下山 憲治(名古屋大学)
3 行政法制の拡大
(3)「人」に着目した法―「ゴミ屋敷」の居住者への社会法制
そこで、前記のような「物」に着目した各種規制制度にはさまざまな限界があるため、「ゴミ屋敷」に住んでいる「人」に眼を向けた法制度も検討する必要がある。
たとえば、生活保護法に基づく受給者であれば、ケースワーカーによる自宅訪問などによって、ゴミ等の撤去に向け働きかけることがある。同様に、介護保険法 に基づく介護サービスを通じた働きかけや各種支援も考えられる。しかし、生活保護法、介護保険法等の受給者でなかったり、あるいは、その前段階の問題とし て、社会との接触・コミュニケーションがなかったりする場合には、これら法制度は十分に機能しない。
このような社会的課題に、行政のみではなく、地域コミュニティをオーガナイズする専門家やコミュニティーソーシャルワーカー、医師や地域の人々がどのように取り組むか、地域社会における人々のネットワークのあり方も検討すべきことになる。
掲載日:2017年1月20日