Essay 20160229 (kamihara) in Japanese "日本語で原著論文書きましょう."
私が学生であった頃に比べ, 現在の修士課程学生は
日本語の原著論文を書く機会に乏しいと感じています.
もったいぶった表現をお許しいただけるならば
"インパクトファクター(IP)原理主義が蔓延し, 英語の不得意な学生は論理構造を作る機会が少なくなる"
と言い換えます.
学術論文などの被引用情報を集計しIPを算出しているのは
トムソン・ロイター社(米国)やエルゼビア社(オランダ)ですので
IPを評価基準とすると和文誌の評価が著しく低くなることは仕方がありません.
特に物理・化学の分野はIPの評価可能な英語原著論文が
成果としてカウントされる大前提ですので教員側も日本語の論文を指導する
動機に乏しくなるのは自然の流れかもしれません.
自分も気がつけば, 英語の解説記事は最近執筆したものの日本語での解説記事はしばらく書いていません.
英語で論文を書くこと自体は良いことなのですが,
英語を使う限り英米の研究室に比べて発表が遅くなることは不可避です.
私の英語力では, 片手間で英語を使うのはちょいと集中が必要です.
国内の読み手は英文ではなく和文のほうが重宝されるでしょうから,
英語でなくとも, 論文そのものの価値は評価されるべきでしょう.
*ところで, 私の場合M1, M2 で和文論文を書き, 訓練をした上でM2で英語論文に挑戦した記憶が残っています.
和文論文を書いた経験は, 英語論文を書く能力の向上にも役に立ちました.
そんなわけで, 仮に英語が苦手な大学院生が価値が高い研究成果を出した場合
まず日本語で和文誌に投稿し, 採択された後に英語化してプレプリントサーバにアップロードしてしまえば,
英語圏の研究者も引用してくれるのではないかと思いつきました.
現在は比較的安価に英語校正や英語化のサービスが存在するので
http://www.enago.jp/index_v1.htm?utm_expid=8264076-34.7aDVrR4-Qy6vqYGzxeT7gA.1
学生独力でもある程度の英作文は可能でしょう.
英文校正の支出は増えるかもしれませんが
英文誌の論文投稿料の相場を考えるとさほど高くは感じませんので
今年度は, 2,3 報を試してみようと考えています.
2016. 02. 29 (Mon.)
Yoichi KAMIHARA
神原 陽一