【社会保険労務士】
通称「八士業」の一つ。
社会保険労務士は『労働関係、社会保険関係の専門家』です。
もちろん、上記に付随した業務も行います。
管轄は『厚生労働省』です。
主に『労働基準監督署』『公共職業安定所』『年金事務所』関連のお手続きの代理をして下さいます。
【社会保険労務士の独占業務】
独占業務、とは無資格者が行うと法により罰せられる業務です。
社会保険労務士の独占業務は以下の2つです。
01.労働・社会保険関連の書類作成・提出代理
02.労働・社会保険関連の会社の事務代理
<社会保険労務士法の違反例>
社会保険労務士の独占業務は「有償独占」です。無償で行う場合は違反にはなりません。
【具体例】
01.給与関係の代行
他社の従業員の給与計算、年金、健康保険の計算や届出を代行した。
→アウト!
02.助成金の申請代行
コンサルティング会社が、他社の助成金申請の書類を作成・提出を行った。
→アウト!
03.無償での申請代行
無償ならOKと聞いたので、無償で他社の就業規則を作成、提出した。
その分を上乗せした費用40万円を協賛費として請求した。
→アウト!
協賛費名目ですが、この場合は実質的に作成料も受け取っているとみなされます。
04.FP(ファイナンシャルプランナー)による相談
FPの方がお客様の「年金」の相談に乗る。
→セーフ!
相談関連は社会保険労務士の「独占業務」ではありません。
どなたでも行うことができます。
ただし、そのお手続きの代理はできません。
05.知人に公的な書類を渡す
「障害年金の制度がわからない」という知人に、厚生労働省の公式資料を渡した。
「就業規則の内容の見本が欲しい」というお客様に、厚生労働省の公式資料を渡した。
→セーフ!
06.自己の届出
自社の労働保険料の届出を自社で行った。
→セーフ!
07.労働災害申請
労働災害が起きてしまったので、弁護士の方へその事務手続きをお願いした。
→セーフ!
弁護士の方は全ての法律業務を取り扱うことができます。
社会保険労務士法に違反すると、拘禁刑や罰金があります。ご注意ください。
社会保険労務士の業務をいくつかご紹介します。
ちなみに、社会保険労務士の業務は『給与明細』を見ると分かりやすいです!
給与明細「時間外勤務」や「手当」部分のルールです。
<就業規則とは?>
就業規則とは、会社の「従業員」に対するルールです。
労働基準法など各種法令に違反しない内容でなければなりません。
常時10人以上を雇用する会社は、必ず作成+届出が必要です。
トラブルの防止や懲戒のほか、助成金を受給する条件の一つとなることもあります。
ルールを運用するには就業規則に記載+従業員に周知する必要があります。
【就業規則の内容例】
01.賃金規定
給与・退職金等に関するルールです。
(セーフ)
賃金は月末締め、翌10日払とする。
(アウト)
退職金は円満退職時の場合のみ支給する。
円満退職かどうかは会社役員が判断する。
02.各種休暇
給与・退職金等に関するルールです。
(セーフ)
育児、介護に関して休暇を与える。
その内容は育児介護休業法に基づくものとする。
(アウト)
勤務時間は1日8時間とする。
ただし営業成績不振者は退勤することができない。
03.懲戒
減給、降格や解雇の基準です。
(セーフ)
…業務上の指示・命令に従わない場合。
(アウト)
1秒でも遅刻した場合、給与から反省金8万円を控除する。
加えて、当社理念「はい、喜んで!」の原則を1000回唱和するものとする。
04.36協定 (サブロクキョウテイ)
時間外労働や休日労働のルールです。
労働基準法36条に記載があるため36協定と言われます。
この協定によって、法定労働時間(一日8時間など)以上の勤務が可能です。
当然、割増賃金が発生します。
(セーフ)
延長期間は、一ヶ月45時間までとする。
(アウト)
正規勤務時間中に労働を完結させること。
ただし、退勤のタイムカードを記入したのちの延長は差し支えない。
このような各種ルールを「就業規則」といいます。
ただし「労働協約」という、会社と労働組合が結んだルールもある場合、そちらが優先です。
給与明細「健康保険」 「介護保険」部分のルールです。
<健康保険とは?>
健康保険・介護保険とは、日本の医療保険制度です。
【医療保険制度】
原則「自己負担3割」「保険負担7割」で治療を受けたり、薬の購入ができる制度です。
他にも高額医療や出産などの支援制度も充実しています。
主に3種類あり、国民全員に加入義務があります。
※加入義務があるため、給与天引きや年金天引きが認められています。【健康保険の種類】
下記の3種いずれかに加入します。
01.健康保険
法人(会社や役所など)に勤める人の医療保険です。
法人が保険料を加入申請+納付します。
最大のメリットである「扶養制度」 「労使折半」(※後述)があります。
保険料はその方の収入によって異なるため、自社で計算します。
他にもいろいろルールがあり、社会保険労務士が取り扱う業務の一つです。
02.国民健康保険
自営業、無職(健康保険制度の扶養者を除く)の方の医療保険です。
自営業や無職だと給与天引きができないため、自分で加入申請+納付します。
保険料は前年の収入や家族の人数等から市町村が計算します。
03.後期高齢者医療保険制度
75歳以上の方は、全てこの保険制度に切り替わります。
高齢になると、どうしても収入が減少する傾向+病気にもかかりやすい傾向があるため、それらに備える制度です。
※介護保険制度
上記3種の医療保険とは別に、40歳以上の方が強制加入する保険です。
40歳以上になると支払いが発生します。
そして、原則65歳以上になって自身に介護や支援が必要だと認められた時に、それらのサービスを原則「自己負担1割」で受けることができます。
※医療扶助
生活保護受給者の方で医療扶助が必要と認められた方は、健康保険には加入しません。
医療扶助によって必要な医療を無料で受けることができます。
給与明細「厚生年金」部分のルールです。
<公的年金とは?>
公的年金は老後、もしくは不慮の事態に備える制度です。
年金と言えば「老齢年金」を思い浮かべますが、他にも「障害年金」「遺族年金」などの制度があります。
【公的年金】
公的年金は2種類あります。国民全員に加入義務があります。
❶国民年金
日本国民、20歳以上全員強制加入です。
自営業、無職(厚生保険の扶養者を除く)の方は給与天引きができないため、自分で加入申請+納付します。
年金支払額は月17,510円(※1)の定額制です。
厚生年金加入者(下記)は、厚生年金と国民年金、両方に加入します。
その場合の加入や納付などの事務処理は厚生年金側で一括して行います。
❷厚生年金
法人(会社や役所など)に勤める人の年金です。
法人が保険料を加入申請+納付します。
最大のメリットである「扶養制度」 「労使折半」(※後述)があります。
保険料はその方の収入によって異なるため、自社で計算します。
他にもいろいろルールがあり、社会保険労務士が取り扱う業務の一つです。
【年金受取額の計算】
公的年金は上記2種類の年金の加入実績などから合計額が支給されます。
厚生年金はよく2階部分と言われます。
国民年金は1階部分です。
これは、どういうことか?年金を受け取るときにわかります。
◇支給年金額=❶+❷
❶国民年金…満額約90万円(※1)
❷厚生年金…各人異なる(※2)
このように、強制加入である国民年金にプラスして厚生年金を受け取る、これを2階部分と呼んでいます。
<確定拠出年金(iDeCo)とは?>
公的年金は「強制加入」です。
ですが、それだけでは老後が不安…。お金が足りるかしら…?
そういった事態に備えて、自主的に加入するものを「私的年金」といいます。
私的年金には複数ありますが、ここでは、iDeCo(イデコ)を紹介します。
【iDeCoの利用方法】
01.月いくらiDeCoにお金を使うか自分で決めます。
決まった額を自己資金から支出するため「確定拠出」といいます。
02.次に運用先を決めます。
(運用先の例)
・○○銀行の定期預金
→ローリスク・ローリターン
・新興国の株式
→ハイリスク・ハイリターン
(運用先によってはお金が目減りすることもあります!)
03.そして、60歳以降になったら受取できます。
年金なので、60歳未満だと受取できません!
【iDeCoの主なメリット】
自分でコツコツ貯めたるのと何が違うの?という声が聞こえてきそうですが…。
iDeCoに使ったお金、受け取るお金、ともに税金がかからないです。
01.iDeCoに使ったお金
iDeCoでは資産を運用するために自分のお金を出します。そのお金は非課税です。
(例)
iDeCoに自己の収入から年20万円出すとします。
普通、収入には住民税や所得税がかかります。
ですが、iDeCoで使用した20万円には税金がかかりません。
住民税(約10%)、ならびに所得税(収入により計算が異なります)の減税効果があります。
この場合は年2万円程度の節税ができます。
02.iDeCoで受け取るお金
普通、資産を運用して利益を得た場合、その利益(受け取るお金)に所得税や住民税がかかります。
iDeCoも資産を運用しますが、その利益は非課税です。
【iDeCoの主なデメリット】
原則、自身が年金を受け取れる年齢(60歳~)まで引出や解約はできません。
<小額投資非課税制度(NISA)とは?>
NISA(ニーサ)はiDeCo(イデコ)とは全然別の制度です。私的年金でもありません。
【少額投資非課税制度 NISA】
個人の投資家をもっと増やしたい!という政策の下、少額から投資を始めやすい制度=NISAが整えられました。
自己の資産を運用する点では同じですが、60歳未満だとお金を受取できない年金のiDeCoに対し、NISAはいつでも受取可能です。
【NISAの利用方法】
①NISA専用の口座を開設します。
(口座は1人1つまでです)
②iDeCoと同じく、お金を運用します。
③投資なので、利益が出ることも、損失が出ることもあります。
【NISAの特徴】
NISAは日本語の正式名称通り「少額投資 + 非課税制度」です。
01・少額投資
まず投資額が一定額(年間や累計など)以下までしか運用できません。
02.NISAで受け取るお金は非課税
普通、資産を運用して利益を得た場合、その利益(受け取るお金)に所得税や住民税がかかります。
NISAも資産を運用しますが、その利益は非課税です。
※NISAに使うお金には税金がかかります
iDeCoは使うお金も非課税でしたが、NISAにその制度はありません。
給与明細「雇用保険」部分のルールです。
<雇用保険とは?>
万一の失業ならびに雇用の維持に備える制度です。
【雇用保険】
労働保険とも言われ、従業員に加入義務があります。
加入義務があるため、給与天引きや年金天引きが認められています。
「労使折半」(※後述)に近い制度があります。
【雇用保険の主な内容】
01.失業給付
失業すると、収入が途絶えますし、新たな仕事を探す必要があります。
この期間に経済的支援をします。
受け取れる金額は、「退職の理由」「何年間働いたか」「当時の給与」などによって異なります。
そして、不正受給は「受取金額全額返済+返済額×2=3倍返し」…と厳しいものになります。
02.訓練給付
自己の技能を延ばすため資格を取得したりする際に、その講習代などを補助する制度です。
制度を利用するには諸条件があります。
03.育児休業給付
育児で仕事を休む場合、収入の一部を支援する制度です。
制度を利用するには諸条件があります。
04.介護休業給付
介護で仕事を休む場合、収入の一部を支援する制度です。
制度を利用するには諸条件があります。
【加入できない方】
雇用保険は加入できない条件があります。いくつかご紹介します。
・自営業者
自営業者の方は誰かに雇用されていません。
・無職
無職の方は雇用されていません。
・会社役員
会社役員は雇用される側、ではなく雇用する側です。
・短時間労働者
短時間労働だと収入も少ないはずですから、その仕事を失ったとしても生計に大打撃を与えると認められないためです。
また、収入が少ないのに社会保険(厚生年金や健康保険、雇用保険)を給与から天引きすると、ほとんどお金が残らないため適用除外です。
給与明細には記載されません。
<労働災害保険(労災)とは?>
万一の業務中の事故に備える制度です。
【労働災害保険】
仕事中の「業務災害」と通勤中の「通勤災害」に備えます。
労働保険とも言われ、従業員を雇う法人(会社など)は強制加入です。
全額会社負担なので、従業員が保険料を支払う必要はありません。
そのため給与明細に記載がありません。
【労働災害保険の内容】
01.労働災害
勤務中に事故に遭ったり、職場環境により病気になったりした場合、対象となります。
02.通勤災害
自宅ー会社間の移動中に事故などに遭った場合、対象となります。
通勤なら無条件で適用されるわけではなく、いろいろと条件があります。
03.補償内容
・療養:労働災害が原因で医療を受けるときは、自己負担0円です。
・休業:労働災害が原因で仕事を休むときは、一定額の給与が補償されます。
・障害:労働災害が原因で障害を負ったときは、障害の程度に応じて補償されます。
・介護:労働災害が原因で介護が必要となったときは、介護給付が受けられます。
・死亡:労働災害が原因で死亡したときは、葬祭料や遺族への給付があります。
04.適用されない方
労災は適用されない方もいらっしゃいます。
自営業者や会社役員は対象外です。
労災はあくまで「従業員」を守るための制度だからです。
(一部、特別加入制度もあります)
助成金は当ホームページ「法人設立」に詳細があります。
【労使折半】
社会保険料を労働者と使用者(雇い主)の両方が、半分ずつ支払う制度です。
【計算例】
もし社員Aの給与が300,000円なら…。
・健康保険 31,000円
・介護保険 5,000円
・厚生年金 55,000円
・雇用保険 4,700円
(計95,700円)
この社会保険料95,700円を会社と社員Aで折半します。
雇用保険のみ会社の方が多く負担するため、ちょうど半分にはなりません。
今回の場合、負担金額は以下のようになります。
・労働者 47,300円
・会社 48,400円
労働者は給与300,000円から47,300円天引きされると252,700円となります。
(ただし、この後に所得税や住民税が引かれるので、手取りはさらに減ります)
【労使折半の効果】
・労働者側
95,700円の社会保険料の自己負担が47,300円と半額以下となり、労働者の負担は小さくなります。
・会社側
会社は社会保険料を48,400円、加えて労働災害保険料は全て会社負担なので、合わせて50,000円近い負担があります。
このように会社側は300,000円の給与の従業員を雇うのに、別途、社会保険料50,000が必要です。
会社側は給与支払い分+社会保険料会社負担があるので、注意が必要です。
【扶養制度】
扶養とは生活の面倒を見て、養うことです。
扶養家族には社会保険料の減免制度がある場合があります。
【扶養制度の有無】
社会保険の種類によって扶養制度があるものとないものがあります。
あり:健康保険と厚生年金
なし:国民健康保険や国民年金
【計算例】
夫A、妻B、子Cの3人家族の場合。
ケース❶:夫Aが会社員なら…。
扶養制度あり:健康保険と厚生年金に加入します。
すると…。
・追加料金なしでBもCも健康保険に入れます。
・追加料金なしでBも厚生年金に入れます。
よって、家計は大助かりです!
ケース❷:夫Aが自営業なら…。
扶養制度なし:国民健康保険と国民年金に加入します。
すると…。
・BもCも国民健康保険に入ります。人数分、保険料は高くなります。
・Bは国民年金に入ります。人数分、保険料は高くなります。
よって、家族の人数が多いほど保険料が高くなります!
【扶養制度の注意点】
01.130万の壁
扶養は、自己の収入が一定以下の場合に適用されます。
そのため、妻Bの年収がおおよそ130万円を超えると、Bは自己負担で社会保険に加入します。
扶養から外れないように年130万円以内になるよう働き方を調整することを「130万の壁」といいます。
02.法人化
扶養制度がない自営業の方は、家族が多いほど保険料が高くなります。そこで、自分の事業を「法人化(会社)」にすることで、扶養制度のある健康保険・厚生年金に加入できます。
法人化のメリットのひとつです。
03.厚生年金
厚生年金の扶養は「配偶者」のみです。
厚生年金の扶養に入ると、強制加入である国民年金(月17,510円)を、支払わないけど支払った扱いとなり、負担が軽減されます。
これを3号被保険者と言います。
ですが、厚生年金の特徴である上乗せ給付(2階部分、詳しくは上記「社会保険② 公的年金保険」参照)に関しては、扶養者は対象外です。
【会社の場合】
会社の社会保険に関わるお手続き、助成金、労働問題を未然に防ぐための就業規則、労務管理、その他相談などを行います。
【個人の場合】
社会保険労務士は公的年金の専門家です。
ただし相談自体は独占業務ではないので、投資や私的年金も含めてFP(ファイナンシャルプランナー)の方も活躍されています。
それに対し、申請が煩雑な「障害年金」等のお手続きを代理できる専門家は社会保険労務士(+弁護士)だけです!