【2022年度卒業論文】

フェアトレードの理想像と消費者

――日本の都市大学生の消費者にインタビューした内容からフェアトレードと消費者にあるギャップを考察する――


Consumers and the Ideal form of Fairtrade:

Interviewing university students in Tokyo to understand the gap in recognition of the fairtrade system between consumers and retailers


島村莉於

ラテンアメリカ地域専攻

 消費者が、エシカル商品を買う理由とは何か。近年、コンビニエンスストアやファストチェーン店では、100円コーヒーが消費者から支持を得ている。このような豊富で高品質なコーヒー業界が存在する中で、コーヒーをはじめとするフェアトレードはどのように日本社会に影響を及ぼしているのかといった疑問を抱き、先行研究にて生産地でのフェアトレードの広がりとその問題について文献を分析した。すると、フェアトレード市場は認証ラベルを含むフェアトレード制度の効果は一定数あるものの、母数からみると小規模に過ぎないことがわかった。また、フェアトレードに参加している現地生産者は、ただ参加するだけでは収入と生活の改善には繋がっていないことが明らかになった。このように、フェアトレードに関して消費者側からイメージするフェアトレードと、現地の生産者が実際に直面しているフェアトレードは認識が食い違っていることが分かった。そこで本論文では、フェアトレードが消費先である先進国の一般消費者と小売店の売り手にどのように認知されているのかをインタビューし、生産者とFLO(Fair Trade Labelling Organization Internationalの略。国際フェアトレードラベル機構)の思惑がずれているように認知の違いを調査し、国内におけるフェアトレードの今後の在り方を考察していく。結論として、消費者側は購入の際にフェアトレード商品かどうかは意識せず購買行動に至っていることがわかり、購入において重要なのは商品の質であることがわかった。また売り手側へのフィールドワークでは、フェアトレード普及活動がNPO法人や学生団体のボランティアによって成り立っていることがわかり、それではフェアトレードの影響力拡大の目途が立っておらず、自治体や大学の支援も得られていないことが明らかになった。ここから、消費先でフェアトレードを社会で影響力あるものに広げていくには、価格に見合ったフェアトレード商品の質を高めること、そして活動者や地域にフェアトレードの活動を行うことでメリットとなるような明確なゴールと、インセンティブが重要なポイントとなるといえる。これは今まで疎かになっていた、認証型と連帯型フェアトレードの双方が同じゴールを持ってすり合わせた上で連携を取る必要性を表している。最後に、フェアトレードの質を高めていくためにはフェアトレードマーク本来の機能である「顔の見える貿易」をより確実に生産者と消費者に伝えていく必要がある。その実践方法として、最終章ではLIGHT UP COFFEの事例を紹介する。