遅発性Ω
遅発性Ω
●遅れて目覚めた本能が、恋を動かし始める。
●気づいたときには、もう惹かれていた。
●春、運命は静かに芽吹く。
❁あらすじ
春――。
とある高級ホテルで、美しくたたずむホテルマンと出会った瞬間、胸の奥で何かが静かに音を立てた。
しかし、その場所は「α専用ホテル」。
恋には繋がらない。
それでも、彼のそばにいたい。
ただそれだけを支えに日々を過ごすうち、心のざわめきは消えず、大切な“何か”が動き始める。
そして明かされる真実。
「君はΩだったのか……」
惹かれ合う心と、避けられない本能。
柊航と澤田恭平――運命に翻弄される二人の距離が、静かに、確かに近づいていく。
元α → 遅発性Ω/α専用ホテル従業員
穏やかな物腰と丁寧な接客で人気のホテルスタッフ。
かつては“α”だと診断されていたが、ある時期を境に発現が変化し、
遅発性Ωとして正式に判断される。
変化した自分の本能と向き合いながらも、
決してそれを言い訳にせず、淡々と仕事を続ける強さがある。
澤田恭平と出会った瞬間、静かに心が揺れ始める――。
α/外交官/ホテル利用客
仕事一筋の優秀な外交官。
必要以上に感情を出さず、落ち着いた物腰だが、
実は情の深いタイプ。
公務のため訪れた「α専用ホテル」で柊に出会い、
一目見た瞬間に“理由のない惹かれ”を覚える。
彼がΩだったと知った時、自覚する――
彼を守りたい、と。
α/ホテル従業員リーダー
ホテルスタッフの中心的存在。
厳しさと優しさを両立する頼れるリーダーで、
柊にとって職場で最も信頼できる人物。
遅発性Ωとして変化した柊を理解し、さりげなくフォローする兄貴肌のα。
澤田の動きにも早くから気づき、
「柊を泣かすなら容赦しない」という強めの庇護心を持っている。
α/β/Ωの一般的な階級がある現代オメガバース
ホテル業界が舞台
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試し読み
桜が満開を迎え、青い空と桜の花びらが地面を覆い、清々しい朝を迎える。
東京駅直通のα専用のホテル、高額だが、1日の予約は満員となるほどに人気のホテル。
従業員は全員α、就職する際には卒業した大学と得意分野の説明、ホテルマンとしての実践的な試験もパフォーマンスしなければいけない。
落ち着いて対応でき身のこなしもとれている優秀なαだけがこのCountry new Hotelに入ることを許される。
俺の名前は柊航。
スーツの襟元にはピンをつけている優秀なホテルマンとして仕事をこなしている。
このピンは集められた優秀なαの中でも最高級な人しか得ることはできない。
俺の特技はバーテンダー、マッサージ師、語学力が長けている、他にも得意分野はあるが
一番人気なのはバーテンダーでブレンドしたワインはホテルで製品として売られるほどにまでなる。
ホテル前に1台の車が到着する。
「ようそこ、α専用ホテルへ」
と支配人が出迎える。
「チェックインはこちらでございます」
新規でご利用いただく、澤田様
「あぁ2週間世話になる」
すらっとした身長でモデルの様に美しい。
αはそう人が多い。
「それでは世話係の柊がお部屋まで案内させていただきます」
名前が呼ばれ、前に出て客室まで案内をする。
36階のスイートルーム、かなり金持ちじゃないとこの部屋は予約ができない。
「素晴らしい景色だ、夜景が楽しみ」
「ありがたいお言葉うれしく思います」
「んーー」
と背を伸ばしている。
「澤田様、本日は当ホテルをご利用いただき誠にありがとうございます、世話係を担当いたします、柊と申します、よろしくお願いいたします」
とあいさつをした。
「ああ、よろしく」
ホテルにはいくつかの決まりがある。
1週間以上滞在されるお客様には世話係という役職が与えられる。
身の回りの世話やちょっとした会話、仕事もたまに任せられる時もある、しかし1人のお客様に対してではなく、従業員1人に対して複数のお客様に世話係を任せられるため、こちらは先着順になる。
澤田様は2番目なので権利は2番目に強いということになる。
「本日はどのようなご予定で?」
「今日は、部屋でゆったりしてるよ、また夜に呼ぶから今は下がっていいよ」
「かしこまりました、なにかありましたらフロントにご連絡くださいませ」
「うん、ありがと」
部屋から出ると、深呼吸する、明日は上田様がいらっしゃる…。
顔が強張りながら廊下を歩いていると
後ろのドアが開き
「あ! 柊さん」
と名前を呼ばれたので振り向くと
「なんでしょうか?」