kimura2004

大学生は他者に援助を求めることについてどのように捉えているのか?(木村・水野,2004)

1.この研究であきらかにしたかったこと。

私 たちは悩みを抱えたり、自分一人では解決できない問題を抱えた場合に、それに対処する方法の1つとして、他者に援助を求めるこう行動を選択します。しか し、全ての人が他者に援助を求めるかと言えばそうではありません。また誰に援助を求めるか、ということも人によって異なりますし、また抱えている問題の種 類や、その人を取り巻く状況によっても異なるでしょう。心理的な問題を抱えた場合、友人や家族といった身近な人に助けを求めることもあれが、カウンセラー などの専門家に援助を求めることもあります。

さて、大学には専門的な心理的な援助を提供する機関として、学生相談機関(大学によって学生 相談室、カウンセリングルームなど名称や役割は異なります)が存在します。みなさんはそのことを知っていますか?実を言うと、私自身大学生の時、なんとな くその存在は知っていましたが、それが学内のどこにあり、またどんな人が働いているのか知りませんでした。そして実施に利用することもありませんでした。 このように存在自体を知らないために利用しない場合もありますが、専門的な相談機関を利用することについては、抵抗感をもつ学生も少なくありません。

では実際に、大学生はそのような専門的な相談機関を利用することについてどのように捉えているのでしょうか。またそういった利用することについての意識や態度にはどの要因が関係しているのでしょうか。友人や家族に対して援助を求めることと違いはあるのでしょうか。

2.どんな方法で研究をしたか

このような疑問をもって、大学生239名を対象にアンケート調査を実施しました。アンケートでは上述した疑問を明らかにするために次のようなことを尋ねました。

3.明らかになったこと。

以上の内容をアンケートで尋ね答えてもらいました。回答してもらった内容を統計的に分析した結果、大きく以下のことが明らかになりました。

ではこの結果から、どんなことが言えるのでしょうか。どんな提案ができるのでしょうか。

最初に私自身の体験でも述べたことですが、大学生の傾向として、やはり学生相談の場所を知っているほど、利用しようと考えていることがわかりました。つまり、学生相談室の存在や場所を知らないために、専門的な援助の必要性がありながらも、学生相談室の利用に結びついていない可能性も考えられます。したがって、大学生に学生相談室のことをしっかりと知ってもらうことで、学生相談室を適切に利用してもらえるかもしれません。もし、学生さんがこれを読んでいたら、ぜひ学内の相談機関について調べてみてください。各大学によって相談機関の名称は異なっており、勤務しているカウンセラーも違えば、開室している時間も異なるでしょう。大学のHPや学内の掲示板などをぜひチェックしてみてください。

さて、大学生が援助を求める相手としては、学生相談室よりも、身近な友達や家族を好む傾向があるようです。大学生をサポートする重要な役割を果たすのは相談しやすい身近な友達や家族と言えます。

ではどんな時に学生相談室の出番となるのでしょうか。

1人暮らしをしている大学生や、入学直後でまだ大学内で友人関係が形成できていないために、身近な存在である友達や家族に援助を求められない状況では、学生相談室の出番があるのかもしれません。

また問題によっては身近な人だからこそ話ずらいこともあるでしょう。そういった悩みのときにも、学生相談室の出番です。学生さんには上手に学生相談室を活用してもらいたいと思っています。

さて、大学生は援助を求める相手として友達・家族を好んでいると書きましたが、友達・家族に援助を求める意識は自尊感情と自己隠蔽が関係していました。つまり自分に対して自信がなかったり肯定的に捉えていない学生ほど、また自分の個人的なことについて他者に打ち明けることに抵抗を感じている学生ほど、友達や家族に援助を求めようとしないということです。そういった学生さんに対して、学生相談室はお役にたてるかもしれません。自分の内面的なことを打ち明けることに抵抗がある学生さんには、1対1のいわゆるカウンセリングではなく、悩みの解決に役立つような情報を提供するガイダンス的な援助なら比較的抵抗が少ないかもしれません。

このように、一人ひとりの他者に援助を求めることに対する意識や態度に合わせて、サポートの提供の仕方が工夫することも大切です。

おしまい。

文献:

木村真人・水野治久 2004 大学生の被援助志向性と心理的変数との関連について―学生相談・友達・家族に焦点をあてて― カウンセリング研究,37(3),260-269.