩のときにやってくる穴場スポットらしい.気分はますます夏休みの昼さがり.


丘を下ってこんどはH集落の水田へ.水田のそばにあるウタキ?神社?にはヤシがはえている.なんというヤシか僕にはわからない.鳥居には竹と松を飾っている.ヤマトの文化が反映されているのだろうか.この水田は雑草をみるのによい水田とのことだったが,訪れたときはちょうど田植え直後で,雑草はちょっと寂しい感じになっていた.それでもアカウキクサがいた.アカウキクサはオオアカウキクサと違って葉が三角形にひろがっていくのが特徴らしい.はじめてみた.休耕田にはテツホシダやリュウキュウタデ.これらは本土ではみない.テツホシダのとげとげした葉がむしょうにかっこいい.電線ではリュウキュウサンショウクイがぴりりと鳴いていた.

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ここまで,ときわさんのおかげでいろいろな植物に会えた.まだ日は高いが,ときわさんは午後3時からの用事のためにここで帰られた.残ったメンバーで新たな植物との出会いを求めて徘徊を再開.みんなでウロウロしていると、Oさんがキンショクダモを発見.前夜,キンショクダモの話を聞いていた僕とYさんは色めき立った.なんでも,展葉時の黄金の産毛が脱落しない金色のシロダモだというのだ.どれどれ?どれが金色のシロダモなん?え?これ?そんなに金色じゃない.むしろ緑.あ,でも触ってみたらフワフワかな?触ってみた.微妙.Oさん,これは,ちょっと毛が多いだけのシロダモではありませんか?期待しすぎていたYさんと僕,テンションだだ下がり.なんだかOさんには申し訳ないことになった.僕やYさんの思い描いたキンショクダモがかなりすごいことになっていて,実物を凌駕していたことが原因だ.ほんとにすみません.Oさんによれば金色の程度は個体差があるそうだ.そうか.これぞ!というキンショクダモをいつか見てみよう.

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いよいよ夕刻は近い.最後に大見謝川の河口付近へ行ってみた.この川は直径1~2mくらいのポットホールが連なって階段状になっている.上流型(Aa型)の河川形態のまま海に注ぎ出す急流河川.最も海に近いポットホールでも水面は海面より高くほぼ淡水.S伯さんはテナガエビ類をみて興奮していた.さらに,Y君とS伯さんは足湯ならぬ足水につかって,幸せそうな表情でくつろいでいる.水着があれば今日も泳いだな.流路沿いの崖の上にシマフジバカマやキキョウラン.シマフジバカマはいかにも海岸岩場の植物のようで背が低いまま花をつけている.

みんながのんびりとすごしている中,OさんとS村隊長はいつのまにかフロラ調査をやっている.僕も調査に参加.林床にはエダウチホングウシダとか,かわいいシダがたくさんいて癒される.

さあ.そろそろ帰る時間.スーパーで泡盛を買ってから宿に向かう.今日は夕食ありの日.昼間にとったヒカゲヘゴの葉柄,ホウビカンジュの葉先,オオタニワタリ(シマオオタニワタリ?)などが食卓に登った.魚の薬味には青パパイヤとボタンボウフウを刻んだものなど,生態系サービス(供給サービス)を満喫.ヒカゲヘゴの葉柄の断面には金太郎飴のようにマルハチ模様が入っていた.料理はとてもおいしいのに,なぜか食の細い僕とYさん.なぜなんだ.グロッキー関西組.

夕食後,ふたたび(みたび?)イリオモテホタルツアー.歩いて白浜旧道を登っていく.旅館の食堂にはホタルのメスの写真があった.それによると,メスは幼形成熟するらしい.ぜひそれを見たいと話しながら登っていく.幼形成熟ということは,飛ばずに光っている個体がメスの可能性が高いってことか.そう考えて飛ばずに光っている個体をつかまえてみる.まさしく幼虫の形態.これがメスなのか?いぶかりつつも写真を撮影.メスにしてはお腹がへらべったい.これでは卵はないんじゃないか?産んだ後か?などといいつつ,地上にいる別の個体を捕獲.おお,さっきよりずいぶん大きい.このメカニカルな美しさ.さっきのは若齢の幼虫だな.こんどこそメス?メスなのか?写真をとりまくった.8時ごろ,飛んでるホタルを愛でつつ,旅館にもどる.もういちど食堂の写真をみるが,どうも我々のみた幼虫はイリオモテホタルの幼虫ではなさそうだ. 後のしらべてマドボタルの一種と判明した.それにしても,ホタルの幼虫はいったいなんのために光るのだろう.また,交尾時のメスはなんのために光るのだろう.

ホタルツアーからもどって,またしても泡盛と標本の夕べ.昨晩よりは大人しく.西表最後の夜をすごす.修学旅行の最後の夜らしく,標本を押し終わったあとは屋上で風に吹かれておはなしのひととき.肌寒い風が吹くが,穏やかな夜の海.波音がここちよかった.

3月24日 日曜日 (5日目)

朝早くS伯さんがバスにのって離脱.日本列島縦断の帰路に就かれた.気ぃつけて帰ってな!

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今日は西表の最終日.あいにくの荒天予報だが,強気で行けばきっと雨雲は逃げていく.最終日に見たい物,ひとつはヤエヤマネムノキ.天気がよければユツン川や古見岳へ行きたいとの意見もあったが,雨による増水を考えるとそれは危なそうだ.ほかには?水田へ行くか.

旅館金城の前で記念写真を撮ってから出発.まずは白浜のヤエヤマネムノキポイントへ行く.しばらく探して,「どうやらこれらしい」という個体に行き当たる.偶数羽状複葉.ほんとうにこれだろうか.スマートフォンを持ってる人がその場でインターネットにつなげて,ヤエヤマネムノキを検索した.どうもちょっと違うようだ(スマホ便利やな).そこで,ちゃんと同定してみたところ,どうやらこれはアカハダノキらしい.それはそれであまり個体数もないとのことなので,じっくりと観察をした.ヤエヤマネムノキがほかにあるのだろうか.しかし周辺にはそれらしきものはみあたらなかった.

そろそろ移動しようという頃,雨がふりだした.車に乗りこんだとたんに土砂降り.降らないうちに観察できたのはラッキーだった.雨の中,車を走らせ白浜の水田へと移動.観察ポイントを探しているうちに雨が止んだ.車を降りるころには晴れ間さえのぞく.

水路・水田をみながら畦を歩く.Oさんは熱心にフロラ調査をしながらずんずん歩いていく.カワジシャの花がかわいい.クロミノオキナワスズメウリの白い星のような花もかわいい.しかしこの水田ではスター的な要素のある植物がでてこなくて,ちょっと盛り上がりきらない.西表の水田ポテンシャルはこんなものじゃないはずだ.ナイスな水田がどこにあるかを知らないからスターに会えないのだろう.水田雑草に課題を残しつつ,次のポイントへ移動することとした.

西表島は大きい.東側の集落へと向かう道中,空は降ったり止んだりを繰り返す.道路沿いの切土法面に熱帯っぽい赤い花で緑化されている.しばし法面を観察.細長いろうと状の花冠.Oさんは「いかにもなハチドリ媒花だ」と看破する.そのときは種名がわからなかったが,後日ハナチョウジと判明.なかなかに違和感のある緑化だと思う.*                            *                            *

そろそろお昼の時間だ.大富の共同売店に買い出しに行き,売店の横のテーブルで昼食をたべた.購入したばかりの豆腐のほかは,これまでに買い込んだ総菜やパン,酒の肴などの在庫一掃である.豆腐ようは案外パンに合う.チョコパンと豆腐ようをいっしょに食べたらウイスキーボンボンの味がする.島ラッキョウとしめさばでつくるサンドイッチもわるくなかった.*                            *                            *

乗船時間まで少し余裕があったので,S川の河口へ行くことにした.ここはマングローブの多様性が高い場所だったと記憶している.マヤプシキやヒルギダマシを観に行こう.河口付近の駐車場に車を止めた.もう雨雲はすっかりどこかへ行ってしまい,初夏の日差し.駐車場にはエコロードの看板がある.野生生物への配慮をしないよりはいいかもしれないが,一抹の胡散臭さが漂うエコロード.ここでの主な配慮ポイントは盛土にもうけられた野生動物用のトンネル.道路をあるいて車に轢かれないようにという配慮. 河口にかかる橋の上から干潟のマングローブを見た.ヤエヤマヒルギやオヒルギ.そして背が低く地を這うようなヒルギモドキ.道路から下に降りればすぐそばで見られる.干潮のピークを外しているため,干潟をずんずん進むには向いていないが,靴を脱いでじゃぶじゃぶあるけばいいのさ.キバウミニナらしき巻き貝やとんとんみー(ミナミトビハゼ)を愛でつつ,Oさん解説でマングローブ樹種の識別ポイントを勉強する.しばらく道路法面の法尻に沿って進むとヤマネコ用のトンネルを発見.僕,Oさん,Yさん,S村隊長がヤマネコになりきってネコトンネルを通って道路を横断した.ネコになりきったメンバーの写真を撮ったが,こんなことをするならネコ耳を持ってくればよかったと思う.トンネルを抜けたところでマヤプシキをみつけた.にょっきりと生えた筍根が凛々しい.


この河口部では,かなり大きな石を積み上げ,その上に道路を通している.盛り土というよりは盛り岩構造.この岩がどうやら西表地元産らしく,Iさんによる解説で筋金入りの岩石萌えの人たちが岩に張り付いていた.

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河口マングローブで観察会は終了.いよいよ西表を離れる時間だ.島に来たときは上原港だったが,帰りは大原の港から出る.乗船.遠ざかる島を見ていたいから後部デッキに座った.エンジンの騒音と排ガスにまみれながら,西表の島影を見ていた.周りの平べったい島と違い,西表島は特別に大きく高い島だ.

石垣島の離島桟橋周辺は都会の様相.ホテルに荷物を置いた後,街へと繰り出した.お土産屋さんの店先でオオゴマダラの金色の蛹を見た.どうやって生き物がこんなにきれいな金メッキをつくるのか,なんのために金メッキを施すのか.

宿にもどって今日も標本押しと吸い取り紙の交換.連日のとてつもない夜更かしで疲れてるからか,この日はそこそこの夜更かしで解散となった.翌25日は午前の飛行機で八重山を去る.夢のような日々が終わる.しかし我々希少生物懇話会は,西表のあの植物やこの植物の生きざまと生い立ちを明らかにするために,いつか研究助成金をあてて帰ってこよう.