「もったいない」 昔、大枚をはたいて買ったパワーマック。まだだ、どこも壊れていないし、愛着もあるのに、すでにサポートされるOSがなくなった。 このままリサイクル費用を出して廃棄しなくてはいけないのか! と、お嘆きの「きわめて少数派」のあなたにおすすめの最新OS。これがGNU Linux Debianです。
私が長年愛用しているMacintishは、PCI拡張スロットとEthernetを標準搭載し、CPUカードをも交換できる、当時としては画期的な拡張性のいわゆるPCI PowerMacです。もちろん、拡張カードやCPUアップグレードをしながら使いつづけていましたが、OSXがこなれてきた2003年あたりを境に、この時代のマックに対応する純正OSは更新が止まり、使えるソフトウエアもその当時のものが残るだけで、時代からとりのこされてしまいました。まだまだ使えるのに使えないマックがしのびなく、手を出したのが話題の「完全無料」のOS、Linux。
しかし、x86系とよばれる、いわゆるWindows機ならともかく、Appleの旧機種(Old Worldとよばれる)にインストール可能なものは、あまり多くはありませんでした。私もいろいろトライしましたが、まともにインストールできたのはDebianくらいでした。それでも、旧バージョンでは不満が多かった部分も少しずつ修正され、このDebian5.0になって、オールドマックで「今こそ使える」OSとなったのです。
前置き
まず。マックでもNew Worldと呼ばれる、LinuxがインストールCDから直接起動できるモデルへのインストール方法はここでは書きません。iMacシリーズ以降のモデル(OSXが使える機種だな…)は、より簡単にDebianが導入できますが、ここでは一切触れませんので、あしからず。
本ページの、インストール対象のマシンはPCIパワーマックシリーズです。ただし、CPUにPowerPC601を搭載しているマシンは使えないらしいので、あらかじめアップグレードカードなどに交換する必要があります。
MacOSの準備
前述のとおり、オールドマックからLinuxを直接起動することはできない。どうすればいいのかというと、まず、マックOSを起動して、マックOS上で動くブートローダ(BootX)によって間接的にLinuxを起動する。で、まずはマックボリューム上で次の作業をやっておく。
Linuxのデスクトップ環境を普通にインストールするには、最低でも4ギガバイトほどのディスクスペースが必要だ。(ホントは4ギガでは苦しいかも…)その上、マックOSを起動するためのパーティションが2~300メガバイトほど欲しい。(もちろん余裕があればいくらでもかまわないが…)
まず、マックのディスクフォーマッタで必要なパーティションを切る。マック「標準※」フォーマットをパーティション先頭から300メガバイトほど。残りの部分にLinux用の4ギガバイト以上の空間をつくっておく。こちらはLinuxで再フォーマットするので、マックフォーマットでもA/UXでもなんでもいい。
※MacOSをインストールするパーティションをなぜ「標準フォーマット」にする必要があるのかは、あとでわかります。
2つのパーティションができたら、マック標準フォーマットの部分(A/UXはマックからは見えない…)に、マックOSをインストールする。起動のためだけなら最小限のインストールで充分だ。
ブートローダー
インストーラCDからLinuxを起動できないオールドマックの場合、Linuxシステムはもちろん、LinuxのインストーラもMacOSから起動する必要がある。そこで、マック上でLinuxをブートするためのユーティリティーを使う。それがBootXだ。
ここからダウンロード可能→http://penguinppc.org/bootloaders/bootx/
ダウンロードしたアーカイブを解凍すると、コントロールパネルとエクステンション(機能拡張)、その他もろもろが入ったフォルダが出てくる。必要なのはコンパネと機能拡張、それと、Linux_Kernelsというフォルダ。これを3つまとめてマックのシステムフォルダの上にドラッグアンドドロップすると、適当な場所にインストールされる。
カーネルとラムディスク
ブートローダーの準備ができたら、Linuxのインストーラーカーネルとラムディスクを用意する。今回インストールするのは、Gnu Debian Linux 5.0.1 (lenny) PowerPC用のもの。ネットブート用インストーラは下のリンクのディレクトリにあるnetbootディレクトリ以下にあるvmlinuxとinitrd.gzの2つのファイルがあればオーケーだ。
ftp://ftp.us.debian.org/debian/dists/lenny/main/installer-powerpc/current/images/powerpc/
マシンがEthernetでインターネットに常時接続してある環境ならば、この2つのファイルだけで、フルインストールが可能だ。
vmlinuxとinitrd.gz(かたちはgzipアーカイヴのようだが、解凍する必要はない)を先ほどのLinux_Kernelsフォルダの中に入れておこう。
ファイルが準備できたら、いったんBootXのコンパネを開いて初期設定※をしておく。Kernel:のプルダウンメニューでvmlinuxを選択。Optionsボタンを開いてUse specified RAM Diskのラジオボタンをオンにすると有効になるChooseボタンを押して、開いたダイアログから、initrd.gzを選択。ダイアログを閉じて、Seve to prefsボタンで設定を保存しておく。最後に中央左のMacボタンを押せばコンパネが閉じる。これで準備完了。
※もしもG3アップグレードカードなど、機能拡張を使って2次キャッシュを有効にしている機種の場合は、BootX同梱のユーティリティを使って、2次キャッシュを認識させることもできる。その場合、先ほどのBootXのOptionsでSet G3 cache のラジオボタンが有効になって、linuxでも2次キャッシュが効くらしい…
インストール
マシンを再起動すると、MacOS表示の直後あたりに、ペンギン印のBootXのダイアログが出る。Linuxボタンを押せば、インストーラが起動するはずだ。
だいたいこのあたりでパーティション分割の画面に到達するはずだ。
パーティション分割に失敗すると、最初からやり直しになるので、モノのわかったユーザーならば、ぜひ手動で設定したいところだが、「ガイドによるパーティショニング」で進んでも、おそらく先ほどの空間領域を使うようにすすめられるはずだ。
SCSI2 (0.0.0) (sda) - 6.4GB QUANTAM XXXXXXXX XXXXX 1. 32kB Apple 2. 262.1kB Macintosh_Bs 3. 1.1GB hfs MacintoshHD 4. 40MB f ext2 untitled /boot 5. 5.0GB f ext3 untitled / 6. 250MB f スワップ swap スワップ
(正確ではないかもしれないが…)上のようなパーティション一覧が表示されたら「/boot」、「/」と「swap」印のついた部分がマックOSを入れた領域で”ない”ことを確認。/home /usrなどを分割せずに、「パーティショニングの終了とディスクへの変更の書き込み」を選択する。おそらく/boot、/、swapの3つの領域だけがフォーマットされるはずだ。
※このとき「/」の部分に割り当てられたパーティション番号(上の例ではsda5となる)という数字は、起動のときに必要なデータなので覚えておく。
確認画面でOKを出したら、しばらく待つとフォーマットが終わり、勝手にベースシステムのファイルがダウンロードされて、つらつらとインストールが始まる。2~30分で終わると同時に以下の項目を設定するように要求が出る。
◆ここで、いったん「esc」キーを押して、インストーラを抜け出す。インストールの手順を示す画面で「ブートローダーなしで続ける※」という項目をいったん選択。システムのセットアップを「続ける」と進んだら、「再起動を促す」最終ダイアログまでたどり着く。ここで、再び「esc」を押して、インストールの手順一覧のダイアログに戻って、ユーザーの設定の項目からつづけよう。
※なぜ、こんな回り道をするのかというと、私のマシン(PCI PowerMac)は、lennyになってインストールの一番最後、ブートローダーquikのインストールでクラッシュするからだ。失敗するだけなら、対処できるが、クラッシュしては手の施しようもない。
そこでブートローダーはインストールせずに、インストールを無事に終了させた後で、どうしても必要ならば(OldWorld機には不要!)改めてインストールするとして、この問題だけは回避しておく。
ベースシステムがインストールできると、また、いくつかの追加インストールが続いた後に、ソフトウエア選択画面(tasksel)が開く。ここで、必要な環境を選択※する。
※ここで[*]を選択しようとしてreturnキーを押してはいけない。ダイアログが次へと進んでしまう。項目をカーソル移動で選んだら、必ずspaceキーでボタンをオンオフするように!!
もっとも、ここでインストールできなくても、あとでソフトウエアの追加や削除は自由にできる。(管理者権限でtaskselとコマンド入力すると同じ画面がいつでも呼び出せる)ディフォルト設定のままインストールして、後で必要に応じてカスタマイズすればいい。
ここからは「時間」と「眠気」との戦いだ。デスクトップだけでも1~2時間は必要かも… いいや、3~4時間かも…
※「かも」というのは、私の場合、ディスクが3ギガしかなかったため「標準システム」だけをとりあえずインストールしておいて、再起動後に gnome-core xserver-xorg-core gdm など、最低限のデスクトップ環境をコンソール操作でチマチマ追加していくという手法を採ったからです…(汗)
インストールがうまくいくと「新しいシステムで起動する、その時です~っ!!」みたいなダイアログが最後にでて、インストールは終了。マシンを再起動…
と、その前に!!!
絶対、忘れちゃならないのが、インストールされたカーネルとラムディスクをMac側に書き出すこと!!
これをウッカリ忘れるとBootXでDebian 4.0(etch)以降のシステムは起動できない…
# mount -t hfs /dev/sdXX /mnt
# cp /target/boot/vmlinux-2.6.26-2-powerpc /mnt/vmlinux
# cp /target/boot/initrd.img-2.6.26-2-powerpc /mnt/initrd.img
# umount /dev/sdXX
# exit
※上から、事前に「あえて」標準フォーマットにしておいたMacボリュームのパーティションsdXX(今回の例だと、MacintoshHDのパーティションでsda3となる。)を、/mnt にマウント。(拡張フォーマットだとマウントできない!)
/target/bootディレクトリにある、インストールされたてのホヤホヤのカーネルと初期ラムディスクをそのMacボリュームへコピー。
Macボリュームをアンマウントして、シェルを抜ける。
この手順でカーネルと初期ラムディスクが書き出せた。
これで、「ブートローダーなしで続ける」を選びなおし、さきほどの「新しいシステムで…」ダイアログに戻って、Returnを叩き込んだら、いよいよ再起動だ。
「PCI Macだけど、MacOS抜きで、Linuxを起動したい!」ひとのためのメモ…
Debianの起動
再起動後にいきなりDebianを起動できると思ったら、まだ早い。その前に、MacOSでの作業が一つのこっている。MacOSを起動。
インストールの最後で、ハードディスクの最初の階層に書き出しておいたカーネルとラムディスクをMacのシステムフォルダにあるLinux_Kernelsフォルダに入れて、BootXのOptionsのダイアログで、カーネルとインストーラのラムディスクと入れ替えて選択する。
さらに、More Kernel arguments: のテキスト入力部分にルートデバイスを記入しなければならない。
root=/dev/sdXX ro
sdXXの部分はDebianのルートパーティション「/」のある位置だ。記憶しているだろうか?もしも、忘れたら、起動ディスクの場合はsda3から順番に4、5、6...と数値を増やしていけばいい。内蔵バスに増設したディスクの場合は、sdb3から同じようにすれば、いつか成功する。ルートパーティションが正しければSave to prefs で設定を保存。
ようやく準備がととのった。Macを再び再起動すると(へんな日本語だ…)、起動画面途中でBootXが例によって現われるので、「Linux」ボタンを押すと、その瞬間からDebianが動き出す。
わけのわからない文字列がスクロールされながらしばらく続くと、画面が真っ暗になって、ログインマネージャーのGUIが立ち上がる。インストール時に設定しておいたユーザ名とパスワードでログインしよう。(ルートではログインできない初期設定になっている)
さらにしばし待つと、デスクトップが現われるはずだ。上下にメニュー、左上に「コンピュータ」と「ホームディレクトリ」それに「ゴミ箱」のアイコン。ログイン画面から想像するとOSXのようなインターフェイスかと期待していると、WindowsとMacを足して2で割ったような簡素なものだからガッカリするかもしれない。
もっとも、このGUIは自由にスタマイズもできるので、気にいらなければ「システム」メニューの「設定」から「外観の設定」を選んで、好みのスタイルにすればいい。もちろんテーマがネット上にゴロゴロころがっているので、その気になればOSXそっくりにもなる。メニューも上下、左右どこでも移動できるから、ドラッグしてみてほしい。私は上下にメニューは邪魔なので、アクセサリをすべて下のメニューに移動して、上のメニューは削除した。
ウインドウマネージャーの使い方も、PCのエクスプローラと同じ様なシキタリなので、ここまでのたどり着いたPCユーザーなら、無理なく使えるはずだ。
いろいろな設定
おまかせインストールのデスクトップ環境でも、ウェブ、Eメール、メディア再生、ドキュメント作成、閲覧、印刷… ほとんど日常的な作業なら問題なく使える。外部メディアのようなものも、CD/DVDスロットやUSB端子にメディアや外付けデバイスを差し込むと、システムで認識して、自動的にマウントポイントなどを割り当ててくれるので、設定もほとんど不要だ。
また、後で必要となったソフトや、不要になったソフトも、GUIの「synapticパッケージマネージャー」で簡単に管理できる。(管理者パスワードが必要)
3マウスボタンエミュレート
lennyになって、ほとんどの設定はGUIからできるようになったが、私の場合、古いMacにインストールしたのに起因する、若干の補正が必要な部分がある。
まず、LinuxではWindowsのような2ボタンマウスどころか、3ボタンマウスを使うように設計されているため、ボタンが1個のMacユーザーは、右クリックすると表示される「コンテキストメニュー」が使えない。そこで、右ボタンと、中ボタンをキーボードに割り当ててエミュレートする機能が用意されている。
まず、「アプリケーション」メニュー「アクセサリ」から「端末」を選択。DOS窓のようなコンソールが開くので、suと、入力。「パスワード」と聞かれるので、管理者パスワードを入力すると、スーパー(特権)ユーザーになれる。(文頭の"#"は管理者モードの意味です)そのまま、
# gedit /etc/sysctl.conf
と打ち込んでリターン。システムコントロールの初期設定ファイルをテキスト・エディタ(gedit)で編集する。
各種の設定はさわらずに、最後の行以降に3行書き加える。
/dev/mac_hid/mouse_button_emulation = 1 /dev/mac_hid/mouse_button2_keycode = 87 /dev/mac_hid/mouse_button3_keycode = 88
上から、マウスボタンエミュレーションをオン。→ファンクションキーの「F11」キーに「中クリックボタン」を、「F12」キーに「右クリックボタン」を割り当てる。という意味だ。(数字はキーコード)
※keycodeの数値をPowerbookの場合はそれぞれ126 125に割り当てておくと、コマンドキーが右クリック、fn + コマンドキーが中クリックに割り当てられて便利です。
システムを再起動後に、マウスボタンのエミュレーションが使えるようになる。
ファイルを保存(Ctrl + s)してエディタを閉じると端末に戻る。スーパーユーザからexit(Ctrl+dキーでもいい)と入力して一般ユーザに戻り、さらにexitで端末は終了する。
支援機能で「長押しコンテキストメニュー」を実現
MacOSを長年使っていたひとなら、コンテキストメニューを開くために「F12」キーをいちいち押すのは面倒に感じるだろう。「長押しコンテキストメニュー」って便利な機能もあったもんな… と思った先人のおかげで、Linuxではこれを実現する機能も用意されている。 端末で…
# aptitude install mousetweak
ただし、Mousetweakをインストールしただけでは、長押しメニューは有効にならない。まず、設定→支援機能を開いて、支援機能を有効にする必要がある。支援機能で使うコマンドにmousetweakを指定。次回のログインでマウス設定の「長押しメニュー」がようやく設定可能になる。
UIMツールをメニューに埋め込む
あと、以前は苦労した日本語入力メソッドもlennyでは設定なしでいきなり使えるようになった。私はフローティングツールバーが邪魔だったので、メニューに組み込んだ。 端末で…
# nano /etc/X11/xinit/xinput.d/ja_JP
と入力してReturnすると、端末上のテキストエディタ(nano)で、uim-toolbarの日本語環境用設定ファイルを開くことができる。
カーソルを矢印キーで移動し、以下の一行を書き換える。
XIM_PROGRAM_XTRA="(sleep 10; uim-toolbar-gtk)"
↓↓↓
XIM_PROGRAM_XTRA="(sleep 10; uim-toolbar-gtk-systray)"
書き換えたら、Ctrl+o<Return> Ctrl+xで保存終了。設定は完了。
次回のログインから、フローティングツールバーは出てこない。
これらは、ほんの一例で、他にも管理者権限が必要な設定はいろいろある、lennyのテスト版だった時代の記録から、失敗例なども含めて参考にしてみてほしい。
ただいま稼働中…
2009年6月14日
quikでの起動をためすために、ディスクをext2でフォーマットしてDebianを再インストールした。試行錯誤してみたが、結局私のパワーMacのOpenFirmware起動は断念した。
2009年6月16日
ext2でフォーマットしたものの、quikが使えないし、システムは不安定。おまけにクラッシュ直後のfsckでは、いちいち再起動させられるので、またボリュームをext3だけのパーティションにまとめた。
覚書:
RealPlayerの正式版(といってもlinuxPPC向けはちょっと古い)は、etch以降使えなくなったが、mplayerのPPC向けのcodecをダウンロードしてきて、totem-xineの動画プレイヤーに読み込ませてやると、一応realのコンテンツも見えるようになる。
修正するファイルは、ホームディレクトリの隠しフォルダの中にある。
/home/[USER]/.config/totem/xine_config
ダウンロードしたmplayerのコデックを、書庫マネージャ(file-roller)で解凍したら、できたディレクトリ(rp8codecs-ppc-2005XXXXっての)を、例えば以下のようにxine_configにフルパスで書き加える。
# path to RealPlayer codecs # string, default: decoder.external.real_codecs_path:/home/[USER]/rp8codecs-ppc-2005XXXX
※[USER]は、ユーザ名。ディレクトリ名は、コデックを入れたディレクトリ名であれば改名してもかまわない。
2009年08月
前世紀から愛用のPowerMacintosh 7500を引退させた。
同時に進行中だったLinuxの研究も、終了することになりました。つづきは、またの機会に♪