志村 崇 博士

指導教員名岩見 健太郎 

現在の所属:株式会社エステック 技術部    

 修了年度2018  

博士論文のタイトル :面外駆動型Auナノグレーティングによる複屈折可変メタサーフェス 

博士論文の内容 

1ミクロン以下の微細な周期で配置した金スリット構造とMEMSを融合した新しい光学素子について、設計手法と製作手法を確立し、実験で有意な可変特性があることを示しました。  

博士後期課程に進学しようと思った理由 

進学を決めた理由は、研究を続けたかったからです。 挑戦しがいのある研究課題に対して、卒業研究~修士の期間はあまりにも短く、志半ばで就職しても絶対に後悔すると思いました。実際に、成果を出すまでには時間がかかりましたが、博士論文という形で自身の研究活動をまとめ上げた時の達成感は何ものにも代え難く、あの時の直感を信じてよかったと思っています。  

博士後期課程に進学して良かった事 

端的に言うと、世界が広がりました。 ひとつのことを突き詰めると見え方が変わり、その面白さをより深く理解できるようになりました。そこから周囲を見渡すことで、新しい発見や出会いも見つかりました。研究に直接関係ない論文を読み漁った時間は、今でも財産のひとつです。 また、研究テーマと時間をかけて向き合い、突き詰めていく活動は、自信にも繋がりました。思うようにいかない日々の中でも、様々な場面で、経験が着実に積み上がっていることを実感する瞬間がありました。これは、努力の結果は必ずしも成果だけではないという気づきで、その後の人生において、諦めずに研鑽を続けることができる土台となっています。 

 博士後期課程在籍中に印象に残っている出来事 

研究活動の終わりと始まりに立ち合ったことです。 合同で研究活動を行っていた研究室が、先生のご退官と共に長い歴史に幕を閉じることとなり、その片付けや引継ぎなどを手伝いました。解体されていく実験室を見て、研究活動が日々の積み重ねによって成り立っていることを強く感じました。 並行して、所属研究室では新しい実験室(クリーンルーム)を立ち上げる大規模な計画が進行しており、インフラ設備や実験装置の配置の検討などで指導教官と学生たちが毎日頭を抱えていました。私も経験をもとに配置や備品に意見を出し、セッティングやメンテナンスをサポートしました。これらの出来事に立ち合えたのは、長く研究室に在籍していたからこそで、非常に貴重な体験でした。 

博士後期課程進学を考える方にメッセージ 

私は、キャリアや夢のために進学を志したわけではなく、研究活動そのものが目的でした。そんな私から伝えたいことは、博士の道はアカデミアだけではない、ということです。 現に私はエンジニアという肩書で、自動車や精密機械の技術的課題を解決する技術コンサルティング業務に従事しています。また、私の知人には、博士号取得後に起業した方や、企業に勤めながら大学で教鞭を執る方もいます。 進学に悩む方の中には、大学生活を続けることをハンデと捉える方もいらっしゃるかと思います。確かに、企業人としての経験には数年の差が開くことになります。しかし、後期課程では、計画の立案や遂行、研究室という組織のマネジメントなど、社会で自立する際に強みとなる様々な経験を積むことができます。それらも含めた教育課程を修めた人が、世界でDr.と呼ばれます。もちろん、全ての機会が与えられるわけではないので、自分から率先して巻き込まれ、実践していく姿勢は必要です。 博士は世界中の様々な場所で活躍しています。是非、あなただけが活躍できる場所を探してみてください。