【2021年度卒業論文】

「違い」が見える食卓から学ぶこと

フランスにおける菜食主義者との共食実践を事例に

Sharing Meals From Vegetarian and Non-Vegetarian Perspective

A Case Study in France


小林碧

国際社会学部西南ヨーロッパ第1地域・フランス語専攻

最近日本でも「ヴィーガン」「ゆるベジ」と言った言葉が聞かれるようになってきたが、私が初めてこのような「菜食」を身近に感じるようになったのはフランスでの留学経験だった。好き嫌いの少ない私自身は食事の場で食べ物を分かちあうこと、すなわち共食に食事の楽しさを見出していたが、動物性食品を「食べない」という立場をとる菜食主義者との食事ではこのような共食の実践が難しいように感じられた。

一方で近年グローバル化による食の均質化とそれに逆行する形で出現した食の差異化、個人化と言う食の変化があり、菜食主義も食の個人化の一現象だとすると、菜食主義の広まりそれ自体は自然な現象であると言える。私は菜食主義と言う個人性の強い食生活と、共食と言う社会的な行為の共存について知りたいと思い、フランスで菜食主義者と他者とのかかわりについて調査するフィールドワークを行った。

調査中の菜食主義者と非菜食主義者が共にする食卓において、時には菜食主義者が「食べない」動物性食品が並び、同じ食べ物を共有できないこともあったが、菜食主義を実践することそれ自体が非菜食主義者との共食を難しくすると言う結果にはならなかった。それは双方が互いの食習慣を尊重し、できる範囲での配慮を行ったからだと言える。以上のことから菜食主義と共食が共存できるかどうかは食べ物そのものを分かち合うと言う行為ではなく、食卓を共にする人と人との関係性によるところが大きいと言う結論に至った。


本論文は6章から構成される。第1章では筆者と菜食主義との出会いから論文執筆に至った経緯について、第2章では菜食主義の特徴や現代の食の変化についての考察、第3章ではフランスと日本の菜食主義の状況について整理する。それらを踏まえ、第4章では菜食主義と共食の関係についての具体例を、フランスでのフィールドワークとして紹介する。第5章ではフィールドワークで得た情報・体験の考察を行い、第6章で菜食主義と共食の在り方について述べる。