新年あけましておめでとうございます. 旧年中は, 公私ともお世話なりました.
旧年中は競争的な仕事と, それ以外の仕事に費やす時間の分け方に苦労する日々でしたが, 研究者になって10年あまり経過して, それは不可分であることに考え至りました.
いずれの業務も人間相手ですので杓子定規に分割するのは不幸の素です. 今年は, 複数の方から「作業仮説の説明には, 法螺を吹くのも仕事なのよ」(意訳)と助言を受けました.
教育面もまずは興味を持ってもらうことに注力せよと岩谷尚之 先生(故人, 町田高校教諭)に助言をいただいたことを思い出します. 研究対象の良い面に着目し, 魅力的なシナリオを作ることは, 未だに苦手ですが, なんとかするのが私の仕事なのでしょう. 私事となりますが, 加齢による衰えを感じることが日々増えております. 衰えを認めるのも成長の一つと信じる次第です.
2015年のまとめと与太話
【国内で3万人位しか意味の分からない備忘録と与太話】
旧年3月に, 足の裏の米粒をとり, 学位持ちとなってから10年経過しました. 当時は与太話のネタにしていましたが, この米粒も意外と美味しいものですよ.
10年も経過するとポスドク時代より愛聴していた長寿のラジオ番組が旧年3月に3つほど終了し, 11月には, ある方の訃報により1つ終了し, 12月末には, 別の1つが某動画サイトに移転となりました. 娯楽の方向を変える必要が生じております.
好きなラジオ番組ばかりを聞いていると, 流行りの曲やテレビ番組への興味が薄くなるので,世間話についていけなくなるのは難点でした. 皆さんの娯楽はなんでしょう?
某番組の終了記念に, Opening (by milk rings)を購入し, 拝聴しながらこの与太話を書き綴っています.
【10年間の仕事の話】
旧年 5月ごろ, 就職後10年間の仕事をまとめる機会があり, 東京工業大学の細野秀雄先生と共著にて洋書の一章を分担執筆しました.
これ↓のはずです.
http://www.amazon.co.jp/Photonic-Electronic-Properties-Fluoride-Materials/dp/0128016396
2016年 6月に出版予定ですので, 興味のある方は, 一読いただけると有難く存じます.
この洋書の引用文献整理の作業の気晴らしに, 疲れた顔で撮ったのが, 5月にFacebookに上げた城ヶ島の写真です. (今も似たような顔をしています)
「過去の自分の文章を剽窃しない程度に真似て書き直す」作業は, 神経を使いました. 元の文章のまとまりが良いと苦労が増えるという, なんとも言えない矛盾を抱えながら, リライトを行った思い出があります.
【文書作成上の不幸の素回避と古典を学ぶ意義】
剽窃は「引用を示さずに, 他者の執筆した文章や, 他者の執筆した図表を自らの著作物として発表すること」ですので判断をするのは容易です. 反面, 引用が示された状態で, 先人たちの文書や図を持論のために使用する場合は, どの程度の使用をもって著作権侵害とみなすのかは議論の範疇となります.
「某イベントのロゴ」や「ゲームが主題の某マンガ」で話題になったように, 法人同士の問題となると個人では対応不可能な労力をその解決に費やす問題となるでしょう.
マンガの同人誌のように, その業界の活性化のために黙認されている場合もあるでしょう.
著作者の自己防衛と, 二次創作者の営利への欲求が, トラブルの主因となるのでしょうが, 私は創作に従事する者は, 大抵は他愛のないパロディや二次創作には寛容である傾向があると考えています.
論文であれイラストであれ, 引用やパロディとして使用されることは光栄なことのはずですが, 営利への欲求は複雑な事態を生じます.
それを避けるには, 先人たちの不利益にならない引用の仕方が必要なのでしょう.
現在を生きる我々は, 先人たちの知見を利用して生活や創作をしています. 二次創作の下となった一次創作物も, 先人たちの創作物を上手くアレンジして作られたことは否定出来ないでしょう.
私どもの書いた論文は, 全体の構成と使用する試料以外は, 先人たちの創作物を参考にしています.
真摯に執筆をすればするほど, 引用文献は延々と増加し続ける状況に陥るので, 何らかの基準で, 引用をしない判断をする必要があるほどです.
例えば, X線回折(XRD)を使用している場合, BraggやLaueの著作物を引用する研究者は, 少数派ですし, 私もそれに習っています. 現在のXRDの光学系は光検出や光源は, 過去の機構と別物となっていることと, BraggやLaueの知見は, 現在の科学・工学では古典的な常識となっていることの2点を言い訳として(原著論文を書く場合は)最新の解説記事などの引用で, 勘弁をしてもらっているわけです.
ところで“LaFeAsO”とGoogleに打ち込むと, 8年ほど前に, 自分で描いた結晶構造概念図や電子状態相図(をどこかの誰かがイジった図?)が検索結果として出てきます. 鉄系高温超伝導体は, 現在は常識の範疇となり, 新規性のあるテーマとして, 研究計画のシナリオを書くことは, 骨の折れる状況となりましたが, とても光栄なことです.
神原陽一
2016年1月1日(金)