2025年より、科学部は地元の山手町を流れる福川の保全に取り組んでいます。以下の文章は、科学部顧問がびんご自然史研究会発行の「びんごの自然誌」第7号に寄稿したものです。多様な生物が生息する福川を守るために、活動をしていきます。
福川を守れ!
~福川の改修に自然工法の導入を~
芦田川水系瀬戸川の支流である福川は、広島県福山市山手町を流れる全長約5kmの一級河川である。側面はコンクリートの垂直護岸で、一見、ただの用水路のように見える。河川の勾配はほとんどなく、大雨の際には、最下流で瀬戸川にポンプで排水している。平成28年6月と平成30年7月の豪雨の際には、当時のポンプの能力を超え、内水氾濫を起こした。そのため、大規模な河川改修が計画され、令和6年6月に新しい排水機場が完成し、さらには上流側より毎年数百mずつ、河床のかさ上げとコンクリート張りが進められている。
一見、生物の多様性は低いように見えるが、自然河床であるため、夏場にはヒシをはじめとする水生植物が繁茂し、多くの魚類が生息している。これらの魚類を狙い、サギをはじめとして多くの鳥類が飛来し、ミサゴや清流の宝石とも呼ばれるカワセミを見かけることもある。
上流側の河床がコンクリート張りされたところでは、渇水の際はコンクリート面がむき出しとなっており、ほとんど生物が生息できない状況となっている。令和7年2月より、新たなコンクリート張りの準備として河床の泥の浚渫と、割栗石への置き換えが始まった。この浚渫された泥の上を這う生物がいたため、採集したところイシガイであった。その後、令和7年2月27日に調査したところ、泥底の地点でドブガイ類を、三面コンクリートから自然河床へ切り替わる地点でイシガイ、シジミ類、ササノハガイを採集することができた。なお、イシガイはタナゴの産卵母貝であり、広島県のレッドリストで準絶滅危惧(NT)である。また、ササノハガイは広島県および環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)である。さらに、令和7年3月29日にはマツカサガイを採集することができ、福川で確認できた淡水産二枚貝は合計5種類となった。マツカサガイもタナゴの産卵母貝であり、広島県および環境省のレッドリストで準絶滅危惧(NT)である。
言うまでもなく、産卵母貝となる淡水産二枚貝がいなくなれば、タナゴは繁殖できず絶滅してしまう。タナゴをはじめとする小魚がいなければ、ナマズのような魚食性の魚類やサギといった魚食性の鳥類もいなくなる。当たり前にいるように思われる生物も、生物のつながりが切れてしまうと、あっけなくいなくなってしまう。
この貴重な生物の生息環境を守るため、現在、個人として工事を管轄する機関に自然工法の取り入れを要望している。担当者との面談の際には、工法変更は難しいとの返答であったが、その後、自然工法の取り入れを前向きに検討するとの連絡があった。
自然環境の保全には、やはり、市民が声を上げることが大切である。今回の福川の河川改修は、地域の住民が治水を求めた結果だ。だがここには、生物の保全という観点が抜けている。まずは他にどのような生物が生息するかを調査し、その保全を市民の声として上げ、予断を許さない自然工法の取り入れを確実にしていきたい。