非常に限られたパワーブックユーザに贈る。
まえがき
今でも熱烈なファンも多いオールドパワーブック。この中でも私が愛用しているのは「マック史上初のカラー液晶搭載ラップトップモデル」そう、PowerBook 165c です。カラーノートを要望するユーザの声に応えて、最初に発表されたのは1993年。ところがその期待とは裏腹に、それまでのTFTグレー液晶と比較して、あまりに遅いSTN液晶にユーザーにそっぽを向かれ、瞬く間に市場から消えていった短命なモデルでもありました。
現在でも場面によっては実用となることは前述のとおりですが、残念なことによく見られるのが電源関係のトラブルです。
私の愛用している165cもいつの頃からか、バッテリーを抜くとAC駆動中にもかかわらず電源が落ちてしまう奇妙な現象が起きていました。この様なトラブルの多くは電源ヒューズの溶断によるものだそうです。
また、私の165cはバックアップ電池も寿命で、バッテリーとACプラグを抜くとパラメータRAMが瞬時にリセットされてしまいました。
本題
ロジックボードや、電源アダプタなどに故障が無いならば、多くの場合電源ヒューズを交換することで元どおりに出来るということは、よく知られています。しかし、ずぼらな私としては、再び同じトラブルに見舞われるのも面倒なので、家庭用電源の”ブレーカ”のようなものが無いかと考えていました。ふと、秋葉原のパーツ屋のホームページで面白いパーツを見つけたのでそれを使ってみることにしました。
電源ヒューズの交換
通常、電源ヒューズを交換する場合は「125V5Aのチップ型ヒューズ」を用意しますが、私はこのパーツの代わりに「ポリスイッチ」と呼ばれる自己復帰型ヒューズを使用することにしました。
ポリスイッチは定格電流の2倍の電流が流れると回路を一旦遮断しますが、規定の電流以下に下がると自動的に回路が復活するという優れものです。今回は定格2・5A。つまり5Aを超えたあたりで回路が遮断するポリスイッチを使いました。
筺体を開く
とりあえずPBのボディを開きます。筺体下部、CPUの搭載されているドータボードを取り外した下に電源ヒューズがあります。
※写真左:上が筺体上部。(液晶パネル側)下が筺体下部。(ロジックボード側)
ヒューズを交換
まずテスタなどでヒューズの導通をチェックします。もし導通が無ければヒューズは溶断しています。ハンダゴテを使って取り外しましょう。
取り外せたら、ポリスイッチ(または同型ヒューズ)を同じ部分にハンダ付けします。極性は無いのでどちら向きに取り付けても構いませんが、少しパッケージが大きいので、ドータカードの取り付けにじゃまにならないように横倒しにするなどの工夫が必要です。
開腹と逆の手順で組み立てます。バッテリーを抜いた状態でAC駆動出来ればオッケーです。
※ただし、ポリスイッチは便利な反面、ロジックボードや、電源部分の故障による過電流に対しては根本的な解決となりません。何度も繰り返し回路が遮断する場合は速やかに故障箇所を特定することが必要です。(念のため…)
バックアップ電池の交換
165cに搭載されているバックアップリチウムバッテリーは「VL2330」という直径23ミリ3Vのボタン型二次電池です。そこらのパーツ屋ではなかなか見かけませんので、ヒューズ交換のついでに定格3・3Vの電気二重層コンデンサというコンデンサで代用してみることにしました。
このパーツはメモリバックアップ用として普通に使われているようで、もしも液漏れしても、毒性のあるものではないそうですのでとりあえず安心です。(^^;)容量が0.22F(ファラドです、マイクロファラドではありません。)とかなりの大容量。しかも大きさが直径10ミリ程度とかなり小さく、定格電圧も少し余裕の3・3Vですので、取り付けスペースも余裕です。しかし、パラメータRAMをどのくらいの時間保持出来るかはわかりません。(保証も出来ません!)
筺体の上部についているインタコネクトボード(液晶のフラットケーブルや、スピーカーの搭載されている基盤)にハンダ付けされているバックアップバッテリーを取り外し、代わりに電気二重層コンデンサを取り付けます。(極性に注意!)これで、本来のリチウムバッテリー程では無いとおもいますが、パラメータRAMの内容がしばらく保てるようになりました。(数分(!)は間違い無くもちます。)
※ここで紹介した改造方法は、あくまで筆者個人が行った実験です。これらの改造による機器の破損、その他あらゆる事故について、筆者は責任を負うことはできません。また、記事の内容や動作の保証もありません。改造は自己責任にて行ってください。
追伸:2002年7月に装着以来、1年半はノートラブルです。コンデンサの液漏れもないようですので、一応成功と言う事で…m(_ _)m
また、ここで使用したパーツはいずれも「秋月電子通商」で入手できます。