【2021年度卒業論文】

対話的な自己エスノグラフィを用いた、映画の制作過程の記述・分析

Description and Analysis of the Production of a Film, Through the Conduct of Dialogical Autoethnography


田島武史

国際社会学部ロシア地域専攻

映画を制作するとき、制作者は一体何を考えているのだろうか。映画と一口に言っても、それを語るに切り口は余りにも多い。そんななか、先行研究からは、映画における“物語”というものへの考え方や“映画の倫理”、そして、映画と現実との関係性といった話が展開される。


本研究では、自己エスノグラフィを用いて、本論文の著者が制作した映画『おいかけっこ』の制作過程を記述・分析を行った。また、今回、自己エスノグラフィをするにあたって、「対話」という方法を盛り込んだ。これは自己エスノグラフィの抱える、客観視することの難しさや自己探求に伴う精神的苦痛などといった課題を乗り越えるための方法である。対話の有用性についても本論文では言及している。


対話的な自己エスノグラフィを通して、自分でも意識していない自分の考え方に巡り合うなどして、制作の過程が見えてきたことは間違いない。そして、先行研究で、いささか抽象的に聞こえるかもしれない“映画の倫理”の話などが、著者の自己エスノグラフィとリンクするかたちで少しずつ解きほぐされていくのである。


映画制作とは絶え間なく続いていく営みであり、自分と、そして、他者との出会いなのである。これは何も映画に限ったことではなく、制作という営為全般に言えることだろう。映画に限らず、何かの制作に挑戦する人や、自己探求をして自分のことを知っていくことに関して、本研究がその一助となることを願ってやまない。

おいかけっこ - YouTube 

(URL: https://youtu.be/K7l-fFOlZSc)