研修報告書 (午後の部)
「議員のコンプライアンスとハラスメント条例の作り方」(午後の部)
① 開催日時 : 2025年(令和7年)8月21日(木) 14時~17時(午後の部)
② 開催場所 : 東京都豊島区東池袋1丁目20−10 としま区民センター
③ 主 催 : (株)廣瀬行政研究所
④ 講 師 : 太田雅幸 弁護士
⑤ テ ー マ : 「ハラスメント条例の作り方」
⑥ 内容報告 : 以下参照
1. (前提)法令(均等法、育休法、労働施策総合推進法)におけるハラスメント規律の対象
保護の対象
1.セクハラ、ソジハラ、マタハラ → 男女雇用機会均等法(均等法)
2.パタハラ → 育児・介護休業法(育休法)
3.パワハラ → 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
ハラスメント法制は、労働者を保護するための規律である。
※1 議員(≠労働者)は、ハラスメント関係法令による保護対象ではない。だが加害者の立場(行為者)には立つ。
※2 行為者(≒加害者)は労働者に限定されない(社長、首長、議員も含まれる)
※3 近時労働者ではない者(就活生等)へ拡張する潮流 → 就活セクハラの防止のための雇用管理上の措置義務(均等法13条1項→今年の改正)
※4 個人事業主の保護の新設
・特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)
保護の意味合い
1.組織ぐるみの対策を義務付ける規律であること(行政指導)。
2.被害者の加害者・会社に対する賠償請求権を基礎づけるものではないこと。
3.ハラスメントに係る損害賠償請求訴訟において労働施策推進法に定める3要件は参照されているのか。
・パワハラ訴訟においては、認定された行為者の言動が、被害者が心身を病んだこと(や自死を選んでしまったこと)等につながっているかどうか(因果関係→不法行為の成否)、会社は従業員の生命や身体を危険から保護するようにする債務があるのに、それを怠ったのかどうかという観点でものを考えている(債務不履行の成否)。 → 「優越的関係」がないから責任が生じないということではないし、「就業環境を害する」かどうかではなく、生身の人の心の問題やいのちという目線になっている。
2.ハラスメント条例を制定する意味
議員→職員事象
・法令に基づくパワハラ、セクハラ等の防止に関する規律は、千穂江公務員に及ぶ(総行女第3号 令和4年1月31日)。
※「議員→職員」は、法令において排除されていない事象である。 → では、なぜ、議会ハラスメント防止条例が制定されているのか。
↓
労働施策総合推進法、均等法等が地方議会議員にどのように及ぶのかあいまいである上(雇用関係上の措置を講ずべき「事業者」とは、自治体については任命権者のことである。→議員の任命権者とは誰なのか?!)、厚生労働省のパワハラ指針等が想定している組織的な規律や懲罰の仕組みが議員には及びにくい。その事を考慮すると、以下の啓発、仕組み等が必要となる。
↓
① ハラスメントが許容されないことや組織ぐるみで排除していくべきことについて規範意識への働きかけが必要。
② 議員のハラスメント事象という特殊性(事案の発見、事実認定、解決のいずれの局面においても、行政機構の事象と異なる。)に応じた効果的な仕組みが必要となる。
⑴職員に対するハラスメントの防止
「議員→職員」のハラスメント事象の特殊性・課題
・首長部局や議会事務局が加害議員から事実関係を聴取することが、実際上、困難であること。
・調査を行う者が議会との摩擦を考慮して(忖度)、調査過程でいわゆるセカンドハラスメントを加える危険もある。
・泣き寝入りとなることで、ハラスメントが継続する危険性。
↓
確認担当者の工夫が不可欠【法令やパワハラ指針は、そこまで突き詰めていない。】
ハラスメントが確認された場合、被害者に対する配慮措置
原則は、関係改善のために向けての援助、行為者と被害者の引き離し、行為者の謝罪、被害者の労働条件の不利益の回復、メンタルヘルス不調への相談対応、都道府県労働局における調停の紛争解決案に従った措置を講ずること。
↓
議員・職員間のハラスメントの場合の課題
・職員を議会・議員から引き離すことに限界があること(特に管理職)。
・議員に対し謝罪をすべきであることの感銘力をどのように及ぼすのか。
・都道府県労働局の手続きは、自治体に適用がないこと。
↓
謝罪すべきであるとの感銘力を付与するために、調査手続きに第3者性を盛り込む、又は住民からの批判という装置を組み込むことを検討しないといけない。
ハラスメントが確認された場合、行為者に対する措置
原則、民間会社や役所における対応(パワハラ指針)では、行為者に対する懲戒、被害者に対し謝罪をさせること。
↓
議員・職員間のハラスメントの場合の課題
・ハラスメントは懲罰事由ではない。議員に対する懲戒という手続きは存在しない。
↓
懲戒、懲罰に代わる落とし前的な措置をどのように設計するのか。
【ハラスメントが確認された場合】
原則、民間会社や役所における対応(パワハラ指針)では、再発防止に向け
た啓発活動、ハラスメントをした者に対し厳正に対処する方針の周知
↓
議員・職員間のハラスメントの場合の課題
・人事上の訴求力を働かせることが困難。
・組織全体の問題であるという認識を浸透させることが必要。→何故か。→問題とされた議員の個人的な資質によるものと限定的に捉えがち。
「議員→職員」のハラスメントの防止条例のスタイル
(政治倫理基準規程型)
例) ○×市議会政治倫理規定
第3条 議員は、人権侵害のおそれのある行為及びいかなるハラスメントもしてはならない。
↓
行為規範として規定しているが、「ハラスメント」が定義されていないこ
と、例規の性質上、相談体制が規定されていないこと等に限界がある。
↓
例) 庄内町議会ハラスメント防止条例 (単独条例型)
〇ハラスメントの定義、禁止規定、議長、議員の責務、相談体制、調査組織、実効性担保、研修等に関する条文を具えるもの。
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単独条例型は、令和7年6月17日時点で約90の議会が制定している。
⑵「議員→議員」のハラスメント、「有権者→議員」のハラスメントの防止
政治分野におけるハラスメント防止のための条例
政治活動の自由や、公平な政治参加への機会の阻害要因の除去を目的としたもの。
・大阪府内の地方議会における府民の政治参画の推進に関する条例(令和5年)が参考となる。
↓
例)「議員→議員」のハラスメント → ベテラン議員から新人議員に「1年生はだまって勉強しておけ」という言動
例)「有権者→議員」のハラスメント → 有権者から女性議員に対し「票を入れてやっているんだから1回デートしろよ。」という言動
政治分野におけるハラスメントの被害実情
〇地方議員に対するアンケート調査(内閣府が令和2年に実施)の結果
↓
・議員活動や選挙活動中に有権者や支援者、議員等からハラスメントを受けたかという質問に対し、全体の42.3%、男性32.6%、女性57.6%がいずれかのハラスメント行為を受けたと回答。
〇立候補を検討したが断念した者に対するアンケート調査結果
↓
・立候補を検討しているとき又は立候補準備中に有権者や支援者、議員等からハラスメントを受けたかという質問に対し、全体の61.8%、男性58.0%、女性65.5%がいずれかのハラスメント行為を受けたとの回答。
参考 カスタマーハラスメント
令和7年労働施策総合推進法改正でカスタマーハラスメント対策の義務化が盛り込まれ(令和8年12月11日までの間の政令で定める日に施行)、今後、事業主が講ずべき措置の内容が指針で示される。
↓
事業主に対し、労働者の就業環境を害する顧客等の暴言や不当要求を抑止するための措置を講じることを義務付け、その措置によってカスハラを排除していこうとするもの。
3.条例の規律対象
規律対象
1.議員のみとするもの ※1【議会ハラスメント防止条例型】
2.議員、町長、副町長、教育長とするもの ※2【公職ハラスメント防止条例】
3.議員及び職員とするもの
4.議員・候補者、有権者を対象とするハラスメントを取り上げたもの → 【政治分野】におけるハラスメント防止型
5.「議員→職員」「議員→議員」「職員→議員」 → 議員が絡むものの全方向を対象とするもの
↓
制定動機によって、規制対象は異なる。
※1【議会ハラスメント防止条例型】
規律する行為者を議員とするもの
・「議員→職員」に限定するもの
・上記に加え「議員→議員」も対象とするもの。
・この類型に属する条例が多い。 → この類型に属する条例が多い理由→ 不祥事事例に際し制定された。 → 予防的な意味を含めドミノ的に制定されることになった。
・議員が行為者となる事象について相談・調査手続きを工夫する必要性が生じる。
※2【公職ハラスメント防止条例】
規律する行為者を議員、首長等とするもの
・地方公務員法による懲戒の規律に服しない公職等(特別職) → ハラスメント防止を図るための工夫(一般職については懲戒の規定等で対応できるという建前)
4.目的規定・定義規定
条例の目的規定
・目的規定とは、例規の冒頭(第1条)に置き、その例規の制定動機を謳うもの。訴訟において、判決が目的規定に言及して結論を導くこともある。 → 非常に大事である。
↓
①端的にハラスメントの防止を謳うもの
②個人の尊厳の尊重及び良好な職場環境の確保(ひいては、住民サービスの向上や、公務の円滑な運営)に言及しつつ、そのためにハラスメントの防止を謳うもの。
③男女共同参画の推進に言及するもの。
④究極的な最終目標として「信頼される議会の実現に資する」を掲げるもの。
↓
目的規定は、条例の運用・解釈の仕方に影響を及ぼすもの。目的規定に②のフレーズがあると、ある事象のハラスメント性を判断する際に「個人の尊厳」へのかかわりも考慮することになる。
↓
④の「信頼される議会の実現に資する」ことを謳うとすれば、「相談規程」についてどのような運用を期待することになるか。
条例の定義規定
①例規において定義規定を置く理由 → 規律対象の特定が必要であること。
②「ハラスメント」の用語を定義しない条例 → 「ハラスメント」とは、社会通念上確定している概念といえるか。
③法令で規律するパワハラと条例で規律するパワハラの異同 → 条例の規律対象を労働施策総合推進法による3要件による言動と同一のものとするのかどうか。
④条例で規律するハラスメントの外延 → どの範囲のものまでを含むか。 → 例えば、マタハラ、ジェンダーハラスメントまで含むかどうか。更には、妊 活ハラスメントまで含むもののするのか。
定義規定となっていない条例の例
①「ハラスメント パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント、その他の個人の人格若しくは尊厳を害し、精神的若しくは身体的な苦痛を与え不快にさせる全てのハラスメント行為をいう。」 → 「ハラスメント パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント、その他の」は、ハラスメント行為の例示。例示部分を除くと、ハラスメントとは「個人の人格若しくは尊厳を害し、精神的若しくは身体的な苦痛を与え不快にさせる全てのハラスメント行為」であると定義するもの。ハラスメントの定義の中で「全てのハラスメント行為をいう」と規定しているため、循環してしまい、定義規定になっていない。
②「この条例において『ハラスメント』とは、次に掲げる行為をいう。 言葉、行為等により、相手を傷つけ、苦痛を与え、不快にさせ、不利益を与える行為」 → このような広い書きぶりに問題点はないか。 → 議員が執行機関の執行行為の過誤を厳しく指摘し、非難し、結果として職員に「苦痛を与える」場合に、それはパワハラなのか。 → もう少し工夫するのであれば、例えば、「相手方に対する誹謗、中傷、事実に反する風説の流布その他の嫌がらせとなる言動」等と、絞り込みを検討すべき。
パワハラの定義
〇労働施策総合推進法の規定 → ⑴優越的関係性、⑵業務上必要性相当性を超える、⑶就業環境を害するという3要件
↓
⑴優越的関係性 → 議員や町長等 → 職員は、当然ら優越的関係があることを前提とした規定方法
↓
優位性や優越的関係を要件とする趣旨は何なのかを考察する。
↓
対等な関係又は相互的なやり取りでは生じえない。言い返せない、屈服せざる得ない関係による生ずる。それを法令では「優越的関係」「優位性」と表現している。それを各自治体で言い換えたり、詳細化したりすればよい。
↓
パワハラ指針では、優越的関係の一つとして「同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの」を掲げている。村八分的ないじめを明確に読めるように工夫することも考えられる。
⑵必要性・相当性 → 正当な業務執行とはいえないという属性を示すき客観的要件(属性要件)として、必要性・相当性を用いている。
↓
大阪府条例では、「その他のハラスメント」の要件として「・・・中傷、事実に反する風説の流布その他の嫌がらせとなる言動」であること、「思想の自由、表現の自由等に配慮しても、なお、一般に許される限度を超えること」を設定している。 → バスケットクローズ的規定
↓
労働施策総合推進法で定める必要性・相当性の規定ぶりは、その内実を大幅に解釈にゆだねることとなるので(→ゆえにパワハラ指針が必要となる。)、できるだけ具体的な行為類型を書き起こそうとする試みがありうる。
⑶就業環境を害するという3要件 → 労働施策総合推進法上のハラスメント要件の三つ目である「労働者の就業環境が害される」重大要件について別の定め方をする条例が出現している。
↓
「・・・他の者に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、その者の人格若しくは尊厳を侵害し…勤務環境(議員としての活動を行う上での環境を含む)を害する行動)」
↓
就業環境の阻害を生じるかどうかと関係なく、議員に苦痛を与え、人格・尊厳を侵害するようなものをパワハラと位置付け、防止を図ろうとするもの。
セクシャルハラスメントの定義
〇南関町職員のハラスメント防止に関する条例
↓
「セクシャルハラスメント 職場における性的な言動に対する他の職員の対応等により当該職員の勤務条件に関して不利益を与えること、又は性的な言動により他の職員の業務環境を害することをいう。この場合において、相手の性的指向又は性自認の状況にかかわらないほか、異性に対する言動だけでなく、同性に対する言動も該当し、他の職員とは直接的に性的な言動の相手方となった被害者に限らず、性的な言動により業務環境害された全ての職員を含むものとする。」
↓
下線の表現は①入念的に解釈を示したもの、②相手方は剛の者で業務環境を害されないとしても、その周囲の職員の業務環境を害した場合もセクハラとしている。
マタハラの定義
〇阿見町のハラスメント防止条例で掲げる事由に関する言動により相手方の職務環境を害する行為として「不妊治療を受けること。(妊活ハラスメント)」が入っている。
↓
①妊活ハラスメントは、均等法で含まれていない。
②介護に関する制度・措置の利用を巡るハラスメントも検討
マタハラの定義
〇性的指向や性自認に関するハラスメントを定義づけ、規律する条例も出現している。
その他の類型(バスケットクローズ)
〇「その他 人権侵害のおそれのある行為又は個人の職務環境を害する行為」(白河市議会)
〇「中傷、事実に反する風説の流布等の嫌がらせとなる言動で、相手方の人格・尊厳・勤務環境(議員活動を行う上での環境を含む。)を害するもの」(各務原市長等及び職員のハラスメント防止等に関する条例)
5.調査手続
相談・調査
〇相談窓口の設置(責任者による公平な聴取) → 被害者にとっての癒しであるとともに、ハラスメントへの対処の入り口として不可欠(事案が重大化する前の時点でキャッチし、対処するためには、相談をちゅうしょすべきでないことをアナウンスしていくことが大事)
↓
・議会事務局を相談窓口とする条例(南山城村・加西市)
・外部窓口とすることを明記する条例(沖縄県南城市、全庁防止条例をとる笠岡市)
・弁護士等に相談員を委嘱することを規定する条例(福岡県、大阪市) → 費用の問題
↓
・留意事項(プライバシーの確保・相談をしたことを理由とする不利益)
↓
・相談窓口から調査機関への連携(相談員が調査を担当する立法例も(福岡県、大阪市)
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〇福岡県における議会関係ハラスメントを根絶するための条例
・第6条第2項 議長は、本条の規定に基づく相談員の業務遂行の自由を保障し、相談員、相談員の委託を受けた者及び指定職員は…。」 → この規定が設置されるゆえんは何か。 → 政治的圧力やお手盛りの排除
↓
〇ハラスメントの調査組織は、様々である。
↓
⑴議員のみで構成する機関(議会において設置する政治倫理審査会・議会運営委員会)
⑵議員と住民との混成部隊の調査機関を持つもの
⑶苦情処理委員会(有識者+職員 当事者が議員である場合は、職員に代えて臨時委員を選任)
⑷「相談窓口」から「弁護士その他の有識者による機関」に連携するもの
⑸別に定めるところにより調査、設定をするというもの
⑹遵守のみ規定するもの等
⑺ ⑴を基本としつつ、相談者が希望する場合には専門家による精査を行うとするもの(水戸市条例)
〇調査組織の各論
⑴議員のみで構成する機関
↓
①公平・公正らしさに関する疑義(お手盛りと受け止められるリスク)
②聴取、証拠の評価、事実認定、例規へのあてはめをすることについての習熟性
③プライバシーの問題(守秘義務)
⑵有識者等による調査 → 客観性が担保されるが費用の問題が生ずる。
6.違反
〇ハラスメントの認定(不認定)
①ボイスレコーダー等の客観的証拠、診断書は、重要な証拠となる。
②行為者とされる者(議員)からも聴取することが基本的には必要である。
③客観性が乏しく、相談者と行為者とされる者の陳述が擦り合わないときは第3者からも聴取する(目撃情報)。
④客観的な事実関係と整合するかどうか重視する。(草津町の冤罪事件)
⑤認定した事実関係がハラスメントに該当するかどうか。
7.実効性の担保
①調査→認定→ハラスメント認定を経た後、加害者が議員である場合に、どのように落とし前を付けるか(正義の確保、再発防止)
↓
②被害者に対する謝罪・関係修復を図ること、助言。
↓
③所定事実の公表についての規定も検討(飛騨市議会、笠岡市議会)
・最終手段として公表規定を置く例規がある。議員に対して公表がどのように効果的足り得るのか。
・議員によるハラスメント事案のすべてを公表するのか、限定するのか。
・会議や委員会において同僚議員、職員に対しハラスメント発言をした場合に、ハラスメント防止条例による措置以外の方法はないのか。
〇公表⑴
・ハラスメントを認定した場合に、公表する目的は、
↓
①ハラスメントをした者に対しその重大性に気が付かせる(感銘)。
↓
②ハラスメントの再発防止を図る。
↓
③落とし前を付ける(制裁)。
〇公表⑵
・公表が許容されるかどうかについての判断枠組みが必要。
・目的の正当性 → 市民から信頼される議会の実現に資することを目的とするもので、その目的は正当である。
・公表制度の必要性 → 懲戒等の制度がないために組織の規律が及びにくく、議長による注意等も効果的とは言い難いため、議員に対するハラスメントの強力な抑止策としては、地域社会における信用失墜につながる公表制度が必要である。
〇公表⑶
①公表につながるような重大事案、反復継続事案等は、議員の自覚や反省によって排除できるものであること。
↓
②公表制度は、議員の地位を失わせるなどの法的な効果や強制力を有するものではないこと。
↓
③この仕組みが議会自らハラスメントを廃絶しようという自律的な取り組みであることを考えると、公表制度は必要かつ合理的なものといえる。
↓
④軽微な事案の公表について → 軽微なハラスメント事案まで全てを公表するとすれば、議員の言動に対する委縮効果が生じるため、適切と言えない。
↓
⑤公表をする場合について、①条文で要件を絞るか、②合議制の機関の議を経る等の手続的要件を課すか等を検討したいところ。
8.その他
〇同僚議員に対する指摘規定
・四日市市議会ハラスメントの防止等に関する条例
議員は、ハラスメントに当たる行動を行っていると認められる事態に遭遇したときは、当該行動を行っている者に対し厳に慎むべき旨を指摘するよう努めなければならない。
・鴨川市議会ハラスメント防止条例
議員は、議員間のハラスメント又は議員から職員に対するハラスメントに当たる行為があると認める事態に遭遇したときは、当該行為を行っている議員に対し厳に慎むべき旨を指摘するよう努めるとともに、議長に対し当該事態を報告しなければならない。
↓
人はだれも自分が見えないということに対応するためのもの。
〇研修
・大多数の防止条例が研修について規定(実施を義務とするものと、努力義務とするものに分かれている。)
↓
・白河市議会ハラスメント条例
議長は、ハラスメントの防止及び排除を図るため、議員に対し必要に応じて研修等を実施しなければならない。 → 病識のないままハラスメントをすることを防止するために重要。
〇アンケート調査に関する規定
・小松島市議会ハラスメント防止条例
議長は、議員によるハラスメントの根絶及び防止を図るため、必要に応じて実態を把握するためのアンケート調査を実施するとともに、議員に対し必要な研修等を実施しなければならない。
↓
・アンケート調査は、議員が自覚できていないハラスメントに気が付くために効果的である。
※参考例規サイト
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地方自治研究機構のホームページ上の「法制執務支援 一般社団法人 地方自治研究機構」で先行事例をみることができる。
https://www.rilg.or.jp/htdocs/005.html
9.まとめ (感想、振り返り)
午後の部は、「ハラスメント防止条例」の作り方を学びました。
ハラスメント防止に関する法令(均等法、労働施策総合推進法、育休法)は、労働者を守る法律として現在運用されています。
その法令は議員、町長等の特別職は適用されない特殊性、その事により議会のハラスメント防止に関する条例、規程等が必要であることが分かりました。(この事の理解は必須)
条例等において、文言の定義、規定の重要性、いざハラスメント事案があがった時の調査手続、認定、実効性の担保(懲戒、公表等)、再発防止策(研修、アンケート調査等)等、実際にハラスメント防止条例を策定するとなると多岐にわたる検証と議論が必要であると痛感しました。
今回の研修だけで取り掛かろうとするのは「無謀」であると思いました。
今回の学びと意識をもって大口町議会を再度見渡し、「大口町議会に必要なハラスメント防止条例とは。」をもう一度冷静になって考えたいと思います。