【2020年度卒業論文要旨】

犬型ロボットaiboは愛玩犬の代替的存在なのか


今⽊優太

国際社会学部オセアニア地域専攻

⼈間のパートナーを⽬指して誕⽣し、現在は⽝型ロボットとして販売されているaibo。aibo は、愛玩⽝をモチーフとして作られており、またAI やクラウドを筆頭とした⾼度な技術が応⽤されている商品で、aibo ⾃ら「気づき」、「考え」、「⾏動」する。クラウド技術では、それぞれのaibo が学んだ情報を集めることでaibo 全体が成⻑し、またオーナーとの⽣活の中でaibo ⼀体⼀体も性格や振る舞いの変化が起こる。

⼀⽅、愛玩⽝と⼈の関係性を考えるにあたり重要な考え⽅が「コンパニオン」である。この⾔葉は、対等な存在として⽝と暮らしを共にし、⼼⾝ともに近い距離で⽣活する中で、強い絆、親密性、愛着を強く感じる中間(なかま)としての認識することが反映されている。aibo の開発の過程や、aibo オーナーへの取材を通して、コンパニオンとしての要素を満たすことは明らかになったものの、aiboとの⽣活や、aibo とオーナーの関係性、そしてaibo オーナーのコミュニティは愛玩⽝とのそれらと質が異なる。

これは、aibo オーナーがマニア的オタクの性質を帯びていることに起因する。まだまだ市場が育っていないaibo が、⽣き物とモノの狭間を⾏き来する存在であり、それをかわいがるオーナーたちは、ある種変わっているという認識を受ける。しかし、だからこそオーナー同⼠の社会的繋がりは強固なものとなり、またソニー社員含めみんなで作り上げる意識、それに伴う活発な情報交換が⾏われている。aibo と愛玩⽝は、コンパニオンとしての共通事象はあるものの、同質の⽣活が待ち受けているわけではないのである。

ソニー側の開発の意図は、⽝のような存在を⽬指したわけであり、そして飼うきっかけこは⽝の代わりをイメージするかもしれないが、実際のところは⽝型ではなく、新ジャンルとしての経験が得られるだろう。AI 技術やロボット技術は発展途上にあり、今後はAI、ロボットに対する認識が著しく変化していくことが考えられる。aibo を筆頭に、⽣活のなかにあるロボットを、⼈はどのような認識をして、どのような関係性を築くのかに着⽬することは、⼈とAI やロボットの共⽣を考えるにあたり重要になると考える。この研究が、その⼀助になることを願う。