「ふぅ……」
お昼を少し過ぎた頃、私はお着替えとか、すぐに使うものを詰め込んだキャリーケースだけをもって、お姉様のお家の前までやって来ました!先週お姉様に案内された、このアパートが今日からは私のお家になる場所って考えたら、楽しみですけど、なんだかちょっと緊張してきちゃいました……。
一つ深呼吸をして、「よしっ!」とお姉様のアパートに向かいます。
二階の一番右端のお部屋。表札に『白井』と書いてあるのを確認して、もう一度深呼吸をします。そして、意を決して、インターホンを鳴らしました。
「夢結さん! 梨璃です!!」
すると、扉が開いて、「待っていたわよ、梨璃」とお姉様が言って出迎えてくださいました!
「今日からよろしくお願いします!」
「えぇ」
そうお姉様が優しく笑って、中に通してくれました。そして私も、それに続いてキャリーケースを持ち上げて、お姉様の家の中に入りました。
「明日、残りの荷物が来る予定です!」
「分かったわ。ところで梨璃、お昼は食べてきたのかしら?」
「いえ、まだです! 今日は色々と手続きとかで立て込んじゃって……」
今日は朝早く起きて、お部屋の掃除とかをして、閑さんと一緒に退寮届とかを出しに行ったんですけど、結構並んじゃって、それに思っていたよりもやらなきゃいけない事がたくさんあって、気が付いたらお昼前で……。
それから、一柳隊の皆とお別れもして、そうして百合ヶ丘から出てきたんですけど、そう言えばすっかりお昼を食べるタイミングを逃しちゃってました。
「なら、色々と買い出しに行こうと思うのだけど、そのついでにお昼を食べに行かないかしら?」
「は、はい! 行きたいです!」
そう頷くと、「そう? なら、来てばかりで悪いのだけど、あまり遅くなっても何だから、すぐ出かけましょう」とお姉様が言いました。
「え、えと、荷物はどこに置けばいいですかね……?」
「そうね……ひとまず、テーブルの横に置いてくれれば良いわ。帰ったら整理するの手伝うわね」
「はい! ありがとうございます、お姉様!」
そんなお話をお姉様としていると、ようやくなんだか、お姉様と一緒に住むって言う事に実感が湧いてきました。
キャリーケースをお姉様に言われたように、テーブルの横に置いて、お水を一口だけ貰ってから、お買い物に出発しました。
+++
お家を出て、お姉様の後についていきます。この前はどこに連れていかれるんだろう、って少し不安もありましたけど、今日は久しぶりのお姉様とのお出かけ、って感じで、すごくワクワクしてます!
「そう言えば梨璃、今日は百合ヶ丘から何を持ってきたの?」
「えーっと……とりあえず今日の夜とか明日着るものと……あとは歯ブラシとか、すぐ使うものは一通り持ってきました!」
すると、お姉様は、「そう」と言って、何やら考え始めました。そして、「一つ問題があるのだけど」と、歩きながら私の方を向いて、こう言いました。
「あなたの寝るところなのだけど……。今私はベッドで寝ているのだけど、梨璃はそれで良いかしら?」
「ふぇっ?! それじゃあお姉様の寝るところが……」
「私は予備の布団があるから、それで寝るから大丈夫よ」
「それはお姉様に申し訳ありません!! 大体、私が急に押しかけたのが悪いんですし、私がお布団に寝るべきですっ!!」
「いいえ、梨璃がベッドに寝なさい。姉としての命令よ」
お姉様ったら、リリィの時から、「レギオンの長としてしっかりなさい」って言うくせに、こういう時ばかり譲ってくれません。
でも、私が急に押しかけたのが悪いので、ここはどうにかお姉様にベッドに寝て頂かないと……!!
「なら私はレギオンのリーダーとしての命令ですっ! お姉様がベッドに寝て下さいっ!!」
「あなたはもうリリィでは無いでしょう」
「それを言うならお姉様もですっ!」
ぐぬぬ……といつの間にか立ち止まって、お姉様と睨み合います。その時、私にある考えが閃きました。
「ならお姉様、一緒に寝ましょう!」
「なんでそうなるのっ?!」
「だって私はお姉様にベッドで寝て欲しくて、お姉様は私にベッドで寝て欲しいのなら、それが一番だと思ったんですっ!! どうでしょうかお姉様!!」
するとお姉様は、少し顔を赤くして、なんやらぼそぼそと呟いた後、「それであなたが納得するなら、それでいいわ……」と言ってくれました!
「ふふ、私の勝ちですねっ!!」
「……えぇ、そうね……」
そういうお姉様は、なんだかまだ何か言いたげでしたが、でも何も言ってくるわけでもありませんでした。……一体どうしたんでしょうか?