「亜羅椰ー?」
私、田中壱は亜羅椰を探していた。今日のお昼に開かれていた、壱盤隊の会議に亜羅椰が姿を表さなかったから、それの伝達事項を伝えたいんだけど、今日はどこをほっつき歩いているんやら、これがなかなか見当たらない。
部屋に行っても帰ってないって辰姫さんは言うし、外出届けも出てないっていうし、亜羅椰がいそうなところはしらみ潰しに探したのにいない。一体どこへ行ったのやら――
「つーかーまーえーましたわよーーーー????」
「わひゃぁ?!」
とかなんとか思ってたら、当の亜羅椰に、後ろっから思いっきり抱きつかれた。
「駄目ですわねぇ……リリィたるもの、常に警戒をしておかなくては、有事の時の際に食われちまいますわよ?」
「そっちの方こそ、甘く見ないでよね――っ!!」
そう言いながら、思いっきり後ろに頭を振る。「ぶっ――」という声と共に、亜羅椰が離れた。
「駄目ねえ……。リリィたるもの、常に警戒しておかなきゃ、ヒュージが来た時にやられちゃうわよ?」
「不覚でしたわ……っ!」
鼻を押さえながら亜羅椰が言う。
「こんなに探し回らせて……どこに行っていたのかしら?」
そう言いながら、亜羅椰にティッシュを渡してやる。
「ふん……私はずっと壱の後ろにいましたわ?」
「はぁっ?! いつから?!」
「いつからって、壱が私の名前を呼びながら歩き回ってる時からですわ」
「本当に最初からじゃん?!」
鼻血を一生懸命拭いている亜羅椰が「まったく……」と小声で言っている。いやそれはこっちの台詞なんですけど??
「それで何の用ですの?」
亜羅椰がそう聞いてきて、目的を思い出す。
「あぁそうだ、来週木曜日に壱盤隊全体で演習をする事になったから、必ず参加するように、って天葉様から」
「また演習ですの? はーあ……ここまで多いと、何かしらのご褒美が欲しいところですが……」
そう言いながら、亜羅椰がこちらをちらちら見てくる。
「そうやって見ても私は食われないからね? じゃ、伝えることは伝えたし帰るわね」
そして背中を向けて歩き出す。えらい歩いて疲れたし、このまま寮に帰って休もうかな、とか考える。けど、それはそれで時間も勿体ない気もするしなあ……。
「隙ありですわッ!!」
「そう来るのは目に見えてるだってばっ!!」
そうやって亜羅椰が飛びついて来るのは予想していたので、ちょっと横にズレると、いくらフェイズトランセンデンスS級保持者でも、さすがにマギが十分ない状態じゃあ方向転換できないのか、無様に地面に不時着していた。
「もう少し亜羅椰に理性ってもんがついたら考えてあげるからね」
そんな亜羅椰に振り返らず、手をヒラヒラ振りながら歩き続ける。「この雪辱、いつか晴らしてやりますわ……!!」とかなんとか言ってたけど、果たしてその日が来るかは、神のみぞ知るってとこかな。