役員報酬とは、取締役、監査役、執行役、会計参与などの役員に対して支給される報酬のことです。
役員報酬の場合、経費に計上するためには、
特定のルールに従わない限り、経費処理することができません。
役員報酬はオーナーが意図的に金額を決めることができ、
経費を多く計上して、法人税を減らすなどの調整ができてしまうため、
恣意的な運用を避けるために、経費計上には厳しいルールが設けられているのです。
経費処理入できる役員報酬は3種類に分けられます。
「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「業績連動給与」の3種類について、以下に1つずつ解説します。
1.定期同額給与
役員報酬は、毎月定額で支給する必要があり、
それによって経費計上することが可能になります。
2.事前確定届出給与
役員に支給されるボーナスは原則として、損金として算入することはできません。
ただし、「事前確定届出給与」として、あらかじめ支給時期と金額を税務署へ届け出ることによって、
経費として認められることになっています。
届け出た金額と異なる内容で支給した場合は経費として認められないため、
届け出た内容と同じ日時・金額で支払う必要がある点に注意しましょう。
3.業績連動給与
業績連動給与とは、会社が得た利益(業績)に連動して決まる役員報酬の事で、
有価証券報告書に記載される指標などをもとに算定されます。
ただし、同族会社は損金として算入できない点に注意が必要です。
株式を親族で握っているような企業が該当し、中小企業のうち9割がこの同族会社に含まれるため、
中小企業のほとんどは関わりがないものと考えておきましょう。
また、同族会社であっても非同族法人の完全子会社であれば、損金算入が可能となります。
役員報酬額の決定は、株主総会の決議によって決めることとなります。
株主総会で、役員報酬について承認を得なければならないのです。
役員報酬は事業年度開始時から3ヶ月以内に決める
役員報酬は、事業年度開始の日(会社設立の場合は会社設立の日)から3ヶ月以内に決めなければなりません。
役員報酬について変更ができるのは、年1回のこの期間だけということになります。
もし、それ以降に役員報酬を増やした場合、増額分は経費として認められないので注意が必要です。
なお、事前確定届出給与(役員賞与)の場合は株主総会での決議から1ヶ月後、
あるいは会計期間開始日から4ヶ月を経過する日、いずれかの早い日に届出を出す必要があります。
期間を過ぎると経費処理できなくなってしまうので、注意が必要です。
変更可能な期間を過ぎると特別な理由がない限り「減額」もできない
役員報酬は、変更可能な期間を過ぎると増額も減額もできなくなります。
減額する場合でも期間内に株主総会で決議する必要があります。
業績が悪化しても、特別な事情がない限り変更がきかないため、役員報酬の決定は慎重に行うことが大切です。
例外的に役員報酬の変更ができるケース
■組織の大掛かりな再編成による職務内容の変更などのやむを得ない事情があった場合
■経営が著しく悪化し、その悪化により株主および取引先などの利害関係者に影響が及ぶおそれがある場合
役員報酬額の決め方
役員報酬の決め方は、一概には言えませんが、概ねこちらの方法が一般的となります。
■利益計画から決定する
■希望額から決定する方法
利益計画から決定する方
役員報酬を加味せずに、自社の業績計画を作成し、残った利益の金額までを役員報酬として決定する方法です。
①売上予測:どれぐらいの売上(期末までに提供された分が当期の売上高の合計)になるか予測
②経費予測:どれくらいの経費になるか予測(今後の広告や採用コストなども予測します)
③売上予測ー経費予測=役員報酬を除く利益
④役員報酬月額上限額:③の利益額÷その期の役員報酬支給回数
※設立初年度はいつから支給するかによりその期の支給回数が代わりますので、算定の際には注意が必要です。
業績の悪化により役員報酬を全額を会社から支給できていない場合でも、
役員個人には税負担(所得税・住民税)が発生しますので、業績計画は慎重に行う必要があります。
借入がある場合や、設備の投資を行う場合は、資金繰りにも影響しますので、
その金額を借入返済や手元資金として残すだけの利益を役員報酬計上後でも残せるように注意が必要です。
希望額から決定する方法
前職との給与のバランス、生活費、納税負担、社会保険料の負担、業績見通しがつかない、
などから、業績計画とは関係させず、必要な役員報酬額を決定する方法となります。