2022-24(第90-91回)


★2024年

心の科学の基礎論研究会 (第91回)
 共催:人文死生学研究会(第22回)

●日時:2024年3月23日(土) 午後1時半~5時半

●形式:Zoomを利用したオンライン開催

・Zoomホスト浦田悠

・司会:渡辺恒夫(東邦大学/心理学・現象学)・浦田悠(大阪大学/死生心理学)

●プログラム第1部:合評会「特集人文死生学」1:35pm~3:15pm

オンラインジャーナル『こころの科学とエピステモロジー』

https://sites.google.com/site/epistemologymindscience/ Vol.5(2023)「特集人文死生学」(原著論文「「なぜ私が死ななくてはならないのですか?」:科学としての医療が崩れるとき」、最近研究事情瞥見「反出生主義の精緻化と〈生まれてこない方がよかった〉という嘆きのケアを考える」など6篇)の合評会

・担当1 榛葉豊(元静岡理工科大学/理論物理学)

・担当2 小島和男(学習院大学/哲学)

●プログラム第2部:講演+討論 3:30pm~5:30pm

・演者:冲永隆子(帝京大学/生命倫理学)

・題目:「終末期の意思決定と尊厳死をめぐる諸問題」

・要旨: 私が終末期の事前指示や意思決定支援についての研究を30年余り進めてきた中で(拙書『終末期の意思決定 コロナ禍の人生会議に向けて』晃洋書房2022 http://www.koyoshobo.co.jp/book/b605013.html)わかったことがある。それは、私たちが人生最期に何を望んで何を拒むのか、複数ある選択肢の中からどれか一つを決めること、尊厳ある安らかな最期を迎えるにはどうしたら良いのか、一つの答えを出すのは容易ではなく、むしろ答えが出ないというのが正解のようだ。

ここ最近、医学哲学、生命倫理関連の所属学会・研究会で複数の研究協力者との哲学対話を経て「正解がないこと」や「ネガティブケイパビリティ―」(帚木蓬生)、つまり、答えの出ない事態に耐える力、徹底的に議論し思考することの大切さを痛感してきた。今回は、一般的にはまだ馴染みのないACP(人生会議)議論の一歩手前の、「尊厳死」や死の自己決定をめぐる諸問題について、参加者と共に考えたい。

なお、ACPは万が一の時、どんな医療やケアを受けたいか、受けたくないかを当事者がその家族と医療関係者らと繰り返し話し合っておくことであり、直接、延命医療の差し控えや中止、尊厳死の意思を表明するものではない。ACPはACP反対派がその根拠としている「ACP=死に方会議」でも、死への誘導、尊厳死の勧めでもない。とくに高齢者で問題とされる過剰医療への苦悩からの脱却として、医療選択や尊厳死(平穏死)がある。もっと言えば、高齢者への医療措置と難病や障碍者への医療措置の議論とは分けて考えないといけない。つまり、高齢者の胃瘻とALS患者の呼吸器の違いについて、高齢者は生物学的にみても寿命を生き尽くして、終末に差し掛かった状況であり、医療措置がかえって本人を苦しめたり尊厳を損ねたりする場合があるのに対し、難病や障碍をもった人たちは「終末期とはいえない状況なので、彼らにとって人工呼吸器や胃瘻の装着は生きる道具として活用されるものだからである」(拙書81頁)。さらに、当日は患者の意思確認の課題として2019年3月「死の誘導」報道で物議を醸した、腎臓病患者(44歳女性)の透析中止問題(拙書191頁)を事例に皆さんと検討していきたい。

●申込方法:だれでも申し込めます。参加無料。下記の申込フォームから申し込んで下さい(人文死生学研究会HPにも同じフォームがあります)。←終了

・申込フォーム:https://forms.gle/3AZEP7w88PKrJPLWA 

・申込締切:3/21(木)

 ※申込者には3/22(金)までにzoom情報が送られます。

●人文死生学研究会HP https://sites.google.com/view/thanatology-as-humanities 



★2022年

心の科学の基礎論研究会 (第90回)
 共催:心理学史研究会  

●日時:2022年11月26日(土) 13:30~17:30

●場所:Zoom開催 下記のフォームから参加ご登録ください(参加資格は特になし)。

参加登録フォーム:https://forms.gle/vKvgyjasyuP9FSGTA 

●プログラム:

・13:30-13:40

「こころの科学とエピステモロジー奨励賞」授賞式(司会:渡辺恒夫/東邦大学)

受賞作:黄信者著「Indigenous psychologyの視座からみる大正期の雑誌『変態心理』」『こころの科学とエピステモロジー』Vol. 4(1), 18-32, 2022. doi.org/10.50882/epstemindsci.4.1_18 
賞の詳細→https://sites.google.com/site/epistemologymindscience/awards?authuser=0 

・13:40-15:30 

受賞記念講演(黄信者 立命館大学大学院)

タイトル: もう一つの心理学:Indigenous psychology

要旨:
心理学史家のカート・ダンジガー氏(Kurt Danziger)は、インドネシアの大学で心理学(Psychology)の講義を教授している時、もう一つの心理学授業を発見した。それは、ヒンズー教の哲学や思想に依拠して、人間の「こころ」を解釈する講義である。ダンジガーは、近代心理学以外にも「心理学」が存在することに驚かされた。それに対して、中医学(東洋医学)の専門的に学んだ私も、「心理学」を大学で専攻した後、常に違和感を抱いたことが覚えている。なぜ、昔の大学で勉強した「こころ」についての「東洋的」な考え方は、「心理学」という分野で全く言及されてないのか。そのような疑問をもって、ゼミでの発表で、指導教官のサトウ先生から、Indigenous Psychology(IP)という概念が紹介され、卒論研究と修論研究で、日本の「Indigenous psychology」をテーマに研究してきた。
 本発表では、まず『心理研究』、『日本心理学雑誌』、『心理学研究』という3つの雑誌を中心に分析する卒論研究、今回の投稿論文―『変態心理』を中心に分析する研究(修論研究)、そして、その延長線として行われた感覚・情動(affect)的経験を着目する「気」や「気功」に関する博論研究を簡単に紹介したい。卒論・修論研究の段階では、心理学史の視座を用いて、日本における心理学の草創期の学術雑誌に現在のIPで言う「土着の概念・知識」と関わる文献を抽出して分析を行い、今ではほとんど見えない、日本心理学草創期における「土着の概念・知識」に対する心理学的研究を概観した。また、現在IPの視座を取り入れながら、その時期で行われた研究への理解を深めると同時に、IP研究への啓示についても検討した。一方、博論研究では、社会・文化人類学のアプローチで、土着的概念として「気」、と土着的(精神・心理)治療実践として「気功」を研究対象として、実際に中国と日本の気功現場に赴いて、民族誌的記述と分析を行った。
 これまでの研究を紹介した上で、再びIP研究をめぐる問題点や、査読者先生や「選評」で指摘してくださった「主体変様認識」と「身体化」の問題について議論を進めたい。

 ・15:45-17:30

 指定討論1  サトウタツヤ(立命館大学/心理学)

 指定討論2 溝口元(立正大学/科学史)

 総合討論