【2020年度卒業論文要旨】

消費の内側から狩猟をみる

~ジビエ料理屋でのスタッフ経験をもとにして~


岡添桃子

国際社会学部西南ヨーロッパ第一地域専攻

数年前から「狩猟ブーム」「ジビエブーム」と言われる、ジビエ料理店や女性、若者ハンターの増加や、狩猟をテーマとした漫画や書籍の人気の高まりなどが話題になっている。しかし、高齢化や後継者不足、獣害被害、捕獲後の利活用の難しさなど、狩猟に関する問題はつきない。これらの課題を解決するためには、一過性のブームとして終わらせるではなく、捕獲から消費まで一気通貫した取り組みが必要であると言える。これまでにも国や地方自治体ごとに、狩猟肉を「食肉」として流通させるための仕組み作りや、狩猟者を増やすための初心者に向けたイベント開催などが行われてきた。また、より効率的に捕獲、解体するために、捕獲の専門家を育てる必要性も議論されてきた。

だが、「消費」という観点において、消費者がどのように狩猟を捉え、選択し、実際に消費していくのかについて十分な議論がなされていない。そのため筆者は、「狩猟の消費」の中でもジビエ料理店での消費にスポットをあて、とある都内のジビエ料理店にてフィールドワークを行った。筆者はそこで3年以上スタッフとして勤務し、捕獲から解体、調理、提供までを経験してきた。その中で、店を訪れる客たちは、狩猟肉に対してどのように振る舞い、なにを期待しているのかを考察した。さらに、筆者自身、狩猟免許を取得しハンターとして活動したり、ジビエ料理店でスタッフとして働いていくうちに変化した狩猟肉への見方についても振り返った。

このように、狩猟の消費を生み出す現場の内側から狩猟について考えるという、いまだ前例の少ない研究により、狩猟肉にしかない魅力を再発見し、「狩猟肉らしさ」を活かした流通、消費を行うことが重要であると考える。本研究では、家畜肉と比較して、狩猟肉に消費者が求めるものはなにかについて、筆者やジビエ料理屋の客の具体的なエピソードをもとに考察をしていく。

キーワード:狩猟、狩猟肉、ジビエ、ジビエ料理屋、消費、人と動物の関係