これはボクが未成年を超える前の頃(まぁあの人とその友人もそうだったのだが)、ボクの家で2&4モータリング社さんが発行していた改造車専門DVDマガジン、「ホットバージョン」を見せられた時だ。某ドリキンの名を持つドライバーが峠に見立てたクローズド・サーキットを称する道で改造車を全開ドライブしているシーンを無理矢理見せられた。その時のシーンの最初に「このコースはクローズド・サーキットで走行しているものです。公道ではマネしないでください」的な文章が表示された。ボクはそれに怒りに震え、PS2の本体を弱叩きした(映像は飛ばなかったが)。あの人はそれを見て、「てめぇ、次やったら殺すレヴェルでは済まねぇからな」と脅迫してきた。それに対抗してボクはこう怒鳴った。
「ストリートの時代は終わったんだよ!これからのバトルの舞台はサーキットでやる時代なんだよっ!!」
そして怒りモードのボクはあるゲームを起動した。
そのゲームは発売当時首都高速道路や峠のストリート・レーシングゲーム専門だったのが新天地、といったところのレーシングサーキットを舞台にした元気株式会社、ゲンキ・レーシング・プロジェクト協同制作の「レーシングバトル・C1グランプリ」だ。
その頃はNAロードスターのカスタム・ヴァージョンをレーシング・ペナルティ・ポイントバトルで負かさなければならなかったのだが、どうしてもテールスライドが激しく、コーナリングスピードも遅かった。
そこで友人が「セットアップの失敗じゃないのか?」と指摘された。その時あの人が「失敗していたらオレは笑うよ」と予告。
そして(因みにこのゲームはセットアップを3つストック出来るので、そのコトを忘れていたボクがホントは悪かったのだが)ボクが見たところ、ドリフト・ポイントバトル用のセットアップだったのだが。
「ぶっはははははははwww」
それを聴いたボクは心の中で泣き出した。
ボクはクルマ好きだが、それは良心的な範囲の中だけだ。その好きさは現バンダイナムコの「レイジレーサー」で衝撃を受けたほど、というか、中部日本放送(といってもTBSネット系列の放送局だけどね)の「星のカービィ」のアニメの中の、「プププ・グランプリ」のレーシング・シーンで衝撃を受けた(まぁ本放送の視聴者プレゼントはオリジナル・自転車1名様だけだったが)。まぁ書いておくが、実はクルマは不正改造したり、公道で違法な競争する道具ではないと思っている。まぁ合法的な中での改造や、ドライブや移動の足の範囲で使うなら道路交通法には触れないはずだ。もちろん今はグランツーリスモSPORTでBNR34をいじっているが、常識中の常識のセットアップの仕方でGT-Rを仕上げ、イタリアのサーキット(勿論フィクションのトラックだが)のタイムを縮める努力をしている。だから現実世界のメカニックさんがやるコトを信じ、その努力のプライドも高い。
だからだろうか、先程の笑いにはとても怒りと憎しみと殺意を覚えさせられた。ただセットアップのド初心者だったりしたら、爆笑の渦に巻き込まれるのも常識である。でもそういうのとはちょっと違う笑いである。
それも馬鹿にした笑いだ。人間というのは、普通いきなりそう爆笑できるものではない。それは近代社会における普通の人の日常が、なるべく笑わずにお澄ましして過ごすよう出来ているからだ。だからこそ笑いには価値があり、笑わせるプロには金銭や地位という形で報酬が与えられるのだから。
なのに今回のケースでは、あの人とその友人が、ボクの足回りのセットアップで大爆笑した。こいつら、親しき仲の友人のくせに。何でだろう。何でいきなり馬鹿にした感じで笑えるんだろう。これから述べるのはボクの推論に過ぎないが、多分こういうことではないか。実車タイプのレースゲームで初心者がマシンセットアップした時には、それをはじめっから笑うつもりで来たヤツがな存在した、と。こいつらはそのゲームのビギナープレイヤーを、バトルで試そうと決めたその時から、ずっとそうやって大笑いの準備をしてきたやつらなのではあるまいか。
やつらはセットアップのセオリーを無視してるのに速いタイムをたたき出してるので、常識のあるメカニックさんを含めてセットアップ初心者を馬鹿にして笑うことが目的なので、その下手さに笑ってしまう。間違えた内容を見て、そこが間違ったようにして「アハハ」「ワハハ」という大笑いがポンポン飛び出す。やつらが笑っているのはそのセットアップが面白いからではなく、そのセットアップが「ド下手っぴ」だからなのだ。
マシンセットアップを披露したところで間違っても速いタイムが出た時に驚きの意で笑ったり拍手すること自体は何の問題もないと思う。だが、自動車のレースゲームというのも一応あくまでも「実車を再現したフィクションの世界」であり、初、中級車の下手っぴなセットアップを笑ったりするのは、一般的な常識から言えばいちおうは他人の心を傷つけるであろう。でもそれが許されるのは、あくまで下手でも速い上でのリアクションだからだと思う。
でも今回の笑いはそうではなかった。それは初心者を馬鹿にしているようなアクションだった。ボクはそう直感した。そしてそれは絶対に間違っていなかったと思う。そしてボクは…
SUNGEEEEムカついてしまったのだ。
やつらはなぜ笑っていたのか?たぶんこういうことだと思う。「オレは現実世界の常識をぶち破って、速い走りが出来るし、常識を守るやつを笑うことができるよ、つまりオレはセンスのいい、カリスマ的存在なんだよ」ということをアピールしていたのではないだろうか。これはあくまで予想だが、たぶん間違ってないと思う。
セットアップを笑いのアイテムとして使用するのは悪だろうか?常識をぶち破ってでも簡単にセットアップは成功出来るよ。そういう気持ちは否定できない。ボクの中にもそれはある。これは突き詰めれば生きとし生けることの根本に直結している問題だから、それ自体は悪とは言い難い。ただその気持ちを表現したやり方そのものが、決してベストのものであったとは言い難いだろう。現にボクらは、それが最低な事だというのを知っている。だからもうちょっと、アドバイスして欲しいもんである。ボクが腹を立てたのは、やつらの「コミュニケーション能力」の未熟さに対してだった、と言えるかもしれない。そういう意味では、怒りをこみ上げたボクこそ修行が足らんのかもしれんが。
でもやっぱ、それって初心者に対して失礼だと思う。セットアップがほんとうにタイムが速くて、面白かったんならいくら笑っても構わない。でもそのセットアップが「ウルトラ下手っぴ」という理由で、ただそれだけであらかじめ笑う準備をして初心者がレースゲームをプレイするのを見るのはあんまりじゃないか。そこまで準備してるんなら、もうグランツーリスモやめた方がいいと思う、絶対。それじゃいじめと一緒だ。弱い者いじめして、その人を馬鹿にしてるに過ぎない。それで人間と言えるのか。生きてるって言えるのか。おなかを押すと口から水を吹き出すアヒルのおもちゃと、まったくおんなじじゃないか。
こういうのって、言いにくいけど例えば過度にクルマが大好きな人にも責任の一端があるんじゃないかと思う。ボクは「セットアップんのプロ」に恩も義理もあるのだけれど、それとは別のところで、間違った理論が作り出してしまった罪というのがあるのではなかろうか。クルマやカーレースが好きだからって、別段偉いわけでもカッコいい訳でもない。どんなクルマが好きな人でも、当たり前だけど人間は自由で平等なんだろ?ひらたく等価値でおんなじなんだろ?だからこそ、だからこそボクらは、こうしていつまでたっても諦めずにジタバタあがいてるんじゃねえのか?
本当にそのセットアップが面白かったら、心ゆくまで笑っていいと思う。例えそれが初心者のものだったとしても、それが初心者に対する敬意の表わし方だと思う。でもド初心者が運転が下手っぴで、そのようなセットアップを馬鹿にした笑いだったとしたら、それは直ちに侮辱に変ると思うし、やっぱり初心者にも迷惑だ。だから今度ボクの前で笑ったらその人のお腹を出刃包丁で刺しまくって殺してやろうと思う。覚悟しろよ。