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人気漫画家、吾妻ひでおのリアル失踪日記。本当に失踪していた日々を描いた日記です。アルコール中毒であったり、「病気」なのだと思いますが、ここまで面白く書かれると逆に「こうなりたい」という憧れさえ出てくるような…(気のせいかもしれませんが…)。一般的な「不幸」に寄り添ってそれをむしろプラス(?)にしてしまうのが「芸術」だと思うのですが、達人技の芸術作品だと思います。

西原さんは何をどう書いても(どこまで下品に書いても)常に上質な人生論になってしまうところがある気がします。読むたびに泣かされています。

 とにかく「上下」ともに通読するべき作品。最初は単調にも思えますが、途中から急に転調しそのままクライマックスまで向かいます。

 人の幸不幸というのは例えば大学合格や就職や結婚など、何らかの成功といった大きなイベントにはなく、世間からは隠れた小さな「イベント」にだけ、しかもその瞬間だけ存在しているのではないかと思います。幸江の最後のセリフが印象的です。

「福満は、あの澱みきった掃き溜めみたいなところから、こういう状況を作れたんだぞ」というふうに思ってほしいんですよね。〔…〕僕みたいなのがうまくいってるように見えると、すごく妬むんですよ!〔…〕本来、攻撃すべき相手を間違ってるんじゃないか、と思うんですよね。」(『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』137頁)

読んでる人からすると、「何だコイツ、幸せじゃん」って思うかもしれないですけど、ホントに辛かったことや、ホントに嫌なこと、ホントに悲しいことは書けないんですよね。描ける範囲でしか描いてないんで。幸せだ、って見られることは仕方ないし、「いや、これはこれでこういうことだったんだよ」っていうことを言う機会も、もうないですからね。それはそれで、まあいいかな、と、あきらめてますけど」144-145頁

我こそは暗い青春時代を送っている、と思っている人に読んでほしいです。

『僕の小規模の生活』の続編的なシリーズ。「妻」の存在は「僕」にとって何よりの救いなのだと思います。そして「僕」のすごいところは、そのことを最初から十分理解していたことだと思います。

野球漫画「大きく振りかぶって」で有名なひぐちアサの初期作品。この作品を読むと、その後ヒットした「大きく振りかぶって」は、ひぐちアサが初期衝動を出しに出しきったあとに可能になった「洗練された」作品であったのではないかと思わされます。大学のサークルの描き方がリアルで、内容はなかなかショッキングで「重い」のですが…「大学の青春」(決して明るくはない青春)的なものが凝縮して表現されているような気がします。

こちらも大学のサークルの描き方がリアルで、内容もショッキングかつやはり重い内容なので、万人受けはしないと思いますが…「痒い所に手が届く」的に、ハマる人には本当にハマるのではないかと思います。

 ところで、村上かつら『初期傑作集』に出てくるフレーズですが、「若いある頃に本気で悩み気にしていたことなんて、年月が経った今のところまでは、これっぽっちも届いていない」。大学時代のサークルのあれこれにもそういう要素があるのかもしれません。しかし何らかの仕方では必ず届いているのでしょう。